セカンドステージ12:地の魂記憶と・・
デイのキャラは、私の友達を参考にしました
「いやいや、おぬしら。助かった礼を言う」
グランはその場で頭を深々と下げる。そして、アニオンは慌ててグランに言う。
「グラン、今は時間がないわ。魂記憶はどこ?」
そういうとグランは頭を上げ、少し下がっていろ、と言う。そして、中央に自身の魔法の力を送る。そうすると書物が浮いている台が浮上してきた。
「これが、地の魂記憶か・・」
早速俺たちは魂記憶をフルートに翻訳してもらう。
「汝ら真実を求めるのならばすべての書物を揃え・・と、またまた途中で終わっているわ。そして、雷に続くだって」
またかよ、あの女本当におちょくってるのか?
「おちょくってるよーん」
と、書物からデイが飛び出してきた。
(でたよ、悪ふざけの象徴・・)
「嫌だな、翔琉君。悪ふざけの象徴とか、わらわを愚弄する出ないぞ!」
「ご先祖様・・」
「ここには、ディルがおると思うのじゃがディルよ、元気じゃったか? まあ、元気とは言っても今は霊体じゃからのう」
(本当になんでこんなにずばずば当ててくんだよ。時空間魔法ってこんなに強力なものなのか?)
「さてと、ふざけるのはこの辺にしてっと」
(やっぱりふざけてたのかよ。)
(ああ、腹立つわ~)
みんなの声が聞こえてくる。
「まずは、この神殿の攻略おめでとうと、言えばいいかな?まあ、こうして魂記憶を見ているわけだから成功してなきゃおかしいのじゃがな」
(早くいいから本題を話せよ)
「さて、この素晴らしい状況に水を差すようで悪いのじゃが、今主らは重大な危機に陥っている。悪いことは言わないから、この神殿から早く脱出しなさい。じゃないと、奴が来てしまう」
「やつ?」
とフルートが聞く。すると、珍しく深刻な顔をするデイ
「ロギウスの腹心である、4大魔王の1人、地獄大神王:メイオウ。かつてロギウスの周りにいた幹部の1人で、おそらく今のあなた達じゃ勝てないわ」
「メイオウだと!」
と一番驚いたのはアニオンであった。
「師匠・・いったい何者なのですか?」
「メイオウはかつて、大地を割って二つに分けたほどの実力を持つ魔導士よ」
「大地を・・割るだって?」
そう俺が言うと、デイがニコニコしながら再び語りはじめた。
「今のあなた達は、逃げることに集中して。負極魔法を用いて、取りあえず奴が追ってこれない空中聖域へ移動しなさい。そこなら、邪悪なものが追ってはこれないし、ロギウスも手は出せないわ。じゃあね」
といってデイが消えた直後に地震が起きた。
神殿が崩れてしまう。
「今は猶予がないわね。みんな!私に捕まって!」
といい俺たちはアニオンに触れる、その瞬間神殿の入口からまがまがしい黒い炎を放つ男が立っていた。
「貴様らが、我が主の敵か・・」
「誰だ? 貴様!」
その俺の声に、その男は俺に向かって無表情に、心のないかのように・・彼はしゃべる。
「我はメイオウ・・我が主、ロギウスの名により・・天野翔琉を捕獲する・・」
そういうと、俺たちの周りを黒い炎が囲む。
「逃さぬよ・・おぬしらの旅は・・ここで終いだ・・」
(やばい・・こいつは! 本気でやばい!)
そう思ったアニオンは急いで魔法を使う。
しかし、魔法が発動することはなかった。
「え? 何よこれ!」
驚くアニオンを見て、メイオウが彼女に向かって静かに言う。
「貴様ら程度の力では、我の魔法から逃れることなど、できぬ・・」
(どうすればいい? こんな時! どうすれば・・)
”翔琉・・”
アマデウスが俺の心の中で直接語る。
”今ある僕の力を、アニオンに貸してあげて・・そうすれば、アニオンはこの状況下でも魔法が使えるようになるよ”
(分かった・・やってみる!)
俺はアニオンの近くに行き、神魔法を彼女に貸す。
その瞬間、彼女の身体が光りはじめた。
「これならいけるわ!」
そういって、アニオンは魔法を発動する。
「させるか!」
そういって、メイオウが飛び込んできたときにはすでに俺たちはアニオンの魔法によって、空中聖域へとたどり着いていたのであった。
「はあ・・はあ・・なんなのあいつ。ほんとにやばい奴よ・・はあ・・はあ」
緊張の糸が切れたアニオンのセリフには、恐怖心が見られる。こんなに怖がっているアニオンを見るのをエンですら驚くほどに、今の彼女は狼狽しきっていた。
「取りあえず、次は魂記憶によるならば、雷の大魔導士の神殿に向かわなければならないけど・・正直あんなのがいる限りは、今は向かうべきではないわね・・」
「じゃあ、どうするんだ?このままじゃ俺たち・・」
そういってボルまでもがおびえ始めてしまった。
恐怖は感染する・・確かに、現状を見る限りそうであろう。
未知なる敵の出現・・そして、絶対的な力の差・・
(だが、俺は・・あきらめない)
「ディル・・あのさ、前にやった修業ってできる?」
「前にって、3分間のやつ?」
「何それ?」
とフルートがディルに尋ねる。
「あのね、実は翔琉たちと修業をしたの。その時に私の魔法で異空間を作って外と中の時間の流れを極端に下の。中では3日、外では3分。私たちの間では3分間の修業と言っているわ」
「ネーミングまんまじゃん。まあ、それで成果はあったの?」
「翔琉の力が異常に気持ち悪いくらい伸びたわ」
(気持ち悪いって・・とうとう目の前で聞いちゃったよ・・)
「ディル・・でも、今のあなたは肉体のある時に比べて魔法を使えるの?」
「まあ、大して変わらないから大丈夫よ」
「じゃあ、やろうか」
そんな俺に対してディルとフルート、そしてグラン以外は絶望に侵されていた。
(こんなことに意味はない・・)
(所詮やられてしまうだけよ・・)
(うちらにはかなうすべがない・・いくら、神魔法の使える翔琉と言えど・・今回ばかりは・・)
俺には諦めるという選択肢はない。
ディルに空間を催促させて、俺とディルとフルート、そしてグランは空間へと入って行ったのであった。
-それから3時間後-
翔琉たちが空間に入ってから3時間・・俺ことボルは悩んでいた。
翔琉ばかりに何でも背負わせて、自分たちがこんなにも脆い状態でいいのだろうか?
(何故俺は翔琉についてきたんだ?
そもそも、俺は翔琉の友達だろ?
なのに、あの時友達になって、何が大切かを教えてもらったのに・・
結果的に翔琉を裏切っているのではないだろうか?
この状況は翔琉に対する裏切り行為で、俺にはもう翔琉の友達でいる資格なんてないのかもしれない。
ならば、俺ができることは・・今できる事って何だろう?
この場からいなくなる?・・違う
翔琉に謝る?・・違う
何もせずにふさぎ込む?・・違う
祈る?・・何にだ。
こんな考えているのがそもそも間違いなのではないだろうか?
俺ができることは、翔琉を守れるような友になることではないのではないだろうか?
いつも通りに、翔琉と遊ぶために戦うことが必要なのではないだろうか?
そんな未来を守るためには、今目の前の敵を倒すしかないのではないだろうか?
そんな単純な事を見落としていたなんて、俺もまだまだだな・・。
よし、もう迷わない。
俺は翔琉と遊ぶ未来を守り続けるために・・)
そう胸に誓った俺も、翔琉たちを追って、空間に足を運ぶのであった。
いまだに立ち直る事ができずに・・現実と向き合うことを拒否した2人を置いて・・
-ボルが空間に入ってから1時間後-
私、アニオンは卑怯だ。
(翔琉に恋したのに・・
その恋した人に頼るなんて、なんて私らしくないのだろうか?)
(こんなのは私じゃない。)
前の私は別物と言えるほど、なんかこうぎらぎらしてたっていうか、生き生きとしていた。
今の私はどうだろう
馬鹿弟子とともに絶望に打ちひしがれて、ただただ1人の少年に託すのみ・・
馬鹿弟子なんて言って、他人を馬鹿呼ばわりする前に私が馬鹿だ・・
弟子に馬鹿なんて言えるような立場ではないだろう。
(なんて脆いんだろう・・)
そして、翔琉はなんであんなにも強いのだろうか・・
私や大魔導士さえ勝てないと思った相手に対してどうしてあそこまでに、かたくなに、ひたむきに頑張ることができるのだろう?
たぶん私はそんな彼だからこそ、好いたのだろう。
(人を始めて好きになった・・)
この気持ちは私にとっては新鮮で、神聖なものだった。
でも、その神聖さはこの絶望によって黒々と侵されてしまった。
所詮私は何事においても、魔法から見ても、心の奥底では頑張ることを嫌っているのかもしれない。
だからこそ、頑張っている人を好きになったのかもしれない。
自分にも勇気が出ると思ったから・・たぶん、外側から観察をしたら私はそう見えるのだろう。
(気丈にこれまでふるってきたけど、所詮心の弱い人間であるのだ・・私は・・)
「師匠!」
(うるさいな・・馬鹿弟子・・静かにしてくれよ・・)
「師匠!」
(何も考えたくない・・)
「師匠! いい加減にしてください!」
(現実が怖い・・)
「師匠! しっかりしてください!」
(あいつが怖い・・)
「・・分かりました。じゃあ、1人でここにいてください。あなたは、戦わなくていいです・・。」
(・・? 何を言っているのだ?)
「くそ・・! まだ、翔琉たちが修行しているのに・・何故ここにあいつが・・」
その発言を耳にして、私は今までうずくまっていた顔を正面にあげる。
そして、再び恐怖が支配する。
目の前の上空には、先ほど逃げてきたほどの、恐ろしい敵・・メイオウがいたからである。
私の心は音もなく、完全に崩れ落ちてしまった。
「我の主の敵はその中の空間か・・悪いが、天野翔琉と言うもの以外には用はない。消えてもらおう・・」
メイオウはそういうと黒い炎を空中聖域に向けて放つが、空中聖域の強力な結界によって弾き飛ばされてしまう。
「ほう・・なるほど・・その神域の魔法がいまだ健在であったとは・・少し驚きだ。しかしながら、今の我には主がいる・・かつては破れなかったが・・今はこれがある!」
そういうと、メイオウは黒い炎を全身から出す・・そして、あの姿は・・
その光景に、私は再び絶望した。
だって、奴は・・メイオウは・・神魔法を発動させたからである。
「この姿は、神魔法:炎天神・地獄verと言うものだ・・これなら、その結界を破れる・・」
そういって、メイオウが結界に触れると、結界はいとも簡単に破られてしまう。
「師匠・・結界が・・」
「ええ・・終わりよ・・もう・・」
(まだ死にたくない・・誰か・・誰か・・)
そういった瞬間、ディル達の空間が壊れて、そこから身長が伸びた青年とボル、フルート、ディル、グランが出てきた。
「お待たせ。アニオン、エン」
と青年は言う。
(あの青年はもしかして? いや、絶対そうだ!)
「遅いじゃないの・・翔琉!」
絶望で押しつぶされた私の心に、希望の光が差し込んだ。
それは、光属性の魔法を扱い、私の恋した少年の姿である。
次回は戦いなり




