セカンドステージ39:いざ時限城へ
時限城……この場所には、今回の物語のラスボスであるところのロギウスがいる場所である。
そして侵入を防ぐ、8属性の結界で守られていた。
しかしながら、もはやその必要もない。
魂記憶が燃え尽きた瞬間に、結界が全て解かれたらしい。
そして何より、今時限城の門の前に来ているのだから―――――
「いよいよ、この時が来たようだね」
ディルは緊張を高ぶらせる一言を発する。
それに呼応するように、全員の緊張感が一層増した。
最終決戦……聞こえがいいが、大抵の物語には必ず裏があると言うものだ。
今回はそれがないことが有難いのだが、すでにフラグが立ってしまっているのが残念である。
そのフラグとは、”謎の青年”の存在である。
そして”奪われたアマデウス”など、数多くの謎が残っていることには間違いない。
おそらく、ロギウスを倒した後に現れて”真の黒幕だ”とかいって、戦闘になるのではないかな――――――と言うことが、俺の頭の中では渦巻いていた。
だが、今はロギウスを倒すことに集中しなくてはならないだろう。
そのためにも、全身全霊を込めて戦いに参加する所存だ。
「さてさて、じゃあ行こうか」
そういってライが勢いよく扉を開ける。
すると、案の定罠が待っていた。
それは、暗黒教団の幹部とボス、それにライたちのコピーと思われる。
そして、時限亡者たちの上級が300体。
圧巻の光景であった。
「なんか、すごいね――――」
という他なかった。
「ここは私たちに任せなさい あなた達は先に行きなさい」
そうフルートとアニオンが言い、戦闘態勢になった。
「勝負は一瞬! ジンライは翔琉を連れて速攻で突破! 他のメンバーは敵を迎撃しながら、前進して! 私とアニオンはここで敵を食い止めとくわ」
「安心して、私たちが本気で戦えば、あんな奴らすぐよ♪」
フルートとアニオンはその言葉を最後にして、戦いへと向かった。
「よし! 俺たちもいくぞ! 翔琉! ジンライから離れるなよ!」
そういってライや、他のメンバーも進んでいく。
俺はジンライにしがみついて、光天神状態で進んでいく。
さながら花火を間近で見ている気分だった。
ドンパチやるなんて言うのを、銃撃戦では言ったりするのだが、これはもはや表現しようがない。
次々倒されていく、時限亡者、そしてコピー……
フルートとアニオンが本気を出している――――――と言うと、どのくらい本気なのか分からないだろう。
本来、彼女たちは自分自身に強力な封印をしている。
何故ならば、そうしておかないと、あまりの強力すぎる力のせいで、空間に歪みが生じてしまうほどらしい。
ざっと20年近く、自分の力を封印していた。
その間は、封印から漏れ出した力のみで、魔法を使用していたらしい。
つまり、今の彼女たちは封印を完全に解かれた、完全な力を発揮できるらしい。
力を解放した以上は、全てを使い切って、再び封印できるレベルまで発散しなければならないらしい。
その量は、惑星2つを同時に破壊できるレベルの量である。
そのため、連合はこの世界において、最強の防御魔法を地面に展開している。
彼女たちの本気によって、この星を破壊されないためにも――――――
「久しぶりに全力出せて楽しいねアニオン♪」
「だなフルート♪」
楽しそうに戦う彼女たちを背にして、俺たちは城の奥にある王の間へと向かう。
「こっちよ!」
リュウを先頭にして、奥へ奥へと進んでいく。
道中誰もいなかった。
何かおかしい―――――
「着いたわ! ここよ」
リュウは巨大な扉の前で止まる。
そしてディルも扉を見て、ここよ、と言う。
悪趣味な扉であった。
そしてなんとなく【オールドア】に似ている。
「じゃあ、準備は言いかしら?」
はい、という返事も聞かぬまま、リュウは扉を開ける。
そしてその先にいたのは、玉座に座る1人の女性―――――ディルの肉体である。
しかしながら、その肉体に宿っているのは全く違う人物――――ロギウスである。
「ようこそ、我が居城へ。 待っていたよ天野翔琉・ディル、そして他の偉大なる魔導士たちよ」
そういってロギウスは玉座から立ち上がる。
「本来ならば晩餐の用意でもしておくのが客人を招く際の礼儀と言うものだが、すまないね。 そんなものを用意する間もなく、君たちはここに来てしまったから」
そういいながらゆっくりと歩みだす。
そして、手を前にかざし
「まずは、他の皆さんにはご退場願おう」
と、俺とディル、ジンライ以外の足元に黒い穴が現れて、一瞬で引きずり込まれてしまった。
これで、封印の儀式を行うメンバーはいなくなってしまった。
「みんなをどこにやったんだ!」
俺がそう叫ぶと、ロギウスはクスリと笑い
「そう噛みつくな。 単純に仲間たちの元へ送ってやっただけだ。 つまりは奴らは現在、罠の中で戦っているのさ」
「なるほどね。 フルートたちのとこまで、戻されたわけか。 やられたわ」
とディルは言う。
そして続けて言う。
「あなたの目的は―――――いえ、あなたの真の野望と言うべきなのかしら?」
「なに?」
ぴくっとロギウスは反応する。
「小娘――――貴様何を知っている?」
そういったロギウスの表情は明らかに動揺していた。
いったいディルは何を知っているのだろう?
「ふん、小娘の戯言に興味はないな。 我の目的は我がなすべきことしたことが正しいといえるのだ。 まずは我の目的と悲願の達成のためにも――――――お前の身体をもらうぞ! ジンライ!」
そういってディルの肉体から飛び出たロギウスの魂はジンライに向かって飛んでいく。
ディルはその隙をついて、肉体を取り戻す。
ジンライは避けることができなかった。
とっさに動くということが反射的にできなかった。
だから、仕方がなかったので、俺はジンライの身体を押した。
そしてジンライの代わりに、ロギウスの魂が俺の身体に侵入してきた。
「翔琉ママ‼」
「翔琉‼」
そういって二人は叫んだが、もう遅かった。
「ぐぐぐぐ……ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
悲痛な叫びが玉座の間に響く、そして部屋の中央に闇の球体が現れて、その中へ俺の身体と魂は吸い寄せられる。
そして球体の中に消えていく。
「翔琉ママを返せ‼」
ジンライは光天神を発動させて、球体に向かうがはじかれてしまう。
そして身体に戻ったディルは時魔法を操って、自分の身体から完全に邪気と闇を打ち払い、体力が完全に回復する。
「ジンライ、落ち着いて! 私の時と同じだわ。 もうすぐ翔琉の身体はあの球体から出てくる。 そしてそこにロギウスが宿っているわ―――――」
「だったらなおさら……‼」
「落ち着きなさい‼ あの球体には攻撃は効かないわ。 だから出てくるまで、待ちましょう‼ その間に対策を練るのよ‼ 相手は伝説の罪人‼ むやみに行けば、さっきみたいに肉体を奪われるわ‼」
ディルは球体の周りに魔法をかける。
遅延系の時魔法。
これで覚醒まで時間は稼げる。
翔琉はどうなっているのかしら―――――と彼女なりに心配はしているのであった―――――




