真夏のある日の出来事
以前電撃チャンピオンロードに投稿したモノです
蝉もあまりの暑さに鳴くのを止めるような熱気にもかかわらず、帰路に着く生徒達は皆笑顔だ。
なぜなら今から夏休みが始まるからだ。
「夏休みと言えば何を連想するかな? 相棒」
隣を歩くイケメンにビシッと指を指す。
「大量にある宿題じゃない?」
「残念! ペナルティー!!」
人の話しを真面目に聞かない幼なじみにパンチをお見舞いするがアッサリかわされ、逆にお見舞いされてしまった。
「ゴフゥ……」
「興味ないけど、聞かないと面倒だから聞いてあげるよ。答えはなんな訳?」
「……よ、良くぞ聞いてくれた! 答えはナンパだ!!」
幼なじみ、勇樹は露骨に面倒くさそうな表情を向けてくるが気にしない。
夏をエンジョイするには可愛い女の子が必要不可欠なのだ。
「止めときなって、痛い目に合うのはわかりきってんじゃん。て言うかお前--」
「しゃーらっぷ。海に行くぞ」
「和人……僕は忠告したからね」
勇樹を連れてくれば勝率はグッと上がる。
「かき氷奢ってやってんだからゴタゴタ言うな。お前は俺と一緒に居ればいいの」
さっそく俺は満員電車の中、の様な人だらけの浜辺へ繰り出した。
「紅葉がキレイだね」
焼きトウモロコシを食いながら腫れた頬について嫌みを言ってくる。
「…………次だ」
次に茶髪の子に声を掛けた。
俺ぐらいになると後ろ姿だけで美人かどうか判別できる。
その俺の見立てでは俺好みの子と見た!
「ヘイ彼女! 俺と一夏のあんばちゅーるを楽しまないかい!!」
「アンバチュールって……」
勇樹が横で何か言っているがここは俺のターンだ。邪魔しないでもらおう!!
「へぇ? アンバチュールねぇ? いいんじゃない?」
ゆっくりと振り向いた女の子は見た事ある人物だった。
んんー? 何か、一緒に帰ったり、休日に遊びに行ったり、夕日の中で好きですって告白した人物に似てる気が……。
「ゲッ……」
「見てたわよ。散々に声を掛けまくってたみたいね」
「あ、いや、その」
「問答無用!!」
一般的に恋人と呼ばれる子からのグーパンチで俺の視界は闇に沈んだ。
「星がキレイだなー」
「いい加減現実逃避を止めて謝りに行った方がいいと思うけど? だいたい喧嘩したからってナンパに行こうなんて言うのが間違ってるんだよ」
誰もいない静かな海は心を穏やかにしてくれるね。
「なんかねー? 目から塩水が止まらないんだよねーなんでかなー?」
「敗走した戦士は哀れだねぇ」
「う、うわ~ん」