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殺人鬼と元魔王候補  作者: 末吉
プロローグ
6/35

方針は決まったな

序盤はサクサクかけるんですよね……

 翌朝。

 前日までと違い交互に見張りが出来たため睡眠がとれた俺は腕を伸ばしながら欠伸をした。


「寝たな」

「旅人というのはこういう感じで日々を過ごすのか」

「まぁ冒険者とかはそうだな」


 そう言うと「なんとも小物臭い」と吐き捨てられた。


「今のお前もそれに含まれてるからな」

「ふん。この状態でも十分だ。村を消滅させるにはな」


 未だにエレナが起きないのでそんな会話をして時間を潰す。

 傍から見たら喧嘩しているように見えるのだろうが、単なる世間話の一つなので特に問題はない。

 さっさと起きねぇかなこいつと思いながらエレナを見るが、地面で身をくの字にして穏やかな笑顔で寝ているまま。


 起こしてやろうと思ったが、シュラヌが何やらこちらを見ているので面倒なことになりそうな気がする。

 面倒な奴を仲間にしたかなと思いながら「こいつどうする」と質問してみる。

 返ってきた言葉は、「起こすのも野暮だから行くのなら背負ってやればいい」と言われた。


 ……。この爺が。


「分かったよ」

「その前に食事はいいのか?」

「……」


 俺は黙ってマントの中から干し肉を取り出して噛み千切る。それを見たシュラヌはリュックを地面に置いて中を探したかと思うと、骨付き肉を取り出しそれにかじりついた。


「「……」」


 黙々と食べ進める俺達。その間もこいつは起きない。

 どんだけ寝るんだこいつはと思いながら食べ終わった俺は、竹筒を取り出して手に水をかける。

 また森の泉で取ってこないとなと思いながら水気を飛ばした俺は、エレナをおんぶする。


 少々軽いといった感じ。自然に胸が押し当てられているが、そんなこと本気でどうでもいい。


「俺は先に行くぞ。向かう場所は最果ての街に一番近い国――レシウス王国だ。といっても道のり的にはあと四日ぐらいかかるぞ」

「四日か……人というのはだいぶのんびり行くんだな」

「馬車なんて買いもしなければレンタルもする気なかったからな。俺一人の旅だったし」

「ふむそうか……ところで、あの国へ行ってどうする気だ?」

「こいつに人間の国を見せる。それ以外に目的はない」


 これ以上の問答が嫌だったために俺はシュラヌに背を向け、「さっさと来いよ」と静かに駆け出した。





「……あれ?」

「起きたかおい」

「お師匠様……? なんで元気に走っているんですか? というか、私なんでおぶられているんですか!?」

「長く寝ているのが悪い。あと、お前を乗せてくれたレッドドラゴンも一緒に旅をすることになったから」

「え!? わ、私がいない間に話進んでませんか!?」

「だから寝てるのが悪い」


 降ろしてください! 恥ずかしいです!! そんな子供っぽい駄々を背中でこねるエレナ。

 これだけ元気ならもういいかなと思った俺は走りながらこいつを離そうとしたが止め、立ち止まって下ろす。


「じゃ、行くぞ。最初の国までにあと五日位はかかるんだから」

「話が全く見えないんですけど、とりあえず何か食べたいです!」

「そこら辺の雑草でも食べてろ。もしくは後から来るレッドドラゴンに何かもらえ。ついてくるならついて来い」

「魔族より魔族らしいですよお師匠様!!」


 何やら抗議をしている様だが俺にとってはどうでもいいこと。

 なので俺はそのまま走りだすことにした。


「鬼畜師匠ーー!!」


 俺はちゃんと選択肢を与えたからな。



 そのすぐ後。

 俺はシュラヌとエレナに追いつかれていた。

 まぁ無理だよな。レッドドラゴンに速度で勝つなんて。


「お師匠様は弟子をないがしろにし過ぎです! 私じゃなければ愛想つかされますよ!」

「別に愛想つかすのは自由だから。俺は弟子要らないし」

「……弟子愛が足りませんね!」


 だから俺別にいらないんだが……。そんなことを考えながら普通に走っていると、「もう! 聞いているんですか!?」と隣に並んで叫んできた。


「聞いてる聞いてる」

「適当に返事しないでください!」

「前を見ろよエレナ」

「え?」


 シュラヌの注意に後ろを振り向いたエレナはそのまま樹にぶつかる。

 ゴン! という固い音を響かせた彼女は、「痛いですーー!」としゃがんで叫んだ。

 少し先で立ち止まった俺は振り向いてしゃがんでいるそいつに言う。


「何やってるんだ」

「痛みを耐えてます!」

「林道の中で走ってるのに周囲を確認しないのが悪い。シュラヌを見ろ。あんな荷物背負いながらも俺達に平然と追いついてきてるんだぞ。しかも周囲を警戒しながら」

「え、そうなんですか?」

「ああ。注意力散漫な誰かに代わって警戒してもらっているんだ。少しは労ったり自分で警戒したりしろ」

「うぅ……」


 チラリとエレナはシュラヌの方を見る。彼はにっこりと笑いながら「別に気にしなくていいぞ」と優しく言った。


 やっぱり爺連れてくるんじゃなかったか…? いやそれだと俺死ぬ可能性出てくるからな……。


 かなり甘やかしていると傍から見えるだろう光景を目の当たりにした俺は、ため息をついて地図を広げる。


「昨日までに半分は過ぎたから……今はラスティア山脈の一つ、ウライア山の林道か。山登って降りるのに二日ぐらいかかるとして……あと四日ぐらいあれば最初の国へ行けるか」


 なおこの計算は魔力を魔力のまま使わず自分のペースで行った場合の予想である。もはや二人の体力とかを計算に入れていないあたり、そうそうに切り離す、あるいは別れる気があるのが見え見え。

 自分でも潔いなと思いつつ地図をしまうと、「お師匠様! これはトレーニングですか!?」と割と近くに来ていたエレナが息を切らしながら叫んできた。


 ポジティブシンキングだなとこちらが逆に申し訳なくなる気持ちを抱かせる純粋さが眩しいなと思いつつ振り返り、この程度で息切れるなバカと貶してさっさと行くことにした。


「はい! 頑張ります!!」


 ……ここまでちょろいと逆に俺が心配になるんだが………まぁ方針としてはこんな感じでさりげなく鍛えるか。そっちの方が自分で動いてる分やる気になるだろうし。

 そんなことを思いながら、目の前に現れた男の心臓を問答無用で突き刺してナイフを抜き、仕舞ながら森の方へ全力で蹴った。


 さてさっさと進むか。

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