で
短さを重視したはずが、ね。
「お師匠様! ここから先がレシウス王国ですか!?」
「まぁそうだな。首都までは更に四日は歩く」
「四日もですか! 大変ですね!!」
「そうでもない。なぁ第一王女」
「……はぁ、はぁ……なんなのよ」
予定以上のスピードでレシウス王国に入れた俺達五人。
ほぼ平原だというのに目を輝かせているエレナからの話題を王女に振ったところ、何故かは知らないが息が絶え絶えになっていた。
「大丈夫か?」
「なんであんたは平然としてるのよ……」
呼吸を整えつつ睨みながら質問してくる。
それぐらいならまだ余裕があるなと思った俺は、「さて、また歩くか」と歩き出すことにした。
「はい! 早く行きましょう!!」
「時間は有限、じゃからの」
「しかし随分容赦がないの」
「待ちなさいよ!」
シュラヌのつぶやきは王女の叫び声に消され、独り言と相成った。
村から出て約二日。俺のいつものペースで移動するのに段々とエレナが慣れ始めてきたようで、なんか普通に俺の隣で楽しそうに歩いている。魔力の量は、なぜか少なくなっている。
ちなみにだが歩きながら俺は、まず魔力の感じ方について教えた。
どうやらその辺りから何も知らなかったようで、教えたところとても驚いてくれた。今はまだ習得中である。
んで、第一王女は、文句ばかり言うので半ば切り捨てている。自分で志願したのだから文句を言われたところで改善する気のない俺としては「だったら消えろ」というだけである。
一日で二十回ぐらい言われてようやく何も言わなくなったが、それでも王女という立場の弊害かついてくるのが辛そうである。
だからと言って何をするわけでもないが。
まぁそんな感じでレシウス王国の領土内に入った俺達は、ここから一番近いギルドがあるラルテミア領にあるグレッサ町まで向かっている。あと数時間歩けばつく距離である。
「馬車があればこの旅も楽になりそうじゃの」
「歩いてないお前が言うな」
俺の肩に乗ったままそんなことを呟くルノアにそう言いながらも、内心確かにと納得する。
今度馬車でも買おうかと思ったが、馬車を操れるやつが一人もいないことに気付きどうするべきか考える。
が、すぐにそれを放置。そして後ろを見ると、なんとかついてきている王女の姿が見えたので、「休憩するか」と提案する。
「早く首都に行きましょうよ!」
「その前にギルドで身分証作ってからじゃないとダメだからどの道一日潰れる。故に一日二日ぐらい変わらない」
「それもそうですね!」
やれやれ。こうも簡単に言いくるめられるとは本当に大丈夫なのだろうか。
若干エレナの将来を不安視しながらマントから水が入った竹筒を取り出して飲む。
「うちにもくれぬか?」
「動いてないのだから喉乾いてないだろ」
「私にもください!」
「シュラヌに頼め」
「はぁ、はぁ、はぁ……冒険者って、こんなにつらいわけ?」
もはや気品の欠片もない状態の王女。だが、その状態でも追って来れた根性には素直に感心する。
意外とやるものだと思いつつ新しい竹筒を取り出した俺は、「ほれ」と王女に渡した。
「水だ。どうせ持ってきてないだろ」
「…………あ」
「礼ならまだだな。お前を追いかけに戻ってきた兵より先に首都に着かないと」
「え?」
そこでキョトンとする王女。
こいつこの現状分からなかったのかと思いながら、「ルノア。村にいた兵たちは今どのへんだ?」と質問する。
「ふむ。丁度うちたちが一昨日野営した場所あたりじゃの……このペースじゃとうちらが一日前には何とか首都にたどり着けるかもしれぬ」
「だそうだ」
「え、それって」
「どうせお前が何も言わないでついてきたんだろうと思ってな。ルノアに頼んで兵たちの動向を監視してもらっている。お前の父にはルノアが昨日事情を説明したから、鬼ごっこみたいな形で追いかけてきてもらっている」
「どうしてよ」
「この状況で体を鍛えたほうが今後有用だからだ。何をするにも体力は欠かせないからな」
「まぁそれに気付いたのはうちじゃがの」
人の肩に乗っておいて愉快に笑いながら補足するルノア。正直下ろしたいが、降ろしたところでまた昇ってくるだろうからやらない。
と、その話を聞いていたエレナが「頑張ります!」とガッツポーズをしたので「ああ頑張れ」と返してから王女の方を見る。
見た最初は俯いていたのだが、顔を上げて水を一気飲みしたと思ったら、「ほらぐずぐずしないで行くわよ!!」と言い出して先に行った。
「むむ。負けませんサラスさん!」
それを見たエレナが負けじと追いかけて行ったので、せっかく休憩にしたんだがなとため息をついてから俺達も駆け出した。
次がとんでもなく長く…




