01話 プロローグ
「蓮にぃ援護」
巨大な敵へ果敢に立ち向かっていく。桃色の髪をしたツインテールの少女。
華奢な体つきの彼女の手には、二丁の短銃が握られている。
「じゃあ射撃職で前出ないでもらえます?」
「れんれんこっちも」
ツインテール少女のさらに前方には、これまた華奢な体格の青髪ロングの少女。
その細い体に見合わぬ、巨大な大剣を振り回し敵を切り裂く。
「そんな近接でダメージ出しまくっていたら、狙われるのも当然ですよ? 二人とも少しはヘイト管理気遣ってもらえませんかね? 盾持ちに走らせないでください?」
そしてそんな二人に文句を並べるのは、黒髪ショートカットで細身な体つきの青年。
右手には長銃、左手には盾と、少し違和感のある組み合わせが特徴といったところだろうか。
「蓮にぃ範囲物理きた。キャンセルしないとあたし死んじゃう」
「あー、もう」
死んじゃうと言っておきながら、回避する様子もない少女に、青年は溜め息混じりで敵の持つ巨大斧を食い止める。
「少しは自分で動いて下さいよ。何で重い盾持って走り回らなきゃいけないんですか」
斧を盾で弾き飛ばしながら呟く青年。
「もうすぐね。れんれん、まやちゃん、そろそろお願い」
「天姉、りょーかい」
「はいはい。行けばいいんですよね、行けば。じゃあ先行するので後はよろしくお願いしますよ」
敵の残り体力を確認してから、一斉に動き出す彼等。
「蓮にぃ、一応スタンも入れといて」
「確率次第だから絶対とは言えないですけど」
「一応でいいわよ? 入らなくても押し切れるだろうから」
「人使いの荒い事で」
先ずは青年が、軽装備の防具以外の装備を外し、素手で敵へと近づく。
盾を持っている時よりも動きが俊敏になっており、その速さを生かして敵の背後へ回る。
そして移動時に生じた慣性を利用し、敵の膝裏に回し蹴りをいれた。
「転倒」
いわば膝かっくんされた敵は、自身の重さに耐えきれずそのまま地面にひれ伏す。
青年はそれに合わせて敵の頭の近くに移動し、左手に再び装備した盾で、思いっきり頭を殴る。
すると、敵の頭の上にライトエフェクトが発生し、状態異常にかかった事を示した。
「スタンも入りました」
「流石、蓮にぃ。無駄にいい仕事するね。天姉。額、喉、心臓の順で」
「じゃあ合わせて打ち上げるわね。れんれんもお願い」
「はいはい」
そして追撃するように、今度は狙撃銃を構えた桃髪ツインテールの少女が、敵の額を撃ち抜く。
「まずは────額」
「天姉、顎蹴り上げからその次打ち上げで」
「分かったわ。その代わりタイミング合わせてね?」
「了解」
残った青髪ロングの少女と黒髪の青年は、素手、素足となり同時に敵の顔を蹴り上げた。
その威力に耐えかねて、巨大な顔だけが地面から離れる。
「喉」
蹴り上げたおかげで、上を向いた顔と地面との間に喉が見える。
その隙間を縫うように狙撃銃の弾丸が飛び、喉を貫通。
青年は次に備え、自分だけに魔法で攻撃力上昇のバフをかけ、青髪の少女と同時に左右胸部を蹴り上げる。
だがわずかに力が足りず、打ち上がり方に差ができてしまった。
「すいません力不足です」
「問題ないよ。あとは心臓っと」
だが、桃色の髪の少女は何も問題ないと、構えていた狙撃銃の狙いを、即座にずれた分を修正し、撃ち抜く。
その銃撃がとどめとなったようで、打ち上げられた巨体は地面につく事なく、宙で光となり霧散する。
「終わったー。蓮にぃ、天姉お疲れ」
「ナイス狙撃ね。まやちゃんもお疲れ様」
「お疲れ様です。いくら敵が弱いといっても、初見じゃこんなものですかね」
「そうだね。急所っぽいところ狙ったけど、喉と心臓は急所じゃなかったし。ちゃんと把握していれば、もっと効率よく倒せたんだけど」
「まぁしょうがないわよ。私だって属性の相性が悪くて、そんなにダメージ出せなかったもの」
「それでも僕の数倍はダメージ入ってますがね。そういえば天姉、また攻撃にステ振りしてません?」
「あら、何か問題があったかしら?」
「いや、問題ではないんですけど。前まではバフかけてやっと打ち上げ飛距離同じだったというのに、今回差が出ましたので」
「蓮にぃがもっとバフすればいい」
「あれ結構ハイリスクなんですからね? 盾装備なのに防御下がるしヘイト稼ぐし」
「じゃあれんれんも、ステ振り攻撃重視にしていきましょうか?」
「いや、多分もう遅いと思いますよ? お二人のおかげでサポート特化の器用貧乏ですから」
他愛もない会話を続ける三人組。
そんな三人が、このVRMMOで連携プレーに関しては右に出るものはいないとまで言われる、名の知れたパーティーである事は、本人達はまだ知らない。