ステージ7:地獄炎瑠
マグマと溶岩には違いがある・・
それについては、ウィキ○ディアを参照に・・
地獄炎瑠
それは一般的には溶岩の滝としてこの世界では有名な場所で、流れ出る溶岩は循環しているため永遠に流れが止まらないとされている。
この溶岩の滝の中にはある特定の事をすると、洞窟の入り口となる一種の都市伝説があるのだが、現在のところは謎のままであったらしいのだが・・炎の大魔導士エンによれば、洞窟は存在するとのことらしい。
俺たちは現在、その入り口にあたるところまで歩いてきている。
すでに周りは、サウナみたいに暑く、ライは特に苦しそうな顔をしながら歩いている。
これから行く場所に入るためには、入口のところで特殊な道具:炎龍と呼ばれる道具を使う必要があるらしい。
俺は興味本位で、エンにその道具の事を聞いてみたところ
「炎龍はうち自身なんよ」
とエンはあっさり言う。
(え? 言ってることが理解できない)
「それはどういう意味なんですか?」
と俺が驚いた顔で聞くと、ディルが暑さによって出た汗を拭きながら答えた。
「地獄炎瑠は龍族だけの特別な場所ってことで、龍族自身が鍵そのものみたいなの。だから、炎龍っていうのは龍族自身の事をさすのよ」
(意味は分かったけど、それがエンと何の関係が?)
俺の疑問に思った顔を見たエンが、追加で説明を始めた。
「うちはな、龍族と人間のハーフなんだ。今のうちは人間状態のエンって事になるんだ。戦闘時とか、激昂しているときなんかは龍族の姿になるんだけどな……龍族の状態だとやや、気分が高揚してしまってな、ついつい言葉が荒くなるんだ。それで、2重人格だなんて、良くからかわれたわ。そんでな、話を戻すけど、炎龍っていうのは、龍族自身を表す言葉なんだよ。だから、龍族の肉体が炎龍という道具と言うことになるんだ」
とへらへらしながらエンは語った。
自分の身体自身を道具って言って笑えるなんて、心の強い人なんだな……
そんなことを考えていると、ようやく目的地の入口に着いたようでエンが真剣な面持ちで言う。
「そら着いたぞ。ここが地獄炎瑠だ」
目の前に広がるのは、圧巻の光景だった。
常に噴火の絶えない火山地帯。さらには空から火炎弾が降り注ぐ灼熱の大地。その中に巨大な、俺の世界で言うナイアガラの滝レベルの巨大な溶岩の滝があった。おそらくあれが地獄炎瑠だろう。
「じゃあ、中の洞窟まで行くよ。」
と、エンは滝に向かい手をかざし何かを話す。
「我、炎龍王の子孫なり。汝、我が呼び声に応じ道よ開け」
そういうと、溶岩が裂け、道ができた。
すげえ! 溶岩の中に橋がある!
俺がそう思っていると、ディルがその光景を眺め
「へえ~こういう風に道ができるんだ」
と言う。エンは、こちらに向かって手を仰いで
「早くいくぞ!うちについてこい。」
と言い、洞窟へ向かって走っていく。
俺たちも駆け足でエンについていくのであった。
そして洞窟内に着くと、エンが何かおかしいという。
「おかしい……こんなはずじゃない」
エンの表情には、先ほどの暑さには全く動じていなかったのに、汗が一筋頬を伝っていた。
「どうしたんだ? エン」
ライは自身の汗をぬぐいつつ、エンの方を見つめる。
「あのな、ライ。うちの一族はだいだいこの地を守ることが義務なんでな、見張りとかそういうのが普通いるんだが……何故かいないんだ」
「たまたま、いない時間なのかもよ」
とディルが言うが、エンはいいやと言い、周りを見渡す。
「その場合は警報用の魔法が発動していないと変なんだが……」
とリュウに魔法の催促をするようにじっと見る。
リュウはそれに気づくと、頭上に手を挙げ、青い光を放つ。
「確かに、今は何も魔法は発動されていないわ」
と魔法の発動の確認をしたリュウがエンに向かって言う。
「おかしい。生体探知魔法をかけてくれ」
分かったといい、再びリュウは手のひらに、青い光を集中させて魔法を使う。
その結果を、リュウは言うのだが……
「なんか、一定の場所に集中していて・・みんな・・弱ってる? 集中している場所ではみんなの生命反応が弱いわ。何らかの異常状態か、重傷を負っている可能性があるわ。」
その発言にエンは驚きを隠せなかった。
「なんだと!そんな馬鹿な……。龍族は戦闘系の魔導士が集中していて一国分の軍隊と同等の力を持っているんだぞ」
すると、リュウは何かに気付いたようで、再び口を開く。
「まって……。違う場所で……強い生命反応を2つ感じるわ。……この感じ……1つはホルブだけど、もう1人は……誰?」
そういうと、慌ててリュウに詰め寄るエン。
「その場所に案内できるか? リュウ」
魔法を解き、リュウはエンに向かって
「洞窟の地図ない?」
といい、エンが持っていた地図を受け取ると一点を指さす。
そこには”封印の間”と書いてあった。
「封印の間? 何があるの?」
とディルはエンを見てエン聞くが
「分からない。龍族の長老に聞かないと……」
エンは顔を暗くしてそういう。
ディルはそんな中でも冷静な面持ちでリュウに
「じゃあ、その集団のいる場所は? そこにいるかもしれないわ!」
と聞く。リュウもそれに答えるため、地図を見る
「えっと……ここよ! 地図には監獄の間とあるわ!」
「監獄の間! なぜそんなところに……」
「とにかく急ぎましょ!」
俺たちはまず、監獄の間へと向かった。
監獄の間に着くなり、エンは驚いた。正直言って俺たちも驚いた。
さっき言っていた軍隊よりも強い龍族が、血だらけで檻の中にたくさんいたからだ。
「みんなどうしたんだ!」
エンは慌てて龍族に近づく。すると、龍語なようで俺たちには分からない言葉でエンは龍達と話し始めた。
「リュウ!それと翔琉君。すまないが彼らに治療魔法を」
「ああ!」
「治すわ!」
と俺とリュウは龍族のみんなを檻から出して、回復させるべく魔法を使う。
俺は傷や体力の回復魔法、リュウは異常状態回復や防御力向上魔法を主に担当する。
「エン。彼らはなんて言っていたの?」
とリュウは龍族を回復させながらエンに向かって聞く。
「……。あの組織が動き始めたそうだ……。」
そうエンが言うと、リュウは勿論、ディルやライも驚いた顔をして、エンを見る。
「あの組織ってまさか!」
「ああ……」
「あの組織って?」
と俺が聞いたらみんなが一斉に沈黙してしまった。
あの組織って何なんだよ……!
少し沈黙が続いた後、ライが重い口を開き、語りだす。
「翔琉……実はな、この世界には俺たちみたいな魔導士もいれば、世界を混乱に陥れるそういう魔導士たちもいるんだ……。その組織の名前は暗黒魔法教団。いわゆる戦争や犯罪を行う集団だ。」
「暗黒魔法教団……」
「しかし、5年前の第1次魔対戦において、俺たち7人の大魔導士と、3人の太古の魔導士たちによって壊滅させたんだが……」
「どうやら、壊滅には至っていなかったようだね……」
とディルは言った。悔しそうに、歯ぎしりをして……
「ブラッドには暗黒賢者と呼ばれる幹部が5人いてね。その5人は全員太古魔法を扱う手練れで、1人で国1つ滅ぼせる力を持っているんだ。だからこそ……だからこそ……こいつらは、倒さなければならない……」
とライは言う。声が少し震えていて、表情は暗く、うつむいている。
「その、暗黒賢者の1人が今ここにいるらしい……。封印の間に。」
そういうエンにリュウは回復を終えて、立ち上がりエンに向かって
「そういえば、結局封印の間って何だったの?エン」
と聞く。
エンは、その質問に答える。
「封印の間は・・龍族の長老が代々受け継ぐ記憶の転写場所で、様々な記録が残っている場所だって・・長老のみが入室でき、龍族の聖なる場所・・うちは知らなかったけど・・。」
そういうエンの表情はこの中で一番暗かった。
そして、俺も龍族の回復がちょうど終えた。
それを見たリュウがエンに
「じゃあ、行きましょ! 封印の間へ。」
といい、エンの手を引っ張って、監獄の出口へと走り出す。
俺とライ、ディルもその後に続いて走っていく。
封印の間へ入ると、空中にはりつけにされている男と下でその光景を眺めているマントの人物がいた。
マントの男はこちらに気付くと、フードを脱ぎ素顔を見せた。
素顔は灼眼の虎の獣人だった。
「久しぶりだな……ライ。」
「貴様は……ボル!(そんな! 何故奴がここに……!)」
「ライ……この人は誰?」
と俺が聞くと、ライはかみしめながらこう言った。
「俺の……義理の兄だ……」
次回、ライの兄ボルとの戦闘!
翔琉vsボル・・戦闘の行方はいかに