王様と謁見
とりあえず首都にたどり着いた俺達が最初にやったことは、当然第一王女を家に送り返すこと。そこから先はエレナの社会事情を説明しなければいけない。
それが終わったのならこの国に用はないのでさっさと旅立ちたいのだが、予定というのはそれほど順当にいくわけでもないのでもう考えるだけ無駄なのだろう。
などと思いながら、第一王女を先頭に置いて街を案内させる……というフリをして単純に帰ってきたことを見せるパレードみたいにしてみた。
「コールよ」
「どうしたシュラヌ」
「姫様に対し失礼なのでは?」
「話を聞かないのがか? 別にいいだろ。あいつが聞いてる」
そう言って前の方を指さすと、第一王女の隣で歩きながら説明に一々驚くエレナの姿が。
それを見たシュラヌは「確かにそうじゃが」と言ってから気付いたらしい。
「って、そもそもお主気配が薄いんじゃな」
「限りなく、な。用がない限りは気配を出したりせん」
「そのお蔭でうちも普通にしていられるんじゃ」
俺の肩に乗りながらルノアはそう付け足す。その口調はどこか楽しそうである。
それにシュラヌは唸ってから「まぁいいか。どうせ言っても変わらんじゃろ」と諦めたような口調で言った。
それが誰に対してなのか分からんが……まぁ気にせんでいい範囲だろう。
そう結論を下し、人の道ができていることに気付かない二人の後をこっそりとついていった。
「うわーやっぱりどこのお城も大きいんですねー!」
「そ、そう? うちのお城はこれでも小さいって言われているんだけど」
「そうなんですか!? そしたらほかの国のお城はこれより大きいってことなんですか!?」
大通りを普通に歩くものだから住民は全員平伏していたのだが、彼女たちはそのことに気付いていないのか眼前にそびえたつお城のことを話題に盛り上がる。
俺達はと言うと大して興味がないので欠伸をしたり通りで買った果物を食べたり空を眺めたりしている。
と、ひとしきり盛り上がったからかエレナが振り返って「お師匠様! 人間もすごいですね!」とはしゃいでいるので息を吐いて「少し静かにしろ」と注意する。
「え、何でですか?」
「そこは誰の家だ?」
「えっと、サラスちゃんのおうちですよね」
「なんでここまで来た?」
「王様とは何か知るためです! アタッ!!」
話題が急にすり替わったので殴る。というより、ここまで察しが悪いとさすがに苛立つ。
俺がご立腹なのを雰囲気で察したのか抗議しないで蹲るエレナ。それを見たルノアは「帰ってきたんじゃよ、サラスは」とため息をついて答えた。
「あ!」
「お前も帰ったら怒られることを覚悟しておけよ」
「それは大丈夫です! 我が家ではお母さんが最強ですので!!」
「……ああ」
エレナの発言で最初の頃を思い出した俺は思わず同意の声を漏らすが、小さい声だったからか誰からも反応がない。
あったらあったで面倒だからいいやと思っていると、第一王女がこちらにきて「あんたたちも来なさい。送ってくれたんだから」と言ってきたのでおとなしくついていくことにした。
当たり前のようだが、入れたからと言って第一王女と一緒にそのままとはいかない。
俺達は兵士に連れられ来賓室に通され、声がかかるまで待機となった。
「何やら大事になったのぉ」
「まぁルノアがいるからな。礼は大体的にやりたいのだろう」
「言葉を返すがコールよ。主の話題の方が強くなると思うぞ? うちなんかが霞むほどにの」
「やっぱりお師匠様ですね! ところでお師匠様! 見た感じ結構貴重な品があるみたいですけど、どうしてですか? うちのお城には高価なもの、ほとんど表に出してませんでしたが?」
「見栄」
「そうなんですか!」
端的に答えたらルノアとシュラヌが呆れたような視線を送る。別に嘘は言っていないというのにどうしてだろうか。
そんな風に騒げるというのもどこかおかしいんだろうなと普通のない連中を見渡しながら応じていると、ドアがノックされ、兵士が一人入ってきた。
「王が面会の準備ができたとのことです。ついてきてください」
「やっとですか! いよいよですね!!」
何がいよいよなのか知らないが、とんとん拍子に話が行けばいいなと思った。




