セカンドステージ32:海を操るものの真の実力
海魔法とは空間魔法と同義である、と言うのは正直言って大きな間違いである。
実際には海魔法自身にそれほどの力はない。
だが、現実にそうなっているのは、ポセイドン自身が頭がいいと自分で思って隠しているようだったが、実際には俺たちにとってはアホ丸出しである。
だって、ポセイドンの後ろには、闇の大魔導士ホルブの姿があったからである。
「あれってどう見ても、ホルブだよね?」
リュウは驚きの表情でみる。
そんな中でも、ホルブがいることにばれていない定義で、ポセイドンは話を進めようとする(やっぱり馬鹿なのか?)
「俺様の力を見たか! 俺様こそ最強だぜ!」
「いやいや、お前の力じゃないんだよ。後ろの男の能力だろ?」
「あ? ばれた?」
こいつと小学生で算数とかのテストやらせたら、こいつ負ける気がする……
「御明察の通り! 俺自身の海魔法なんて言うのはせいぜい、水を操り使役して隷属することができる魔法だからな。 攻撃することもできるが、場所が海限定と限られている。そして何より、これは俺様の持つ能力の本の一部でしかない。本当は油断させたところで、やる予定だったが、頭が切れそうなものばかり残ってしまったからな。仕方ないな」
懇切丁寧に自分の能力を語りはじめたポセイドンは、いわゆるRPG系やアニメなんかでよくある”敵キャラが自分の能力を語りだす”ってやつなのだろうか?
雑魚キャラ度が増した気がする。
「俺の能力は盗賊。相手の魔法や能力、容姿なんかも奪うことができる能力。ただし奪われた対象者は能力を失わないからな。そこだけがもったいない能力だな」
自信満々に語ってることは、たぶん本当の事なんだろうけど、なんかやっぱり頭悪そう。
あんまり他人の悪口とか言っちゃあいけないんだろうけど、ここははっきり言っておいてあげよう。
「お前、頭悪いだろ」
ぴきっと眉間にしわを寄せたポセイドンは、頭の悪そうな会話を続ける。
「はあ? 頭悪いって言ったやつが頭悪いんですよ~……! ヌヒュヒュヒュヒュ、君の能力はすでに盗賊済みだぜ」
「いやいや、取られて困るものなんてないけど……!!」
と俺が言い終わる前に、ポセイドンの顔は俺の顔になっていた。
え? 顔真似された?
「こうして自分自身の顔を真似されるのは、なんだかムカつく」
「顔だけじゃねえぜ。ほら!」
そういって、光魔法:光天神を発動したポセイドンは、自身に見とれているようで、近くにあったガラスで容姿を確認している。
それを見ていたリュウとジンライも正直言えば、ポセイドンの所業(俺の顔を真似した事)について、キレかけている。
「翔琉の顔真似するとかは?」
「ママの顔真似してるとか終わってんな」
2人がピリピリしている。
と言うか、大気が震えている。
「ジンライちゃん。 あたしたちはあそこにいる黒いおじさんの相手しましょ。あたしなら、あのおじさんの洗脳を解くことができるから。そして、早くあのおじさんの洗脳解いて、あのタコやりましょ!」
「でも、まだ魔法使えない……」
「大丈夫よ、今から実戦形式でちゃんと教えてあげるから……危なくなっても守ってあげれるから、安心してね」
「じゃあ、お願いします!」
「おりこうさんね。流石は! じゃあ、翔琉! そいつ適当に半殺しにしといて! 後であたしがとどめさすから……」
そういうと、リュウはジンライをわきに抱えたまま、ホルブを奥の方へとつく飛ばして、そのまま消えていった。
「ヌヒュヒュヒュヒュ! あの女は本当に上玉だな。俺様に対してあんなこと言える女なんてそう相違ないからな」
どM野郎でしたこいつ。
さて、こちらも戦闘を始めますか。
「んじゃ、ジンライはリュウが守ってくれるらしいから、戦闘始めるけど、1つだけ聞かせてくれないか?」
「なんだ?」
「何故ホルブをここに連れてきてたんだ?」
「ああ、それ? 単純な話、あいつはリュウの事を一番よく知る大魔導士だからな。だから、婚約者の色々を聞くにはちょうどいいと思って、闇の大魔導士の神殿をつぶして、ここに引っ張ってきた」
「え? ちょっと待って! 神殿つぶしたってどういうことだ?」
「ん? ヌヒュヒュヒュヒュ……何って、沈めただけだよ。深海にな」
え? てことは闇の大魔導士の神殿はもう地上にはないって事か?
いやそれよりも
「お前、そんなことしてよかったのか? ロギウスの城を守るための結界を作る場所って聞いてたけど……」
「あっ!」
しまった! みたいな顔をしているポセイドンを見て俺は思った。
やっぱりこいつ馬鹿だ……
くそ、こんな馬鹿のせいで、闇の魂記憶が!
「まあ、今は目の前の敵を倒すことに集中する必要があるな」
「お前の命をロギウスに差し出せば問題ないだろう。ここで貴様を殺して、あの女は俺の花嫁となって永遠に海の底で暮らすんだ!」
俺も光天神を発動させ、同属性の神魔法VS神魔法の戦いが幕を開けるのであった―――
激しい光と光の衝突―――
目で追うことは困難なスピードで互いに戦う。
「すげえな神魔法! 流石としか言いようがねえよ。これが光になるって事か! 俺様は海で一番速く移動することができたが、地上では劣ってしまう。それを補うには十分すぎるほどの威力と機動力だな!」
何というか、元気ハツラツな馬鹿に対して、俺はと言うと、テンションがすごく低い。
だって、攻撃するたびにヌルヌルしたものが当たるし、何より、自分の顔をした奴と戦うのがね……
やる気でなくても戦わなくちゃ、殺されちゃうからね。
唯一の救いが、光属性の神魔法であるってことって事かな、光属性を倒すには光属性で戦うしかないからな。
「んじゃ、お前の魔法使わせてもらうぜ! 光の魔法:神之憤怒!」
「それはマジでやばい奴! 光の魔法:絶対神域!」
究極の光属性の攻撃と究極の光属性の防御、矛盾を解くのはどちらなのだろうか……
激しい衝撃波の中で、俺はこんなことを考えていた。
周りが朽ちて、壊れて、粉々になった中でも立っていた。
結界も無事であった。
ただし、周りの建物は無事じゃなく、水の大魔導士の神殿はすでに半壊している。
その中で、神殿の上空からポセイドンは俺を見下ろしている。
「ヌヒュヒュヒュヒュ! 流石は光属性最強魔法! 威力は絶大だな! だが、お前が無傷なのが気に食わないから、もう一度だ! 威力を上げて、光の魔法:神之憤怒!」
先ほどより明らかに力が強くなっているようだった。
光が周囲をねじ曲げるほどの、強力な一撃だ。
「くそ! あんなの受けても受けなくても、自分はおろか周りまで被害にあう! どうすればいいんだ? どうすれば……」
”どうすればいいだなんて、変に考え込むなよ”
「え? この声は、アマデウス? そうだ! アマデウス! あの魔法を打ち破って周りに被害を与えないためにはどうすればいいんだ?」
”残念ながら、現状では相手の攻撃を跳ね返す光の魔法:輝天鏡を使うしかない、または奴を……”
「煉に頼らなくてもいいなら、俺にとってそれが1番だ! じゃあ、輝天鏡を使えば被害はないんだな?」
”いいや。もし完全に被害を無くしたいんなら、輝天鏡に加えて、跳ね返すと同時に、ポセイドンの周りに絶対神域で覆えば……”
「爆発は中で拡散されるって事だな! 分かった! ありがとう! やってみるよ!」
”じゃあ、僕も頑張るよ! 行くよ! 翔琉!”
「OK! アマデウス! 最大出力! 光の魔法:輝天鏡!」
巨大な鏡が俺の前に出現する。
そして、巨大な光の塊となったポセイドンの攻撃を受けるのであった。




