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MW元   作者: ただっち
ファントムソウル編
31/69

セカンドステージ8:ディルとアマデウス

名シーンと迷シーンは紙一重だと思います。

そこにはディルがいた。そして見知らぬ少年も・・


 (何者なんだ、この少年は・・いや、それよりも!)


「ディル!? なんでここに?」


 俺よりそのセリフを言ったのはアニオンだった。その通りだ。何故彼女がここにいるのだ?

 彼女は時空城にいるはずでは?


「えへへ。逃げてきちゃった」


 そういうディル。しかしながら現状としては、警戒をせねばならない。もし、それが本当だとしても追手が来ている可能性や、嘘をついている可能性がある。

 ましてや、そもそもこいつは本物なのか?


「本当にディルなのか?」


 俺が聞くとディルはやや怒りながら


「誰が、あんたに魔法教えたと思ってんのよ」


 といって、懐かしい魔法を俺に見せた。

 一番初めに見せてくれた魔法・・炎の魔法:陰である。


 (間違いない・・本物のディルだ・・)


「みんな・・間違いない・・これは本物のディルだ!」

「もう、だから本物だっていってるじゃん。まあ、今は幽霊だけどね」


 そういうと、ディルは近場にあったソファーをすり抜けて見せた。


「幽霊・・つまりは、魂の存在となって、肉体から切り離された・・いや・・自ら切り離したんだね」


 とアニオンは言う。そして、ディルはその言葉にうなずく。


「そうそう、翔琉に合わせたい人がいるんだ」


 そういって、ディルは少年を指さす。そして、少年は泣きながら俺に抱き付いてきた。


「翔琉!会いたかったよ!」


 それを見たボルと、新たに翔琉をめぐる恋の戦いに参戦したアニオンが声を揃えて言う。


「「誰だ? そいつ」」


 そういうと少年は俺に抱き付いたまま、言う。


「僕の名前は、アマデウス! 翔琉の子供さ!」


 その言葉に、驚いたのはこの場所において限るならば、俺が一番驚いていた顔をしたといえるだろう。何故ならば、俺の子供と公言する少年がその場で俺にいたのだから。


 (子供なんていないのに・・何言ってるんだ? こいつは誰だ? え? 子供? え? 何々どういう状況?)



「え? ちょっと待って。」

 

 俺の手は汗でびっしょりしていた。そして、身体から水分と言う水分がなくなってしまうんじゃないかと言うくらいに、とめどなく汗が出ていた。次の瞬間には思考が完全にマヒしてしまい、その場に倒れてしまった。


「翔琉! 大丈夫か!」


 といいボルは翔琉の元に駆けつける。そして、アマデウスはその場に堂々と立っていた。


「あれ? 翔琉ってこのくらいで倒れたっけ?」


 そういうアマデウスを強い眼光で睨めつけるアニオンとボル。

 ボルは翔琉の身体を持ち上げ近くのソファーに寝かせる。そして、アマデウスに詰め寄る。


「お前・・翔琉に何しやがった?」

「こととしだいによっちゃあ、ただじゃおかないよ・・」


 目も怖いが2人の表情はかなり怖くなっていた。それを見たフルートが2人を抑える。


「まあまあ、2人共落ち着いて・・アマデウスって言ったかしら? 君」


 とアマデウスに聞く、フルート。そして、アマデウスはニコリと笑いうなずく。


「ディル・・ちゃんと説明しなさい。この子は何者なの? そもそも人間じゃないでしょ?」


 と言うフルートの言葉で、先ほどまで怒りに満ちていた2人の表情は驚いた表情に変わった。そしてフルートの問いに答えるよう、ディルは彼・・アマデウスについて語る。


「ええ、その通りよ。彼は人間じゃない。そして、翔琉の子供でもない。彼は翔琉がロギウスに奪われた神魔法:光天神の化身・・つまりは、魔法本体ってことになるわ」


 ”そもそも、彼との出会いは翔琉が魔法を取られて、元の世界に帰ってからの次の日だったわ。私はロギウスによって、私の身体にある、深層心理の奥深くに封じ込められていた。そんな中でも私は、意識だけはあった。何とか、肉体から抜け出せないかと試行錯誤したけどダメだった。

 そんな中に、光が差し込んだの。そして、声が聞こえたの。その声を頼りに光の筋を除くと、アマデウスがロギウスに融合されそうになっているのを、必死に抵抗していたの。


「僕は翔琉の魔法だから・・お前などには屈しない!」


 そういって、アマデウスが必死に抵抗する姿を目にしたの。その姿に向かって、私は声をかけ続けたの。そしたら、その声が通じたようでそのあとからは、ロギウスが眠る昼の時間帯に会話ができるまでに至ったの。

 そして彼と私はお互いに、自身のこれまでやこの先をどう切り抜けるかを合作しあったりしていたってわけ”


「そんなわけで、彼とはお友達になりました・・ちゃんちゃんっと。」

「ちゃんちゃんじゃないでしょうが!」


 と声を荒立てて言うのは、珍しくフルートだった。その声に反応したのはアニオンだった。アニオンは部屋の隅に肩を震わせながら体育座りで座っている。そして、何かぶつぶつ呟いている。


「フルート怖いフルート怖いフルート怖い・・」


 エンにトラウマがあるように、アニオンにはフルートにどうやらトラウマがあるようだ。何があったんだろう?この2人には・・

 そんな中ディルも、若干身体が震えているようだ。どうやら、ディルもフルートに何かされたことがあるらしい。


「そんな曖昧さで、敵と味方決めてんなら、ここであんたを消すわ・・この先・・心配だからね・・」

「ごめん、ごめん。いや、本当にごめんなさい。そんなんで決めたんじゃないから、本当にそうだから、まずは彼の話も聞いてあげてお願い!」


 いつにもなく、ディルは慌てていた。そして、フルートもその言葉で少し落ち着いたようで


「分かったわ・・でも、納得のいく答えが得られずに、この少年が敵になった場合は・・分かってるわね?」


 このいつにもなく張り詰めた空気の中、カレーの鍋が煮終えたようでふたが、コトコトと鳴り響くのであった。



 エンが台所で、カレーの火を消してきて戻ってきたとき、俺の目は再び覚めた。汗で服がぬれていて気持ちが悪いのだけど・・今は着替えているときではなさそうだ。

 アマデウスがみんなに話を始めるようだ。そんな中俺の目覚めに気付いたようで、アマデウスは


「翔琉も聞いてね!」


 と笑顔でこちらに元気よく手を振る。そして俺は、ソファーに座り、彼の話を聞くのであった。


 ”僕の名前はアマデウス。元々は神の所有物として、管理されていた魔法で人々は僕の事を、神魔法:光天神と呼んでいた。君らで言うところの神話の時代に、僕は突然神によってオールドアの中へ飛ばされた。理由は新たな火種になるのを防ぐため・・でも実際は神は僕がいらなかったのさ。何故なら、この世界には神は2人もいらないから・・そして僕は神に捨てられる形でオールドアに吸い込まれていった。そのあと、僕は色々な世界を見て回った。機械の発達した世界、宇宙開発に特化した世界、魔法じゃなくて超能力と言うものが世界の力として使役されている世界・・そして、最終的にたどり着いたのは、翔琉のいる地球と言う世界さ。

 普通に科学と呼ばれるものが発達した世界。その場所で、僕は神に似た感覚の人物がこの世界にはいるというのを、感覚的に理解した。そして、それが天野翔琉・・君だったというわけさ。君が生まれてすぐに、君には神と同等の力が宿っていた・・なんてことはない、君は普通に普通な少年だった。しかし僕には見えた。君のこれからの未来が・・そして様々なことに挑戦する思考、できるまでやり続ける貪欲さ・・そして、それらを完成させるために必要な資質や素質を君は持っていた。

 そんな翔琉の力になれればいいなと思っていた。神に似ていたからではなく、君と言う人間を未来で見るに、知っていくにつれて、そんな君にひかれていった。そして、僕は僕を捨てた神なんかより、誰のためになるかわからないようなことでも、ひたむきに努力し続けた君の力になることを決意して、僕は君に僕の全てを委ねる・・そのつもりで、君の心の奥底へと潜んでいた・・と言うわけさ。

 そして、中学1年生のあの日・・理科室で起こった出来事によって、皮肉にも君は僕が元々いた世界へとわたってしまった・・そのため、僕は君の魔法となって君を守ることを決意して僕の力を君にあげたんだ。僕自身もね・・”


 そう語った後、俺の方を見つめるアマデウス。そして、アマデウスは言う。


「君の力になるため・・例え離れ離れになっても、僕は君のために動くことに決めたんだ」


 そういい、俺に向かって飛び込んでいきそして、光となって俺の中に入ってきた。


「「翔琉!」」


 と一同は驚いていたが、何も起こらなかった。数秒後にアマデウスが出てきてニッコリ笑いながら


「久々に、翔琉の心の中に入れた~」


 と言っている。フルートは、どうやら大丈夫みたいね、といいご飯を求めて台所へ行った。

 そして、エンも台所へ・・

 ディルとボル、アニオンに向かってアマデウスは言う。


「安心して。僕は翔琉の力になるだけだけだから。別に恋人になろうとか、夫婦になろうとかそんなことできないから。僕は永劫翔琉と翔琉の子供たちを守る守護神って役割なだけだから」


 そういって、アマデウスは俺の中へと再び入って行った。そのセリフを聞いた3人はほっとしたような顔をしている。そして、俺は彼らに向かって言う。


「取りあえず、ご飯食べよっか。」



 本日のメニューは先ほど作っていたカレーである。サラダは間に合わなかあったので、明日だな。

 そうそう、霊体のディルはご飯を取らなくていいようなので、そのあたりをふわふわ浮いている。

 ボルは幼児体型の姿では、相変わらず食べるのが苦手みたいで俺が食べさせている。口にカレーや米粒がいっぱいくっついているから、時々拭いてあげたりしている。その光景をものほしそうにアニオンは眺めているのだが、正直今はボルの事でいっぱいいっぱいなので、1口だけカレーをあーんして食べさせただけで済んでいる。アニオンがエンの足をテーブルの下で踏んでいる音が聞こえるが、エンの方を向く余裕はないので無視しよう。

 さて食事も終わり、片づけを女性陣に任せて、俺とボルとエン、そして俺の体内から出たアマデウスは地下にある温泉に来ていた。その温泉の効能と言うのがすごいみたいで、様々な病気や疲労を取り除く力があるらしい。でも、源泉の源泉なんかに入ってやけどしないだろうか?と心配していたのだが、温度はちょうどよかった。エン曰く、外に出るまでに熱せられて熱くなる、とのこと。

 さあて、俺はゆっくりと疲労を回復・・


「翔琉遊ぼうぜ!」


 ゆっくりと、疲労・・


「翔琉・・俺と遊ぶのいやか?」


 ゆっくり・・


「翔琉~! あ~そ~ぼ~!」


 遊ぶことにした。

 だって、可愛すぎるだろ!

 いつもなら、ここにライがいるのだが残念ながら彼は今洗脳されて、雷の大魔導士の神殿にいる。

 そして、代わりにアマデウスが混じっている。

 エンは源泉の湧き出ている滝の近くでのんびりと温泉を堪能している。まあ、洗脳解けてそのあとに師匠に、あんなにぼろくそやられたら、そうなるわな・・


「翔琉~抱っこ!」


 とボルが甘えてきた。そしてアマデウスは


「翔琉~おんぶして~!」


 2方向から幼児が攻めてくるだと!ここはハーレムなのか?

 なんて、ふざけたことを考える自分がいるのか考えている俺であった。

 まあ、やるけどね。おんぶも抱っこも。


「翔琉の背中落ち着く~」

「翔琉の胸落ち着く~」


 2人はそんなことを言っている。なんだよ、胸落ち着くって。

 それより、ボルの髭が首筋にちくちく当たってこちょばしい。


「あ~翔琉。興奮してるの? やらしいな」


 と言う、アマデウス。

 興奮してねえよ。こちょばしいんだよ。


「え?俺の髭にそんな力が・・」


 とにやにやしながら答えるボル。この2人、いつの間にか仲良くなっている。

 くそ!連係プレイとはこのことか!

 更に2人は俺の首筋をひたすらこちょばしてきた。たまらなくなり、俺は笑った。


「はっはっは・・2人共やめろよ、くすぐったいぞ」

「わーい、翔琉が笑った」

「笑った笑った~」


 そういえば、愛想笑いなどは結構してきたけど、単純にこちょばされて笑うなんて、楽しげな状況で笑うのは少ないかもしれない。これまでの人生で。

 2人のこちょばしが続く中で、笑いながら不意にそんなことを思う俺であったのである。



 温泉から、上がった俺たちはエンの家にあった浴衣を着て過ごしていた。ボルの元のサイズの物がなかったらしく、幼児体型の姿でいるみたいだ(たぶん、狙ってだと思うけど)。

 そして、俺たちは次の目的地に行く前に、ディルの魂の保管場所について話を始めた。

 と言うのも、アマデウスは俺の元に”帰ってきた”ので、問題はないのだが、ディルは”帰るべき肉体を奪われている”という状態であるので、魂をいったんどこかに定着させないと、元の肉体へと強制的に戻されてしまう可能性がある。

 幸いにも、フルートがその方法を知っていたらしくそれは無事に成功したのだが・・

 魂を定着させるために選んだのは、ぬいぐるみだった。それも、かなり可愛らしい人形。

 ぬいぐるみがふわふわと浮いている姿は、事情を知らないものにとってはかなり、ポルスターガイドや怨霊に呪われているなどと想像するかもしれないが、そのぬいぐるみがカワウソの姿をしているのでめっちゃかわいい。普通に女子が、きゃーきゃー言いそうな可愛さである。

 まあ、入ってる人はディルだけどね(笑)

 こんな説明をしたせいで、俺は結果としてぬいぐるみにぼこられて、身体の節々に痛みがあるのだが・・まあ、とにかくこのぬいぐるみに、全耐性強化魔法と耐久力、つまりは防御を上げる魔法をかけたところで俺たちは寝ることにした。

次回は深夜に起こる出来事です。

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