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殺人鬼と元魔王候補  作者: 末吉
プロローグ
11/35

見た目の印象って怖いよな

「勝手に入っていいぞい。どうせうちしかおらぬし」

「邪魔する」

「お邪魔します!」

「邪魔するぞ」


 三者三様の対応でルノアの家に入る。別れてすでに十日は経っているからか、生活感は取り戻していた。


 最初に入った時ほこりまみれだったからな…そんなことを思い返しながらブーツを脱いで段差をあがる。

 それを見たエレナは「脱ぐんですか?」と訊いてきたので「この家はな」とだけ答える。


「わざわざ段差作ったんだよ、こいつ」

「時々段差を忘れることもあるが、あった方が生活の区別ができて良かろう?」

「知らん」


 ルノアの補足を適当に返事した俺は軽く腕を伸ばしてから首を回し、奥へ進みながら「泊めてくれるのか?」と質問する。

 それに対しルノアは「まぁの。一体どういう経緯で主らが集まったのか興味深いし、コールと一緒に過ごしたせいかここ数日淋しくなっての」と答えた。


 普通戻って最初の数日じゃないのかと思いながらも二階へ行ける階段のそばまで来た俺は、振り返って現状を把握する。



 エレナは履いていた靴を脱いで床に座り周囲を見渡し、そんな姿を見ずにただ俺を見ているシュラヌ。

 説明しろと言いたげなその視線をスルーすることにし、座ってからルノアに訊ねた。


「そういえば宿屋に王族が泊まっているようだが、最果てに何かあるのか?」

「視察、らしいぞ? ……もっとも、コールが出ていったあとじゃが」

「ふ~ん」


 それからずっと足止め食らってるのか……等と考えて瞼を閉じたところ、ここに来るまでの緊張感や諸々が解けたようで、意識を手放した。





 ――――夢を見た。大分懐かしい過去のこと。

 ただしそれは時が流れたせいか多少曖昧になっていたが――


 ――あいつ(・・・)の笑顔だけは鮮明に覚えていた。




 パチパチパチ……居間の真ん中にある窪みの中で薪の燃える音が聞こえる。

 後頭部がいつの間にか柔らかいなにかに乗せられている気づいた俺は、目を開ける。

 視界に映ったのは、夢に出てきたあいつの顔。

 一瞬目を疑った。いるはずのない人の顔を見たのだから。

 が、瞬きをしてから見ると、その顔はエレナの寝顔になっていた。


「……」


 夢の名残かと思い俺は体を転がして膝枕だった状態から抜け出し立ち上がる。

 と、そこへルノアが声を掛けてきた。


「随分と警戒することもなく寝てたではないか?」


 声の方を向くと、背伸びをしながら立ち上がるルノアの姿が。床を見ると瓶が散らかっていた。


「酒でも飲んでいたのか?」

「ただの果実を絞った飲み物じゃよ。エレナとシュラヌに話を聞く際に呑ませたものじゃ」

「……それで? 知ってどうするつもりだ?」


 そう訊ねるとルノアは欠伸をしつつ「今は夜じゃ。また明日話をしようではないか」と言って俺を通り過ぎて二階へ向かってしまった。

 目が冴えた俺は、朝まで外を出歩くかと思い家を出た。



「少し寒いな……」


 寝静まっていることが明らかにわかる真っ暗闇の中呟く。

 とはいえ(スタピア)ルナティの灯りにより完全な暗闇という訳ではないのだが。


 不意に空を見上げる。丁度視界の真ん中に入ったのはルナティ。銀色に輝く光がこの村に差し込み、影を映す。

 人通りがないのは当たり前かと思いながら歩き出す。


 どうして外に出たかというと、特にやる事がないからだ。

 このまま置いて行くという選択も出来るが、そんなことをするほど俺の性根は腐っていないと信じたい。


 ……真っ先に思い付いたがな。


 歩きながらそう考えたところ、柵の外から気配がした。

 トラップにかかったのか悲鳴が上がっている。しかしその声を柵の近くにいる住民は気付いていない。


 異常ではあるが正常と言えるこの光景を違和感なく受けいれられるのは、どこか客観的に見ているからだろう。まぁ興味がないからな。


 適当に村を歩き回る。一軒一軒畑を持っているからか、この村は意外と広い。

 とは言ってみたが代わり映えなどほとんどないのですぐ飽きるのだが。

 ギルドが置かれてないからなここ…と入口のところまで歩いた俺は考え、そういえば昼間騒がしかった兵士たちはどうなったのだろうと考え欠伸を漏らす。


 どうやら歩いたせいで眠くなったようだ。まぁ軽い運動をしたようなものだからな。

 そう思った俺は踵を返してルノアの家に戻ることにした。

もしよろしければ感想等頂ければと思います。

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