第1話 三塚村
折角の青空も、ここじゃ良く見えない。別に、久しぶりの青空とかいうわけではないけれど。
ここは、三塚村。の、最奥にある、呪杯の祠。呪杯とは、この村に伝わる儀式で、生涯一度のみ受けられる
その儀式の内容は…およそ2000年前から引き継がれているというこの村の特産品でもある、三塚神酒の原液を手で仰ぐ。というものである。ただ、それだけなんだけど…
「遅い」
もう、3時間は待たされている。こんな光の届かない祠に3時間もいると、気が滅入ってくる。
「ふぅ」
不意に、大きな声が鋭く耳に突き刺さってきた。
「よし。準備OK。おい、蒼介、入ってこい」
やっと、やっとだ。
「わかった。今行く」
そう言って椅子から立ち上がる。長い間待たされた不満よりも大きい、ドキドキとワクワクを胸に更に奥へと走って行った。
「もうそろそろ、戻ってきてもいいんじゃないか。カワサキ」
「はい。でも、まだ」
「そうか。そうだな」
「はい。ありがとうございます。では」
ガチャっと電話を切った。
「あの。川崎さん。事件です」
「あ、ああ。場所は」
「三塚村で、殺人です」
「三塚村…」
「知ってますか?」
「いや。聞いたことない」
「ですよね。なんでも、秘境の地らしいですよ。知る人ぞ知る。みたいな」
「そうか」
「おい。川崎。行くぞ」
後ろからそう聞こえた。石神だ
「おう。今行く」
そう言って、椅子にかけてある、コートを羽織り、コーヒーを飲み干した。
「早くしろ。現場は遠いぞ」
「だから、今行くって。10秒も待てないのか」
呆れるように行った。
「5秒だ」
「はぁ」
本当に呆れた。
「まあいい。さあ行くぞ」
「ほいほい」
そう言ってドアへと歩いて行った。そのまま、階段を降りて行く。古びた手すりは錆特有のあの匂いがする。そんなことを思いながら、駐車場に止めてある、石神の車に乗り込んだ。
「おし、着いたぞ」
「おう。外で待ってる」
ドアを開け、外に出る。まだ、10月だというのに、真冬のような寒さだ。
「さぶっ」
思わず、ドアを開け、車に戻ろうとしてしまった。
「はっ。危ない危ない」
ここが三塚村。あたりは、少し古い家屋が並ぶ、普通の田舎の普通の村だ。
「おう、またせたな。行くか」
ふと見ると前方に人だかりができていた。
「あそこか」
「あそこだな」
人混みをなんとか、くぐり抜けた。
「ここか」
目の前には大きな森が広がっていた。
「警視庁の川崎と石神だ」
「どうぞ」
警備員にで誘導され、歩いて行くと、前方から、男性が走ってきた。
「どうも。刑事さんですかな。私、地元警察の警部の佐々木です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
佐々木と名乗った男性は見た目は40代後半でメガネをかけていて、小太りだ。
誘導され、奥まで歩いていく。巨木が不気味なほど、うっそうと生い茂っている。
そして、
「あれですか」
「はい」
死体だ。ビニールシートをめくり中へ入っていく。
死体を見た瞬間、目を見開いた。石神も、同様に驚いていた。
「おいおい。こりゃどういうことだ」
「…」
あまりの怪奇さに言葉を失った。後ろからガサッと音がした。佐々木警部が入ってきたようだ。
「見てわかるとおり、変死体です」
変死体。確かに変死体だが、そう言うには、少し違和感を感じた。これは、まるで…
「鉄じゃないか」
「そうです。皮膚が鉄のように硬い物質で覆われています」
少し沈黙したあと、石神が言葉を発した。
「ありえない。どういうことだ」
石神がここまで戸惑うのにも無理はない。それほど、怪奇なのだ。
「とりあえず調べてみるしかないですよね」
「ええ。そうなんですが」
警部は少し、狼狽えている様子だった。
「どうかしましたか」
「それが…動かないんですよ。あれ」
再びの沈黙の後、
「…動かない?」
そう言った。
「ええ。鉄のように硬いだけでなく、重いのです。」
「まったく。いったいどうなってやがる」
「…」
皮膚が鉄のように硬いだけでなく、とてつもなく重い。それだけではない。見る限り、関節はがっちりと固まっている。これも硬くなったからなのか。
しょうがない。
「あいつを呼ぶか」
「誰ですか。その、あいつって」
「え、いや。僕の友人ですよ。ちょっとばかし、頭の良いね」
自分んが言ったのにも関わらず、「ちょっとばかし」という言葉に少し罪悪感のようなものを感じた。
「ちょっと電話してきます」
そう言って、ビニールシートの外に出、自分の家の電話番号に電話をかけた。
「おい。スターリン。起きてるか。今すぐ来い。場所は三塚村。分かるよな。あと、検視グッズを忘れるな。じゃあな」
そう言って、電話を切った。そして、もう一度ビニールシートの中へ入って行った。
「あと2、3時間でくると思います。それまで、ここから出て行って貰えると、ありがたいんですけど…」
意外にも、すんなりと皆出て行ってくれた。
「さてと」
「とりあえず事情聴取だな」
石神が言った。
「容疑者の特定っていうか目星は付いてますか」
「いえ。それが全く」
「そうですか」
申し訳なさそうな顔をしていたので、少し笑みを浮かべ
「いえ、全然問題ないですよ」
と言った。実際は全然問題だが。
「死体発見から、すでに10時間は経っている。村の出入りを封じたのが発見から6時間。逃げる時間は充分だ。でも」
「それが、外部の人間による犯行ならば。だろ」
と、石神がニヤリと笑いながら言ってきた。
「そうだ。と、すると初めにすることはなんだ」
と、試すように問いかける。
「村の人間が出入りしたかだろ」
と、自慢げに言った。
「そう。じゃあ、佐々木さん。お願いします」
「分かりました。他にすることはありますか」
「いえ、今はいいですよ。それだけで。じゃあお願いします」
そう言って、村の出入り口まで走って行った。
初めに、この作品には主人公が2人います。
警視庁の刑事、川崎 亮司と三塚村の少年、関 蒼介です。
本当はスターリンが死体について話すところまで、書くつもりでしたが長くなりすぎるといけないかなーと、思って、一旦ここで切りました。
この作品は、僕の好きな海外ドラマの影響を受けていると思います。
次の第二話を見ていただければ、わかると思います。
初めて書いた作品です。お見苦しい点が色々あると思いますが、どうぞよろしくお願いします。