セカンドステージ7:温暖帝へ行こう
俺たちはエンを助け、更には8つある魂記憶のうち、1つ目を入手することに成功した。
そして現在は炎の大魔導士の神殿を離れて、今はアニオンの隠れ家前にいる。そして、今後の予定として、次に向かうのは地の大魔導士の神殿に決めた頃、俺たちは出発をしようとしていた。
しかしながら、戦闘などによって俺たちはここいらで休息をしたいと思っていた(まあ、ストレス解消っていうのがメインだけど・・)。そんな中で、エンがとても素敵な情報をくれた。何でも、エンしか知らない地底温泉があるというのだ。その場所は、温暖帝のエンの家の地下に存在するらしい。(前に訪れた時には何故教えなかったんだよ!)
幸いにも(狙っていたのだが)温暖帝の近くに地の大魔導士の神殿はあるのでここいらで体力を完全に回復させるのもいいだろう。
エン曰くその温泉は、源泉の源、で別名が命湯と言うらしい。エンがこの温泉を前回の段階で教えてくれなかったのは師匠であるアニオンのせいであるらしい。
エンの師匠であるアニオンは昔その温泉に行ったことがあるらしいのだが、そこで酒に酔ったアニオンが源泉を破壊しそうになったらしいために、以来この温泉には誰も入れないようにしていたとか、それを当事者であるところのアニオンは笑い話で語っていたのだが、その話を聞いていたエンにとってはかなりのトラウマだったらしく、エンはうなだれている。(さっき、教えなかったとかいろいろ言ってごめん。)
「じゃあ、行きましょうか」
といって思いっきりはしゃいでいるアニオンの後ろには暗い表情のエン。こんなキャラじゃなかったのにな・・
フルートはのほほんと、その辺に生えてる草花と話をしているし、ボルはと言うと・・
「翔琉~構ってにゃん!」
と更に幼児化していた。いやいや、こうなてしまった原因は俺にあるのだが・・ネコ科の動物に試してみたいことシリーズでその2、耳の後ろは神経が集中しているためそこを触られると気持ちいいというのが果たしてそれが虎でも同様なのかと言う実験と言うか、猫好きとしては一度はやってみたいことだったので、虎獣人のボルにも果たして効果があるのかと、ほんの数分前に試してみたところ、どうやらそうだったらしくて、にゃあにゃあ言いながら、子供の姿になってしまった。
「遊んで~翔琉~遊んで~」
そんな構ってちゃんなボルが、若干可愛くなってきたので、ここいらで俺もボルと遊んでみよう。まずは高い高いでもしてあげようかな。
高い高いが終わり、そろそろ添い寝でもしてあげようとしたとき、アニオンがそろそろ行くかと言う。
とは言ったものの、どうやって行くんだ?
「私の魔法でひとっとびよ!」
と言う。え? 確かアニオンの使う魔法は負極魔法で、0にするか0に近づける魔法だったけど・・いったい今回は何に使うのかな?
「負極魔法:零地転」
そういった瞬間に、俺たちは温暖帝に着いていた。え? いったい何が起こったんだろう? そう疑問に思った俺はアニオンに聞いてみた。するとアニオンはやれやれ・・と言った感じで答えた。
「この魔法、零地転は地点と地点の距離を0にする魔法よ。だから、私たちのいた隠れ家と温暖帝の距離を0にしたってわけよ」
なるほど・・でもドヤ顔&上から目線はやめてほしいかな。
さあてそんなわけで、俺たちは温暖帝に着いたわけだが・・やっぱり空は暗いな。
(いつになったら晴れた空を再び見れるんだろう。やっぱり、ロギウスを倒さなきゃ見れないのかな?)
そんな風なことを考えながら、俺はエンの家へと向かうのであった。
~そのころ時空城では~
先の戦闘によって、神魔法の真の使い手である天野翔琉の帰還を、炎の大魔導士エンの敗北により知ったロギウス。
ロギウスにとって現在、天野翔琉以上に恐ろしい存在はいない。何故なら、神魔法を元々所持していた天野翔琉が自身に近づくと、神魔法が本来の主である天野翔琉本体へと戻ってしまう可能性があるからだ。また、オールドアへと翔琉を衝撃波によって飛ばしたのは実際はロギウスではなく、ディルであったということにも危機感を覚えていた。
あの時、肉体の支配をしていたにもかかわらず、衝撃波を与えることにより、翔琉を無理矢理逃がしたという事実がある。実際はあの場で、翔琉を殺す予定であったロギウス。危険分子は完全に排除しておきたかったのだが、その時はうまくいかなかった。そのため、翔琉の行きつく先の時間を精々捻じ曲げる事しかできなかったのだ。
その結果翔琉は13年後の未来へと飛んでしまった。それで、全てが片付く予定だった。しかしながらまたしても失敗した。その事実を知り、余計にいらだちが隠せなくなったロギウスは何をしていたのかと言うと、心の世界で封じ込めていたディルを痛めつけてやろうと封印を解きディルと戦っていた。勿論精神世界で。そのまま消滅させてやるという目論見のようだが、実際はやや押されがちである。
「伝説の罪人さんが、この程度なんてみんなに笑われちゃいますよ」
「ふん! 何を言う。貴様なぞ、すでにボロボロの布きれみたいではないか」
確かにロギウスの言う通りで、ディルはもはや精神的に限界まで来ている。しかしながら彼女には強い味方がいるのである。神魔法は取り込まれてもその意思は、はっきりとしている神魔法の化身、アマデウスである。
少年の姿をしてはいるものの、さすがは神魔法の化身である。実力はディル以上である。しかしながら少年は本来の力を出し切ることができなかった。その原因は大部分をロギウスに奪われているためである。そんな彼でも、ディルと協力することによって普段と大差なく戦うことができているのである。
「ロギウス。僕がいることを忘れてほしくないな」
「ふん。力なき貴様など、取るに足らぬわ」
「とかいいつつ、結構力が均衡しているよね」
そういって、ディルは挑発するが、流石に神話に残る伝説の罪人がこの程度の挑発に乗るわけが・・
「貴様らなんぞ、一瞬で消して見せるわ! ボケがぁ!」
乗るのかよ・・、そう思うディル。だが、ディルには勝機があった。この魔法さえ成功すればロギウスの精神世界から抜け出せるかもしれない・・そんな魔法がある。
「永遠に消え去るがいい! 消滅魔法:粉砕消去!」
「その魔法を待っていたわ! 時空間魔法:永久之夢!」
そういうと、精神世界に亀裂が走る。
「貴様! まさか、その魔法は!」
と焦るロギウス。そして、にこりと笑いディルとアマデウスは亀裂から逃げ出すことに成功する。
「やられた・・我があの娘の挑発ごときで・・策に踊らされるなど・・」
そういいながら、ポツンと1人ただただ虚しくその場にいるロギウスであった。
外の世界、正確に言えばディルは自身の肉体の外に出ることに成功した。久々に感じる空気はやや重く何より暗かった。そんな中で彼女は自身が現在霊体であることを認識したのはすぐだった。
魂となった彼女は、同じく魂の存在となっているアマデウスとともに時空城からの脱出を試みる。結界の近くまで来たところで、ロギウスが追ってきた。
「逃さぬぞ! 小娘! そして、アマデウス!」
そんな中彼女たちは冷静に結界の外に出ることに成功する。実はこの結界、魂は簡単に通ることができる。そのため、魂の塊によって肉体を形成しているといっても過言ではない時限亡者たちは楽々に時空城から外へと行けるのである。
「残念でした。私たちの勝ちね(ギリギリだったわ・・)」
そういって、ディルとアマデウスは時空城から離れていくのであった。その光景を見ていたロギウスは顔からマグマが出るかと言うほど赤くなっており
「あのもの達を即刻捕まえてまいれ! 捕まえられない場合は、消滅させてしまえ!」
と時限亡者たちを追撃のために向かわせるのである。
そして、ディル達は翔琉の元へと向かうべく、アマデウスの翔琉の察知能力を頼りに翔琉の元へ向かうために、温暖帝へと向かっているのであった。
~そんな中、翔琉たちはと言うと・・~
エンの家へとすでに到着していた俺たちは、早速温泉に入ることにした。まあ、もちろんエンの家の周りに、俺とフルート、アニオン、ボルの4人の結界が張ってある状態なのでこれ以上なく安全である。
そんな中レディーファーストと言うことで、フルートとアニオンが温泉につかっているので俺たちは、本日のご飯の用意をしていた。と言っても、ボルとエンは料理をしたことがないので、実質は俺が料理を作っている。
「魔法の才能だけでなく、料理の才能もあるのか! 翔琉! うちはお前の才能がうらやましいわ」
と傍らでニンジンを切るエン。切るだけならばどうやらできるようだ。
「翔琉・・いい奥さんになれるぜ! 感動で涙が・・」
と玉ねぎを涙を流しながら切るボル。こちらも手際がよくいい感じに切ってくれている。
(感動の涙ではなく、玉ねぎの涙だなそれ・・)
「今日のメニューはカレーだな」
俺は切られた野菜たちを鍋に入れて煮込んでいく。いい感じになってきたのであとは煮込むだけだ。さてと・・これに合わせて、サラダでも作るか。
と再び手際よく、エンとボルが野菜を切ってくれている間に俺はご飯が炊けているかを見に行く。
ご飯の質はどうやら大丈夫だ。硬すぎず、柔すぎず・・いい出来である。
「なあ、翔琉次は何を切るんだ?」
「ああボル。えっとね次は・・!!」
ここで、俺たちは何者かの気配に気づく。
(敵かもしれない・・)
「何か・・いるな」
「そうみたいだね」
「うちが前衛、2人はバックアップしてくれ」
「「了解!」」
そういって俺たちは構えたのだが・・次の瞬間飛び出てきたのはフルートとアニオンだった。バスタオル姿の・・
「きゃあ~上がったわよん」
「上がったのら~」
以上に酒臭い・・温泉の中で飲んでたな・・。
(敵かと思って、びっくりしたな・・)
「師匠! 脅かさないで下さいよ。敵かと思ったじゃないですか!」
「私を敵呼ばわりするなんて・・いい度胸してるわね」
そういって周りをにらむアニオン。場の空気が一気に凍った気がした・・何より、エンの身体から震えが止まらなくなっている。その場に耐えられなくなったフルートが
「ねえねえ、今日の夜ご飯は何?」
と聞いてきた。俺はカレーだよ、と答えた。するとアニオンが
「え~私ステーキがいい~」
と言ってきたので俺は真顔で
「じゃあ、アニオンは食べなくていいわ」
と言い返す。エンは心臓が止まりそうな顔をしてこちらをにらんでいる。そしてアイコンタクトを飛ばす。
“今すぐ、謝れ!”
だが俺は
“嫌だ”
と返信した。そして、アニオンが俺につかみかかってくる。
「何よ翔琉! 私に文句つけるの?」
と言ってきたので俺は言い返す。
「うん、そうだよ。いくらすごい魔導士と言えども、好き嫌いやわがままばかり言ってたりするのは嫌なんだよね。だいたい、食べ物は命をいただく意味があるんだから、そんな自分が食べたいものがホイホイ出てくるなんて思ったら大間違いだと思うよ」
そういうと、アニオンはつかんでいた手を離した。そして、申し訳なさそうに言う。
「うん・・そうかも・・私が悪かったわ・・酔いに任せてわがまま言ったわ・・ごめんなさい」
その光景を見ていたエンにとってもはや、翔琉が神に見えていた。自身が怖がっていた師匠に対して、あそこまで平然と言い返す翔琉が格好良く見えていた、そして密かにアニオンもカッコいいと思っていたのであった。
アニオンはこれまで、男性に怒られたということが実は無い。そのため、自信に言い返した翔琉には特別な何かがあるのだと思ってしまった。そして、彼女にとってはこれが初恋となってしまったのだ。自身に対して1歩も引かず、言い返すことのできる強い男性。その翔琉に魅了されてしまったのだ。そして、彼女はその気持ちをすぐに伝えようと声に出してしまった。
「翔琉・・私と・・付き合って・・」
その発言に一同が驚くが、おそらく一番驚いているのは彼女自身である。まさかこんなことを言うなんて・・
「相変わらず、モテモテだね翔琉。」
その声には聞き覚えがあった。そして、一同はそちらの方を向くと、そこにはディルと見知らぬ少年がいたのだった。




