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MW元   作者: ただっち
ファントムソウル編
43/69

セカンドステージ20:眠りの中で……

 「翔琉!!!!!」

 

 その声の主は、ディルだろうか。

 ディルが俺の近くに来ているのは分かった。

 もう、目元もぼやけていて、周りがどういう風になっているのか分からないけど、空中で何か浮いているのが分かった。

 おそらく、あれはディルだろう。


「負極魔法:神経無しんけいむ! 翔琉の痛覚を0に! だけど……傷までは0にはできない……くそ!」


 アニオンの声が場にこだまする。

 痛みがないのは、アニオンのおかげなのか……

 流石にアニオンの魔法でも、傷を0にするということは不可能なんだな……

 リュウでもいてくれたら、回復させてくれたのかもな……

 とめどなく、血が流れ出ている俺のお腹……

 お腹と言っても、中身の一部がぐちゃぐちゃだし、穴も開いちゃってるけどな……

 何かに抱かれているのだろうか……何だか、頭のあたりに、気持ちのいい感触がする。


「ママ! しっかりして!」


 そう言っているのは、ジンライなのだろうか?

 いや、俺の事をママなんて呼ぶのは、この場ではジンライ以外はいないだろう。


「翔琉! 俺だ! 分かるか! しっかりしろ! 翔琉!」


 その声は……ボル?

 しかもかなり近い場所だ。

 ああそうか、ボルが俺を抱えているのかな……

 この感触はあの時、星空を見た時に感じた感触か……

 遠くでは爆発音らしきものも聞こえるな……あと、雷の音も……


「ライィィィィィィ! あんたよくも翔琉を!」

「師匠! 今は奴を翔琉から引き離すことが先決です! 落ち着いてください!」

「うかつ……我輩が寝ている間に、このような事が……」


 あの声は、アニオンとエンそして、グランだな……

 そっか、アニオンが復活したって事は、あの魔法を解いたって事か。

 だから、雷の音が聞こえたのか……

 よかったよかった……


「ぐはっ……」


 俺は口から大量の血を吐いた。

 だらだらと、よだれのように垂れ流される大量の血。

 そんな中でも、俺の意識はあった。


「……み……んな……」


 その声に反応するかのように、ボルは俺の手を握りながら


「翔琉! 翔琉!」


 と言う。

 そして、俺の顔にはあったかい水が落ちてくる。

 1つ……また1つと、次第に大きくなっている気がする。

 俺は、ボルの手をそっと握り返そうとするが、手に力が入らない。


「俺……死んじゃう……のかな?」


 振り絞って声を出しているのだが、そのたびにお腹から血が出てくる。

 どばどばと、あふれ出てる。

 光治で回復させたいけど……そんな気力……今は無いかな……


「なあ……俺……俺……」


 そういうと、再びあったかい水が俺の顔に大量に流れてきて


「もうしゃべるな! 傷が……傷が……」


 ボルの声が俺の頭の中にこだまする。

 ああ……俺……死ぬのかな……


「ママ! 嫌だよ! ダメだよ! パパを元に戻すんじゃなかったの?」


 そういって、腕を引っ張っているのは……ジンライかな……

 涙が出てるようだ……俺の手に、その雫が落ちてくる。


「ジン……ライ……泣かないで……くれ……」


 そういって俺はジンライの頬を撫でる。

 その頬は震えていて、ジンライの涙が手をつたって、下に流れていくのが分かった。

 そして、俺の目からも涙が流れているのが分かった。

 その涙は、だんだん冷たくなっていく、俺の肌には熱湯のように感じるほど熱かった……

 俺は力を振り絞って言う。


「後は……頼んだよ……ボル……ディル……」


 そういうと、全身の力が抜けて、意識が消えていった。

 その中で聞こえるのは、みんなが俺を呼ぶ声だった……



 ここはどこだろうか?

 白くて広い空間……

 俺は死んだのだろうか?

 こんな体験は、前にもあったよな……

 理科室が爆発した時だったよな……

 あの時も、今みたいな感じだったよな。

 そして、ディルの声が聞こえたんだっけ?

 あの時は、違う世界に飛ばすための爆発だったみたいだけど……流石に今回はダメかもな……


 ”おいおい、こんなところで死んじゃあダメだよ”


 その声はアマデウスか……

 お前何してたんだよ


 ”寝てた(笑)”


 ほう(怒)

 

 ”ごめんごめん”


 ごめんで済んだら、俺が死ぬわ。


 ”そうだね……”


 ところで、俺が気を失っている今、何が起こっているんだ?


 ”うーん……ライに苦戦してるねみんな。雷の音が聞こえるようになったのは、戦況を変えるに足りるかと思ったんだけど、それでも神魔法を駆使しているライには苦戦してるね”


 なあ、アマデウス。だったら、いつもみたいにお前が神魔法を吸収してしまえばいいんじゃないのか?


 ”それは、実は最初にやろうとした。でもできなかった”


 それって、なんで?


 ”あいつら、僕の魔法になんか細工をしたみたいだ。だから、吸収するためには、一度魔法を解除させる必要がある。解析には時間がかかるからだね”


 そうか……なら、俺が死んでも……あいつらは助かるんだな……


 ”この状況下でも、他人の心配をすることができるなんて……やっぱり、君はすごいよ翔琉……”


 俺はすごくない……いつもがむしゃらに生きているだけだよ……後悔しないためにもね……


 ”じゃあ、今君は後悔なんて何もしていないの?”


 ……後悔はしていないけど、やり残したことはあるよ。


 ”じゃあ、そのやり残したことを済ませずに、君は死のうとしているの? それは即ち、後悔していると同義じゃないのかな?”


 全く……その通りだね。

 まだ、死にたくない。

 死ぬわけにはいかない……


 ”仕方ない、我が主。今回は特別サービスってやつだ。感謝のしるしに、後で頭なでなでしてくれよ”


 ああ……してやるよ……生きてたらな……



「翔琉! 目を開けてくれ! 翔琉!」


 ボルは声がかれてしまうんじゃないかと言うほどの、大声で叫び、涙を流している。

 その傍らで、ジンライは俺の服の袖を掴み、大声で泣きわめいている。

 そんな中でも、戦いは続いている。

 アニオンとフルート、そしてディルの目には涙、グランとエンの顔には悲しみが……


「くそ! よくも!」

「グラン! 封印の準備……うちが突っ込む」

「おぬしも落ち着け! そんな事では、カウンターを食らってしまう!」


 そうして議論をしているうちに、ライは俺の肉体めがけて進行を始めようとする。

 その行く手を阻むかのように、グランの魔法による岩石がライに向かって襲い掛かる。


「翔琉の元へは行かせぬぞ!」


 しかしながら、ライはその攻撃をかわす。


「天野翔琉ノ肉体ヲ捕縛スル」


 そういって攻撃を乗り切ったライは、俺の肉体へと近づいていく。

 次の瞬間、ボルとジンライは吹き飛ばされ、俺の肉体はその場に横たわる。


「しまった!」

「ママ!」


 ライが俺の肉体に触れようとしたその瞬間、俺の身体から強い光が放たれた。

 その衝撃で、ライは吹き飛ばされる。

 そして、俺は起き上がった。


「もう……誰かがやられるのは……見たくない……」


 俺は血を吐きながらも、立ちあがった。

 腹の穴は完全にはふさがっていないが、銃弾程度の穴にまでなっていた。

 おそらく、アマデウスが治してくれたのだろう。

 俺が起き上がったのを見てみんなは絶句する。

 思わず息を飲んだ後に、全員が涙して、俺の名を呼ぶ……



「光の魔法:光治……」


 そういって俺は身体の全ての怪我を治す。

 一番に修復されたのはやはり、お腹の傷。

 内臓も治されたようで、いつものようにずしりとおさまっている。


「翔琉……よかった……」


 そういって、ボルは俺の方を見つめ、涙を拭く。


「安心してみんな……もう、油断しない……誰も、傷つけさせはしない」


 そういって俺はライをにらみつける。


「全く……心配させて……ねえ? アニオン」

「そうだねフルート。後で、私の料理食べてもらおうかしら」

「我輩らは食べなくていいよな? エン」

「そ……そうですね、グラン!(助かった……)」


 フルート、アニオン、グラン、エンの雑談が聞こえる……

 そして、ディルの声が聞こえる。


「ほら、翔琉! 何してんのさ! 早くけりをつけてきなさいな!」


 その言葉を合図に、俺とライの戦いが再び始まるのであった……

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