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MW元   作者: ただっち
ファントムソウル編
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セカンドステージ33:集う仲間

 翔琉とポセイドンが激しい攻防を繰り返す中、市街地ではグランやボルたちが時限亡者たちと戦っていた。

 いずれにしても上級ばかりなので、相当手こずっているようだ。


「はあ……はあ……こいつらいったいどこから湧いてくるんだ?」


 思わず愚痴をこぼすボルに、グランは知らぬ! と苛立ちをぶつけるがごとく言う。

 その苛立ちからか、次第に余裕がなくなって来ているのがうかがえる。

 体力に精神力を同時に消費させているので、当然と言えば当然なのであろう。

 さらに言えば、大魔導士たちは町の住人の安全も考慮に入れて戦っているので、純粋に戦闘に集中することができていないというのが大きい。

 さらに翔琉とリュウ達の安否など、いまだに事情を完全に把握し切れていない彼らにとっては、終わりの見えないこの戦闘は苦しいものである。

 しかしこの苦しい戦いも突然の光が上空を覆ったことで終止符を迎えた。

 時限亡者たちはその光にうち滅ぼされたかのように消えていく。

 まるで幽霊が成仏するかのように―――――グラン達にはこの光には見覚えがあった。

 言うまでもなく、これまで何度か見たからだ。

 彼らの結論、思考が導いた答えは、光属性の最強魔法、神之憤怒であるという確信である。

 光属性の魔法は、邪悪なものを滅する性質に加えて、光属性の最強魔法、神之憤怒は強力な破壊をもたらす魔法である。

 時限亡者たちが消えたのは、神之憤怒であることの証明ともいえる。

 しかしながら彼らの結論はこれでは終わらなかった。

 その理由が、”翔琉以外の個体から放たれている光景”が目に映ったからだ。

 光の元には、先ほど自分たちを飛ばした、ポセイドンがいる。

 そしてポセイドンの周りにはおびただしいほどの光が収縮されていて、何よりポセイドンが纏っている光は神魔法:光天神そのものである。


「行かん! あの攻撃をまともに食らえば町が沈むぞ!」

「ジンライやリュウ達も気になるし……何より翔琉自身も危ない! 急ぐぞ!」


 そういってグラン達は、すでに瓦礫と化した神殿へと向かうのであった――――――



 ほぼ同時刻、この都市の近くには、ディル達が来ていた。


「やっぱり、まだ時間かかってたか! まあ、ジンライちゃんいるから当然と言えば当然なのかね?」


 そんな悪態をつきながらも、アニオンは翔琉たちの事を内心では心配していた。

 そしてアニオンの他にも、ディルやフルート、エンも……

 ぼこぼこの顔のトルネに至るまで全員が全員翔琉を……え? ぼこぼこ?


「痛いんだけど、花魁ども。何故殴る! 何故蹴る! 何故痛めつける? しかもよりによって顔だし! これじゃあ、女の子たちと夜遊びできなくなる……痛い!」


 最後まで言わせねーよ、的な勢いでフルートがトルネに殴り掛かる。

 血反吐を吐きながら、その場に倒れるトルネに誰も同情の目を向けなかったその時、町の上空で神々しくも強い光が現れる。


「あの魔法は……光属性の最強魔法、神之憤怒!?」

「と言うことは、翔琉が?」


 アニオンとフルートはお互いに顔を見合わせて嬉しそうに言うが、ディルは”違う”と言う。


「あれは翔琉の魔法じゃない! 根源的に邪なるものの気配と、翔琉の魔力をあの光の下に感じる!」


 そういった後、2人の顔は険しいものになった。


「じゃあ、あれは敵?」

「このままじゃ、やばいんじゃないの?」


 急ぎましょう! と翔琉の元へ女性陣たちは急ぐ。

 一方エンは、トルネの体力を回復させていた。

 治療魔法が使えないので、道具魔法を用いて回復させている。

 このエンの行動が、のちに翔琉たちを助けることになるのを、この時女性陣たちは考えていなかったのだ……



 場面は再び俺、天野翔琉の戦闘風景へと戻る。

 俺は、戦力で輝天鏡を生成する。

 現状、最大で最高で最上の鏡を、自身の精神が壊れてしまっても構わないというくらいに、必死に必死に振り絞って作る。

 次の瞬間には倒れてしまうかもしれないくらいに、精神はすり切れていたが、何とか輝天鏡を生成するのに成功する。

 後は、あの神々しく、まがまがしい光の塊を跳ね返すことができれば俺の勝利となる。

 ただ、問題なのが”本当に跳ね返すことができるのか”という点である。

 残念ながら、可能性として最も一番いい方法を取っただけであって、完全に攻略できるとは言われていない。

 現代ゲームで言うところの、F○Ⅸで裏ボスを倒すレベルくらいで微妙なところである。

 まあ、ゲームの話はこんな時にしている場合ではない。

 今は現状の打破のために、全力で取り組むのが一番いい。

 こんなことを考えているといつの間にか光は迫ってきていた。

 くそ! 考える余裕があるなら現状を打破しろ! 俺!


「神之憤怒! 頼む! 跳ね返ってくれ! 光の魔法:輝天鏡・最大出力!」


 そして俺の盾と、ポセイドンの攻撃がぶつかる。

 激しい衝撃波が辺りを襲い、瓦礫が塵となっていく。

 

「お願いだ! 跳ね返れ! この野郎がぁ!」


 声は響けど、光は跳ね返らない。

 そして次第に押されていく。

 腕がきしみ、足が地にめり込んでいく……そして驚くことに、輝天鏡にひびが入りはじめるのである。


 ”馬鹿な! あの輝天鏡が割れるなんて……ありえない!”


 アマデウスは思わずポロリと言う。

 過去にさかのぼっても、こんな事態は考えられなかったとアマデウスは後に語った。

 最悪の結末を想定しなければならない状況になってしまっている。

 勝てる可能性があったのが一転、死の危機に瀕している。


”すまない、翔琉。計算違いだった。ここで終わってしまうことになるなんて……”


 アマデウスは声を擦切らせ、懺悔をするかのごとく静かに言う。

 盾のヒビは次第に広がっていく。

 

”翔琉……”


 もう何も言うな、アマデウス! そう彼に言い聞かせる俺は、アマデウスと共に死ぬことをすでに覚悟を決めていた。

 どのみち助からない。

 あがいたけど、どうにもならなさそうだ……


「ありがとうな、アマデウス。そしてみんな! 俺が死んでも、頑張ってくれ!」


 走馬灯のように俺の思い出はめぐりにめぐる。

 記憶は繋がり、感謝の言葉であったことが心の中でこみ上げる。

 そして俺は光に飲まれた。

 結果から言うなら、天野翔琉おれは直撃を受けた。

 情状酌量の余地なく、かわす余裕もなく直撃した。

 死んだことだし、閻魔大王様がいれば、今すぐにでも裁いて天国か地獄へと俺を飛ばしてしまうんだろうな。

 しかしながら、閻魔大王様の力は及ばなかった。

 何故なら、俺はまだ生きていたからだ。

 ん? 生きている?

 あれ?


「光属性の最強魔法、神之憤怒の最大を食らったのに……なんで?」


 そう思って上空を見ると、ポセイドンも唖然としている。


「お前! どうやってこの魔法を!」


 どうやらこの魔法をどうにかしたのは術者でも、俺でもない。

 つまりは第三者の仕業と言うことになる。

 第三者なんかどこに……!

 辺りを見回す余裕もなく、俺の身体に何者かの腕が刺さったことに気付く。

 しかしながら痛みは全くない。


「え? これってどういうことだ?」


 腕の持ち主の顔を見るべく、後ろを振り向く。

 するとそこにはフードをしていて素顔が分からない、謎の青年が立っていた。

 俺の身体に突き刺した腕を引き抜くと、手にはアマデウスと光の玉が入っていた。

 青年は光の玉を握りつぶす。

 そして、アマデウスを青年が持っていた瓶の中に入れる。


「おい! お前何者だ!」


 俺は魔法を使おうとしたが、全く使えない。

 それどころか、身体が動かなくなった。

 そのまま地に這いつくばる形に倒れこむ俺に対して、青年は無言のまま飛び去ろうとする。


「待て! ……」


 声は出すことができるものの、しかしながら俺は動くことができない。

 正確には動きたくても動く動作をすることができない。

 何故だ?


「なんで動かないんだよ!」


 必死に叫ぶも、何もすることができなかった。

 地についてる感覚が全くない。

 こんなことは初めてだ。

 謎の青年はフード越しに笑い、空へと飛んでいく。


「待て! お前……何者だ?」


 上空にいたポセイドンは青年の行く手をふさぐ。

 しかし青年は何も言わずに、その場を抜けようとしたために、ポセイドンは攻撃を仕掛ける。

 先ほどの神魔法がまだ残っているようだったので、先ほどの極大の神之憤怒を青年に向かって狙う。


「お前はこれで消えろ!」


 そういって笑みを浮かべたまま、彼は謎の青年に向かってその魔法を浴びせようとした。

 最強の光属性の攻撃……

 だがポセイドンは先ほど起きた出来事を忘れている。

 否、信じられなかったのだと言えるだろう。

 何故先ほど、神之憤怒が消えたのか―――――

 その実態をすぐに考えずに感情のままに攻撃をしたポセイドンは案の定、青年によって魔法攻撃をかき消されてしまい、そして俺の時と同じように、青年の手がポセイドンの身体を貫いた。

 だが、俺の時と完全に同じでは無かった。

 青年が手を抜くと、そこには心臓と神魔法の光が握られていた。

 ポセイドンの心臓はそのまま握りつぶされ、塵となってポセイドンの身体は朽ちていった。

 断末魔さえ叫ぶ余裕がないほどに、あっさりと消えていった。


「そんな!」


 俺の声を気にする間もなく、青年は遠くの空を見つめて飛び立とうとする。


「待て! アマデウスを……返せ!」


 そう叫ぶが、俺は何もできない。

 こんな時、本当に何もできなくなった時の無力感が本当に腹立たしい。

 力を取り上げられたら、所詮俺はこんなものなのだろうか?

 なんて無力なんだろう……なんて無力なんだろう……


「何言ってるのよ! 私たちがいるじゃない!」


 そういって上空から突然何かが飛来した。

 何かなんて言うのは失礼にあたるな。

 あれは、俺に初めて魔法を教えてくれた師匠にして、初めての仲間、ディル!――――の魂の入った人形!

 そしてよく見ると、上空の青年の動きが止まっている。

 その周りには、アニオンとフルートがいる。

 あの2人が今、青年の動きを止めているようだ。


「あと、あたしもね!」


 そういって瓦礫からリュウが飛び出してきた。

 瓦礫の中にいたのかよ……あれ? ジンライとホルブは?


「安心して、あたしの張った水の結界の中にいるから2人共無事よ!」


 俺が聞こうとした質問をさも当然のように言うリュウに、俺は心読まれやすいのかなと思っていた。

 まあそんなことはさておいて、謎の青年の周りを世界最強クラスの女魔導士たちが取り囲んでいる。

 青年も流石に身動きを取れないようだ。


「さあて、君の正体を探るのも楽しいけど、まずは……」

「その中に封印されているアマデウスちゃんを……」

「返してもらいます!」


 アニオンとフルート、そしてディルはそういい、戦闘態勢の構えを取る。

 同様にリュウも戦闘時に行っている構えを取っている。

 青年はそのままのままで動かない。

 しかし、長い間沈黙していた口を開く。


「ふん、失笑だな。こんな小娘どもに私が止められてしまうとはな……」


 野太く、威厳がありそうな―――――そんな声であった。

 しかし俺にはどこかで聞き覚えのあるような声に感じた。

 しかも最近まで、あっていた人物だったような気がする。

 だがどうしてか、思い出すことができなかった。

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