……これからどうすっかな
更新停止理由:書く気が萎えるバイトをしたから
「お師匠様! どこへ行くんですか!?」
「……とりあえずは俺が来た道を戻る」
「その間に教えてくれるんですね!」
「誰が教えると言ったバカ。俺はお前に教える気はない」
「なんでですか!?」
歩きながらテンションが高いエレナを適当に相手しながら走る俺。
「というより、俺に教えてほしいのはなんだ?」
「殺す技術です!!」
「堂々と言ってくれてありがとう。尚更教える気はなくなったぞ」
「ひどくないですかっ!?」
「どこがだ。大体お前、殺す技術なんて学んで何に使う気だ」
「お父様たちを見返します!」
「お前の親は知らんが、絶対に返り討ちにあうだけだから教える気はない」
「えー」
……俺走ってるのになんであいつ追いついて……ああなるほど。
チラリと振り向いて確認した俺は、不満そうなエレナに対し提案した。
「おいエレナ」
「なんですか鬼お師匠様ー?」
「……提案する。どちらか選べ」
「?」
「王様になるために殺しの技術を教わらないか、殺しの技術を教わるために王様を諦めるか。どっちがいい?」
「なんで王様になるのに殺しの技術は不要なんですか?」
不思議そうに質問してくる。
そりゃ当然だろうなと思いながら、「殺しの技術を覚えている王様の印象が最悪なのは当然だろ?」と訊ねたところ、「むしろ魔界じゃ安心される気がしますけどね」と呟いたのが聞こえた。
ああそう言えばこいつ魔界だったとさっき言われたことを思い出した俺は、「それでも俺は教えん。常識も良識もあまりない奴にはな」と断言する。
「私ありますよ!」
「俺からしたら全くないと言える。この世界に来たんだったらこの世界に合わせろ」
「そりゃそうでしょうけど……」
「俺をお師匠様というのなら俺の選択を選べ。ついてきたのはお前だし、選択するのもお前だからな」
あえて突き放す言い方で問い詰める。これで諦めてくれれば儲けものだと思うが、こいつの今までの言動から察するに対して障害にもなりはしない気がする。
まぁそれはこの答えで証明されるか。そう思った俺は不意に彼女の気配がついてこないことに気付いたために足を止めて振り返る。
すると、エレナは腕を組んで首をひねり、何やら考え込んでいた。
まぁ自分でも意地の悪い質問だと思う。どちらかをとれと言われてすぐに片方を選ぶなんてことを普通出来ないからな。
まぁぶっちゃけ俺には王のなんたるかを説くことができないので国を回って自分で学べとしか言えないからどちらにせよ俺が教えることなんてないが……こいつに護身術程度なら教えても大丈夫な気がしてきた。というより、覚えさせないと色々な意味で危ない気がした。
誰かいい奴いたかなと知り合いだと思っている奴の事を考えていると、「……やっぱり、両方択ぶのはダメですか?」と聞こえたので俺は「ダメだ」と断言した。
「それは提案に反する」
「そうですか……う~~ん」
なおも考え込む。どうやら素直にこの場で決めようという考えのようだ。
その姿を見た俺はまるで子供だなと思いながら――折れた。
「やっぱなしだ。その提案の事は忘れてくれ」
「う~~ん……え?」
「どちらも本当に教わりたいってことは分かった。その熱意が失われない限り、俺はお前に道を示してやる。学ぶのはお前だからな」
そう言った途端、エレナは笑顔になって「本当ですか!?」と喜んでいた。
「わーいわーい!」
「喜んでいるところ悪いが、さっさと行くぞ。走っても十日以上はかかるんだから」
「はい! 分かりました!!」
そう言って駆け出してしまったエレナ。
それを見送った俺はこのまま見捨てようかと思ったがため息をついてその考えを捨て、知らず知らずの内に魔力使っているからそのうちまっすぐ走れば倒れてる姿が見つけられるだろうと思いつつ後を追うように駆け出すことにした。
走り出して一時間ぐらい経ったのだろうか。多分、一時間はとうに過ぎているのかもしれない。
魔法を使うための原料である魔力をそのまま使い続けるのは意外と負担になる。俺以外に使っている奴を見たことはなかったが、一時間ぶっ通しで使うと心臓が痛み出し、身体が勝手に魔力を解いてしまう。
……今の俺のように。
「はぁ……はぁ……はぁ…」
心臓の部分を抑えながら歩く俺。途中の森を突っ切って国まで残り半分といった距離まで来てしまった。
汗が尋常じゃないくらいに噴き出す。これ以上は本気でヤバいと頭が警鐘を鳴らす。
しかし見つからなかった。あいつの事だからそのまま行って力尽きたんだろうと思ったが、言葉通りに行った場合のルートに倒れている姿がなかった。
そうそうに迷子かよあいつ……それともまだ先にいるのか?
そのどちらかしかないだろうが……なんて柄にもなく心配しながら足がよろめいて倒れた。
「…………くっそ」
魔力というのは未だに解明されていないエネルギー。俺の学がないだけで世間では常識なのかもしれないが、それを俺は知らない為の認識。
魔法を使うには魔力と呪文が必要。呪文に乗せて魔力を変換させたものが魔法なのだから。
だが魔力を変換せずにそのまま自身を強化する方法がある。
強化魔法を使うよりずっと強力に強化できるのだが、その分副作用も強力だ。
今の俺が最たる例。時間に比例した強化した部分――脚力なら心臓と脚、腕力なら腕といった具合――が痛み出す。
あいつもおそらくそのせいで昨日目を覚まさなかったのだろうと考えつつ晴れている空を大の字になってみていると、視界に映っている空を黒い影が通り過ぎた。
かと思ったら、なんか段々と近づいてきた。
堪らず感じる恐怖に「俺の最期ってこんなあっけないものか…」と諦観していると、その影――鳥のような姿――に人らしき影が見えた。
一体何の用だ? と思いながらぼんやりしていると、そいつは至近距離で地面に着地した。
ズドォンと地面が揺れ、俺が少し浮いた。
痛みが段々と引いてきたので何とか立ち上がろうとし出したところ、探していた奴の声が聞こえた。
「やっと見つけましたよお師匠様! 私を置いて行かないでください!!」
それに対し俺は「置いて行ったのはおまえだろ……」と言って倒れた。
やっぱり、自己最長記録で飛ばすと体が持たないな……。