セカンドステージ26:消滅する森
だいぶ更新できなくてごめんなさい。
すさまじい攻防が繰り広げられている。
そのせいで、先ほど来た森がだいぶ無くなってしまった。
不樹地帯とまでは言わないものの、森の中央にある巨大な樹を除いて、見晴らしのいい場所になってしまった。
そんな状況下でも、この森を消滅させた本人たち、アマデウスとシャドウは今もなお、激しい戦闘を繰り広げている。
しかし、アマデウスとシャドウの間には何かあったのだろうか?
いやいや、そんな事より
「この状況どうするんだ?」
俺は、辺りを見渡す。
さっきまで、泉があった所が、泥沼化している。
先ほどの衝撃で土埃がかなり混入してしまったのであろう。
そして、そんな中でも平然とそびえ立っている樹から、ムラサメが出てきた。
ムラサメは、辺りを見回すなり、奇声を上げてこちらに向かってきた。
「おい!!! この状況どう言うことなんだよ!」
と慌てた様子と言うか、狼狽した様子で言う。
取りあえず、ムラサメに落ち着くように促し
「どこから説明したものか……」
とこれまでの事をかいつまんで説明した。
まずシャドウが現れたこと、奴と会話した内容、そしてアマデウスの暴走と森の消滅。
現在もその激しい攻防は続いている―――
とまあ、そんな感じに説明した。
「なるほど……で、こんな状況だと。どうすんだよ、この状況」
とムラサメは改めて、俺に質問をしてきた。
俺は表情を曇らせながら
「どうしよっか?」
と答えた。
いや、まじでどうしよう。
本気になったアマデウスと、そのアマデウスに対抗しているシャドウ。
あの2人を止めるには、相応の覚悟が必要になる。
何より、アマデウスが本気の状態である以上、俺はおそらく神魔法が使えない状態である。
一応、アマデウスとリンクすることによって神魔法が使えるのだが、その本人が現在表に出てきており、尚且つ敵が強敵であるので、こちらに力を回す余裕なんてないだろう。
さて、どうしたものだろうか。
この状況を打破する策は……
「1つだけあるよ」
と突然声を出したのは、この場では最も実戦経験がない子供である、ジンライであった。
その姿を見たムラサメは、鼻で笑い
「お前みたいな子供に何が思いつくんだ?」
と悪態をついた。
俺は、その態度にイラッとしながらも、ジンライに
「取りあえず、説明してくれるかな? ジンライ」
と促す。
ジンライは、ムラサメの方を向いて、あっかんべーをして、俺の方を向いて
「うん! じゃあ、説明するね!」
と言って、大人顔負けの作戦を話すのであった。
しゃべり方や、手振りなどは子供であるが、内容は恐ろしいほど仮説や理論で埋め尽くされていたものであった。その文法や知識はどこで身につけたのかと言うレベルの物であった。
「お前、本当に子供なのか?」
そういって驚くムラサメ。
先ほどまで、ジンライを小ばかにしていたのに、作戦を聞いてからはあっさりと手のひらを返したように態度が変わった。
いや、本当に大したものだと、俺は感心する。
何故、あんなことが思いついたのだろう?
正確に言えば、思いつけたのだろうか?
「まあ、とにかく今は、試してみるしかないな」
先ほどの毒を治されたばかりで、まだ若干ふらついているボルは上空で激しい戦闘を行っている、2人の方を向いて言う。
俺もボルと同様に上空を見つめ
「じゃあ……やりますか」
そういって、ジンライの立てた作戦―――コスモバース作戦を開始するのであった。
皆さんは、宇宙ができた時に反物質と言う物ができたのをご存じだろうか?
まあ、簡単に言ってしまえば、物質の反対のものである―――と言う風に説明しておこう。この反物質は、高エネルギーの粒子を加速させて、衝突させることによって少し得られるものである。そして、何よりこの反物質には恐ろしい性質がある。
その性質とは、物質と触れ合うと高エネルギーが発生すると言うもの。
もっと単純に言うならば、爆発が起きると言うことである。
今回の、コスモバース作戦はその反物質を用いて、シャドウを遠くへ吹き飛ばしてしまおうと言うものである。
まあ、うまくいくかはどうかは、それこそ神のみぞ知る確率であるが……何もしないでいるよりはましだ。
「じゃあ、ボル。行くよ!」
「おう!」
そういうと、俺は持てる限りの力を用いて、光の玉を作り、それを周囲に回転させる。
そして、ボルは空間魔法を用いて、その光の玉をさらに加速させていく。
光の玉は、光の輪となっていき、最終的には黙視できないほどの速さへと変わり、次の瞬間に上空の2人めがけて向かっていった。
その瞬間―――瞬間とは言い難いくらいの時間で、その光は激しく光って強力な爆発を起こして消えていった。
その結果、上空にはアマデウスだけ残りシャドウの姿は消えていた。
「成功したのか?」
とムラサメが上空を見ながら言った瞬間、ボルが
「危ない!」
と声を荒らげて、ムラサメの影を見た。
次の瞬間、影から槍が飛び出してきて、ムラサメの肩を貫いた。
そして、影の中からは、シャドウが出てきた。
「呼ばれてなくても、現れる! それが我、シャドウなのだ!」
と謎な決めポーズをとっている。
「そんな……だって、さっきまでアマデウスと戦ってたのに……」
と俺が言うと、シャドウはゲラゲラ笑いながら
「うん! その通り! でもね、爆発が起きた瞬間にできた影を使って移動しちゃった!」
てへぺろ! と舌を出しているシャドウ。
そこに駆けつけた、アマデウスは俺たちに向かって
「おい! 余計な事をするな!」
と怒鳴りつけたうえで、再びシャドウに向かっていこうとした。
しかし、そこでプツンと音を立てて鳴り響いたものがあった。
何か切れた音―――ぶっちゃけるならば、俺の堪忍袋の緒が切れる音である。そして
「ちょっと、待ちなよ……全員動くなよ……」
と声を低くして言った俺の声は、辺りに響いたのであった。
その様子を見ていたボルとアマデウスは慌てはじめた。
「待て! 翔琉! 落ち着こう! な!」
「ごめんごめん、翔琉! 落ち着こう! 謝るから!」
この慌てっぷりは、今まで見られなかったものである。
そうすると、シャドウが
「何ビビっちゃってんの? そいつが怒ったって何も変わらないじゃん! むしろ、使えねークズなんだから、雑魚以下の雑魚野郎にこの楽しい戦いを邪魔されたくないんだけど」
そういった瞬間に、シャドウの足は消滅した。
「え? え!!!!! 何これ! 何が起こったの?」
そういうシャドウに対して、ボルとアマデウスは声を揃えて言う。
「「終わったな」」