王様との対話
案内されたのは謁見の間。俺たちは兵士が扉を開けてから各々作法など関係なく入っていく。
元々ランクオーバーゆえに自由にふるまえるルノア、ドラゴンであるゆえに知らないシュラヌ、常識がないエレナに、誰に対しても態度がほとんど変わらない俺。このメンツで作法なんてあってないようなものだ。
当然、周囲の偉い奴らはいい顔をするわけでもない。が、ルノアがいる影響かそれを表だっていう気はないようだ。
俺は見えているのだろうかと思いながら立ったままぼけっとしていると、王冠を腕輪代わりにしている精悍な男子が立ち上がり「我が娘の我儘に付き合ってもらい申し訳ないルノア殿」と頭を下げた。
あぁ、見えていないのかと納得。
話を振られたルノアはさりげなく俺のいる方向に視線を向けてから「まぁうちも家におると退屈になってしまったからの」と話を合わせる。
が、エレナはそんな空気すら読まないらしい。
「お師匠様? サラスさんどこですか?」
俺は沈黙のまま拳骨をエレナの頭に叩き込む。
彼女はその行為を見れなかったらしく、殴られた衝撃で地面に伏した。
「い、痛いんですけどお師匠様!? どうしてですか!?」
「折角ルノアが話をまとめてくれるのに俺を呼ぶな。あと、緊張感を持つぐらいしろ」
「どうしてですか?」
「あっちの人たちに俺は見えていなかった。だから一番権威のあるルノアに話を振った」
「え、ルノアちゃん子供ですよね?」
「……ああ見えてお前より長い」
「コールよ。乙女の禁則事項をばらそうとはいい度胸しておるの?」
「……人間界じゃ有名な奴だ」
「そうなんですか! 子供なのにすごいですね!!」
そう言われるとルノアは胸を張って威張る。
それを見ながら俺は隠れてため息をつくと、驚きから回復した王様が俺を認識し始めた。
「マントとフードで全身を隠し、ふらりと現れては数多の危機を救った冒険者。その名前が確かコールだったと聞き及んでいる。話に聞くような風貌ながらも、決して偽物が現れることのない人物。それが、お前だと?」
なんで尋問みたいなことになっているんだろうと思いながら仕方なく「そうらしい」と肩をすくめると、エレナが「さすがお師匠様ですね!!」と嬉しそうに発言したのでアイアンクローをお見舞いして黙らせる。
力を込めていくとよほど痛いのか腕をタップする頻度が比例して高くなっていくのである程度でやめておく。
「……まさに鬼じゃな」
シュラヌが頭を押さえるエレナと鼻を鳴らしてそっぽを向く俺を見てつぶやいたのが聞こえたが、当然無視する。
その結果周囲の視線を集めることになった俺はしかし、毅然とした態度で「そういえば第一王女の姿は見えないが?」と礼儀もわきまえずにしゃべる。
「……あいつにはひとまず王族としての責任などを再教育している。だからこの場にはいない」
「そうか」
ついでにこいつにも学ばせたいなと思ったが、面倒なので口に出すことはせず「しばらくはいる」と短く言って背を向ける。
と、そんな俺の態度が気に食わないのか誰かが声を荒げた。
「貴様! 冒険者のくせに王に何たる態度だ!!」
「あ?」
声がした方へ視線を向け、魔力を開放する。
普段外へ出さない魔力が出てきたおかげかこの場に振動が走り、風がないはずなのにチリが飛ぶ。
エレナはキョトンとしており、シュラヌ、ルノアは気が付いたようだが止める気はないらしい。
魔力が重圧のように覆ったのか対面してる側が一様に青い顔をしてる気がするが興味がない俺は、「気に入らないなら呼ぶなお前ら」と呟いてから魔力を抑える。
エレナの場合、この解放と抑制にブレーキがかかるようにしてあるのかと今更何となく理解してから今度こそ用がなくなったので俺は耳を貸すことなく勝手に部屋を出た。
しばらくはこちらを書いておこうかと思います




