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MW元   作者: ただっち
ファントムソウル編
44/69

セカンドステージ21:ライの記憶

「行くぞ!!!!!」


 そういって俺はライに突っ込んでいく。


「光の魔法:聖邪光纏!」


 普段は槍上の姿をしているこの魔法なのだが、現在は光の剣となって俺の手に出現する。

 修行によって、魔法の形状を変化させる技法を身につけていたので、剣の形に変換する事ができたのだが、今何故この形状にしたのかと言うと、先ほどの戦闘からふまえて、遠距離攻撃は現在のライには通用しないと言う判断をしたためである。

 あのすさまじい速度で動かれてしまっては、ため動作のいる槍の形状は、この戦闘において不向きである。

 そして何より、相手が近接戦闘で仕掛けてくる以上は、こちらも近接戦闘で対応するしかないのだ。

 普段は、遠距離で攻撃するのが得意なので、正直近接戦闘は苦手である。

 だが、この魔法は本当に当たりさえすれば、ライを正気に戻せる魔法である。 この剣の攻撃が少しでも、当たりさえすれば、ライの中にある洗脳の邪悪な意思を取り除くことができるので、その効果を考えれば五分五分と言ったところであろうか―――


「ソノヨウナ攻撃ナド我ニハ効カヌ」


 そういってライは両手に雷の剣を出現させて、俺の方へと猛スピードで向かってきて、俺の攻撃を左の剣で防いで、右の剣を振り下ろす。

 2刀流なんて、ずるい……

 俺はそれを、とっさに輝天鏡で弾く。

 しかし、その衝撃に耐えきれなかった輝天鏡は、本来の役割である”相手の攻撃の反射”が完了する前に砕けてしまった。

 なんて威力なんだ!

 その砕けた一瞬を利用して、ライの攻撃をかわして、距離を取る。


「この魔法じゃ、耐えきれないのか……じゃあ、光の魔法:光盾!」


 そういうと俺の周りに小さな盾ができる。

 これで、タイミングを計ってカウンターを決めれれば……


「危ない! 翔琉! 後ろだ!」


 ボルの声に俺は反応して、急いで後ろに盾を回す。

 そして、盾に剣が当たりカウンターが決められると思いきや、盾が粉々に砕ける。

 これでも防げないのか!

 急いで後ろを振り向くと、ライが無表情に左手の剣を振り下ろそうとしていた。

 俺は体制を直し


「だから……後ろから襲ってくんなよ!」


 そういって、持っている聖邪光纏で、ライの持つ左の剣をはじく。

 そして、ライの体制が崩れたところを狙って聖邪光纏を突き刺しにかかる。


「これで、決める!」


 しかし、聖邪光纏がライを突き刺さりかけたところで、ライは距離を取る。

 そして、はじかれて無くなっていた左手の剣を再生させる。

 くそ……惜しかったのに……


「コレデ決メルノデハ無カッタノカ?」


 無表情のくせに、軽口を吐きやがって……

 だが、そんな中俺はにやりとライに笑う。


「うん。そうだよ。もう終わりだよ……」


 俺はライのいる場所の足元を指さす。

 しかし、ライが下を見る前に、それはすでに終わっていた。

 地面から飛び出した光の剣が、ライを突き刺していたのだ。

 この剣は聖邪光纏である。

 そして、その場に剣が突き刺さったまま、無表情で声も出さずに倒れてしまった。

 その様子に周りにいたみんなは唖然とした顔で俺を見ている。

 そんなみんなに俺はにこりとして


「作戦成功! ね? 終わったでしょ?」


 俺は周りのみんなにピースする。


「さてと……じゃあ、ライを起こして、魂記憶を……!」


 その瞬間、口から吐血した……

 先ほど復活する前に、蓄積されていたダメージが反動的に出てしまったようだ。

 口の中が鉄のような味で満たされていき、周りのみんなが慌てて駆けつける前に俺は眠るように、その場に倒れこんでしまった……



 次に目が覚めるときには、ライは正常に戻っていたようで、こちらを心配そうに見つめているジンライを抱えながら、涙目でこちらを覗いている。

 他のみんなも心配そうに、こちらを見ている。

 俺の目が開くとディルが俺の顔を覗き込んで


「気が付いたみたい!」


 と言うと、みんなは笑顔になって喜んでいる。

 アニオンとフルートは互いによかったと、言い合っているし、ボルとグランは男泣き、ディルも涙を流している。

 すると、唯一落ち着いていたエンが


「翔琉が寝てる間の事は記憶してたから、これを見てね」


 と言って、持っていた眼鏡を俺にかけた。

 眼鏡をかけた直後、頭の中に映像が浮かんできた。

 まるで、映画を見ているような気分だ。

 そんな中、エンの声が聞こえる。


「その眼鏡は、記憶眼鏡メモリーコンタクト。使用者の記憶を保存できる特別な眼鏡。さっきの状況を記憶させといたから取りあえず見てみて……」


 ここで声は途切れて、記憶の世界へと俺は誘われた……



”俺が倒れている。

 周りは結構、俺の血で汚れているようだ。

 どうやら、ライとの戦闘直後の光景らしい。

 その証拠に、剣が突き刺さったライが倒れている。


「ママ!」


 と言ってジンライが俺のそばに寄っている。

 そしてディルとボル、アニオンもそばに寄ろうと、走っている。

 そんな中、グランとフルート、そしてエンは、身体を引きずりながら、ライの方へと近寄る。


「翔琉が剣を刺したおかげで、洗脳は解けたはずよね……」


 そういってフルートは、ライに刺さっている剣に触れる。

 すると、ライの体内から黒い何かが現れた。

 その黒い何かは逃げようとした。

 そして上空に消えかけたとき、光の剣がその黒い何かを追って行き、剣は黒い何かを貫いて、それは消えていった……


「痛たたたた……」


 そういって倒れていたライは起き上がる。

 辺りを見回し


「ここは……何処だ? あれ? エンにグラン、それにフルートも……」


 ライは見回し、血だらけで倒れている俺の姿を見て、驚きの表情を浮かべ


「なあ……エン……あそこに倒れてるのって……」


 エンはその問いに答えるべく、重い言葉をライに言う。


「あれは……翔琉だよ。そして、ああなったのは、君のせいだ……」


 その言葉に、ライは戸惑ったような顔をして


「なんだよそれ! どういうことだよ!」


 とエンにつかみかかった。しかし、すぐにグランがそれを引きはがし


「主は操られていた! 仕方がなかった!」


 そういって場をおさめようと仲裁に入った。

 グランの言葉を聞き、ようやく落ち着いたライの元へ、ジンライは駆け寄る。


「パパ……」


 そういうジンライに、ライは


「ジンライ……なのか?」


 そういってジンライを抱きしめるライ。

 フルートはその光景を見て不思議そうに見ている。


「あれ? ライ……あなた、洗脳されている中で、ジンライの記憶があったの?」


 確かにその通りだ。

 洗脳中にその記憶があるということは、意識があったことになる。


「いいや。さっきまでの事は何も覚えていない。と言うか、だいぶ記憶が欠落している。だが、ジンライの事だけは覚えている」


 そういうライ。

 フルートは勿論、納得していない様子である。


「だから、なんでこの子の事を覚えているのさ?」


 フルートは不機嫌そうな顔をして、ライに詰め寄る。

 そして、ライは戸惑ったようにしながらも、その質問に答える。


「今から、3日前の記憶ならある。何故だか、突然目が覚めたような気分になって、そんで……そうだ! 子供部屋にいた! そこで俺は、ジンライを生まれさせた……」

「え? なんで?」


 フルートの問いに、ライは頭を抱えながら話を続ける。


「頭の中に何かが響いて……その声に言われるがまま……俺はあの儀式をして……」

「でも、その儀式には翔琉の血がいるんでしょ? いったい誰が持ってたのよ……!」


 そういうと、ライは懐から小さな布きれを取り出した。

 焦げ目がついている布には、血の跡がある。


「それは?」


 とエンが聞くと、ライは答える。


「これは、かつてオールドアで戦ったあの時の戦闘の時に、翔琉が敵の攻撃を受けてかすり傷を受けた時にたまたま破けた布だ」


 なんでそんなものを持ってんだ?

 記憶を見ているだけなのに、俺には変な汗が出てきた。


「なんで、そんなものをあんたが持ってんのよ?」


 と遠くにいたはずのアニオンがいつの間にか、ライの近くにいて聞いている。

 ナイス! さあて、ライはなんて言うのか……


「いや……ほら……あの……その……記念に……」


 と頬を赤めながらライは言う。

 あいつの顔を後で、真っ赤な血の色に染め上げてやろうかな?


「なるほど……だから、あの子ができたというわけか……」


 冷静な分析をするエン。

 もうちょっとツッコミどころあるだろうよ!

 なんか反応しろよ!


「じゃあ、その頭に響いたって声に聞き覚えは?? 何か知らないか?」

「……いや、覚えているのは……声にいわれるがまま、翔琉の血と俺の血でジンライを生まれさせて、そして色々とジンライに言って……その後から意識がない……」


 ライが言い終わるのと同時に、ディルが


「みんな! 翔琉が!」


 と言っているのが見えて、ここで記憶は終っていた。 ”


 眼鏡をエンに返す。

 そして、俺は立ちあがり、笑顔でライの顔を殴った。

 周りは驚いた顔をしているが、一番驚いているのはライ自身であろう。


「何してんの? ライ。さっきの何?」


 俺のこの質問で、何故俺がライを殴ったかみんな見当がついたようで、一斉に顔をそらした。


「いや……その……」


 ライはこちらに向かって何かを訴えるような目をしているが、知ったことじゃない。

 そんな中、ジンライはライの前に立って俺に向かって


「ママ! パパをいじめちゃダメ!」


 という。

 ジンライに近づいて、俺は耳元で


「パパがね、悪いことしてたみたいだから、お仕置きしなきゃいけないの」


 と言うと、ジンライはくるっと回って、ライの方を向き


「パパ! ママをいじめちゃダメ!」


 そういってジンライはライに向かって体当たりして、顔をぽかぽか殴り始めた。

 子供相手になら、反撃出来ないでしょ。

 ここで、ディルが手を叩きながら


「さてと、家族の団欒はその辺にしてもらって……」


 といい、コホンと軽く咳払いをしてから、ディルは続けて話をする。


「早く、魂記憶手に入れて、ここから出ましょ。長居するのは危険でしょ」


 ライ!と、ディルが言うと、暴れるジンライを俺に預けて、ライは中央に向かって手を向ける。

 すると、中央の部分がせり上がって来て、その中から巻物が出現する。


「フルート!」


 アニオンは巻物の出現と同時に、巻物を取ってフルートに向かって投げる。

 歴史的にも価値のあるものをそんな雑に扱っていいものなのか?


「はい!」


 フルートは見事キャッチした。

 一瞬嬉しそうな顔をした風に見えたが、すぐに真剣な面持ちになって


「じゃあ、開くわね!」


 そういって、フルートが巻物を開くと、いつものように文章を読む間もなく、突然あの女が出てきた……

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