第12話
受講初日は構内の案内と各施設の説明を受けた。広大な面積をもつグラウンド、雛壇状に机と椅子を並べた複数の講堂、各種生産の為の工房、膨大書物を管理する図書館、巨大な闘技場等々……。最初は座学からという事だから、初めの内は講堂に足を運ぶ事が多くなるだろう。
昼食を挟み、全ての施設を回る頃には既に夕食の時間だった。食後は何かする気力も時間もなく、入浴して早々に休む事にした。余暇時間の間であれば、中央エントランスで衣服のクリーニングを受け付けてくれるようだが、普段は【清浄化】で事足りる。クリーニングでは修繕も受け付けているようなので、定期的なクリーニングの他に、修繕の必要がある場合には頼む事にした。
翌日、1時限目の魔法全般を受講する一同は揃って講堂に来ていたが、聞いていたよりも人数が少ない。どうやら受講するかしないかは本人の意思で、学院側で管理している訳ではないらしい。3か月毎の考査で合格するかどうかだけが重要なようだ。
ここに来ていない者は何をしているかというと、図書館へ行く者が多いそうだ。
魔法全般の内容は主に3つで、魔法の種類と歴史についての座学と、生活魔法の習得、初級属性魔法の習得だ。学院で学べる魔法の種類は大きく分けて『生活魔法』『属性魔法』『上級属性魔法』『特殊魔法』に分かれる。属性魔法を更に細分化すると、『単独属性魔法』『多属性複合魔法』『戦略級魔法』に分かれる。上級属性魔法は『光属性魔法』と『闇属性魔法』。特殊魔法は『固有魔法』『錬金魔法』『精霊魔法』『召喚魔法』に分かれる。この世界では錬金は技術ではなく、魔法に分類されるものだそうだ。
上のクラスに上がると分類された魔法を専門的に学ぶように科目が分かれていく事になる。これは戦闘全般等に関しても同様だ。
1時限目の受講が終わると、一人の学生に声を掛けられた。
「やあ、君がマコト=カグラかい?」
金髪碧眼の同年代くらいの男性で、平均以上に容姿が整ったヒューマンだった。目と口元にはどこか見下したような笑みを浮かべている。
名前を告げられた瞬間周囲の目も集まってしまった。誰もが息をひそめ、静まり返っている。受講初日だから他者との距離感を掴み兼ねているという理由だけではないだろう。なぜこんな空気になっているのか知らないが、逃げ出したくなってきた。
「……人違いでは?」
「そんなはず無いだろう? 昨日受付でそう呼ばれていたじゃないか」
……まさかストーカー?
「なんだ、知っていたのか。それで君は?」
「僕を知らないのかい? 僕はアルベルト=サルマント。サルマント伯爵家の嫡子さ」
なるほど、貴族だったのか。面倒な事にならないと良いが……。
「それで、僕に何か?」
「【ファイアランス】の魔法を生み出したのは君なんだろう? あれは素晴らしいね! 初級魔法しか持っていない低ランクの冒険者が、Bランクのオーガを仕留められるなんて前代未聞だよ。それに……」
妙にべた褒めしだした。最初の見下したような印象は影をひそめ、口を挟む間も無いほどに噂話を並べ立てる。周囲の視線も集めたままで、これでは針の筵だ。休憩時間は休憩させてほしい。30分後も同じ講堂でなければ、それを理由に逃げたかったがそうもいかない。
やがて言葉を切り、何か言いたげに見つめられる。男相手にこの空気は嫌いだ。直前の話が無ければ告白を連想させる。
「君は他の属性の魔法は開発してないのかい?」
当然ある。カティアにも3つ教えている。在学中も冒険者としての活動はするつもりだから、遅かれ早かれ新魔法の存在はある程度知られる事は想定しておくべきだ。問題にならない範囲で存在程度なら明かしても良いだろう。
「ない事も無いですが……」
「本当かい!? その魔法教えてくれないか?」
初対面で開発した魔法を教えてくれとは……。【ファイアランス】でもギルドに金貨8000枚で売れたのだ。真人の持つ魔法が初級魔法に限られるとは言え、【ファイアランス】と同等かそれ以上に使い勝手の良い魔法が揃っている。そんな簡単に譲り渡す訳にもいかない。
「そこまで知ってるなら新魔法が生み出す経済効果も解りますよね? 親しい間柄ならともかく、そうでない人に簡単に譲れる訳がないでしょう」
「しかし……。
君は魔術師の需要について考えた事はあるかい? 上位属性に適正があればどこのパーティーでも引く手数多だ。水属性に適正がある者も癒し手としての需要は高い。火属性と風属性は支援と攻撃を両立する立ち回りさえすれば需要はあった。だけど、土属性に関してはほぼ支援一択の状態だったのさ」
土属性の初級魔法といえば、石を飛ばす【ストーンショット】、岩の壁を作る【ロックシェル】、地面を揺らす【アースウェーブ】くらいか。罠を作るなら生活魔法の【掘削】も使えなくはない。
だが、【ストーンショット】はコストは低いものの大きなダメージは期待できず、【アースウェーブ】に至ってはパーティーの邪魔になりやすい。投石でコツコツ支援するにしても、当てるところを間違えばこれも前衛の邪魔になる。中級以上になれば【ストーンニードル】という岩の槍で下から突き刺す魔法を覚えるようだが、初級しか習得していない魔術師は非常に立ち回りの難しい属性のようだ。
「土属性の他にも適正があれば受け入れてくれるパーティーはあったんだ。だけど、【ファイアランス】の登場でこのバランスは崩れてきているんだ。今や火属性に適正のある魔術師は、上位属性と同等以上の需要がある。でも、それ以外の属性に関しては…… 特に土属性の初級魔法しか使えない魔術師は、もう受け入れてくれるパーティーはほとんど無いんだ。土属性の魔術師が育つ環境が無くなってきてる」
言いたい事は解る。【ファイアランス】を売る時にも言われた事だが、火属性に適正がない魔術師を哀れに思わなくもない。自分で言うのもなんだが、それだけの価値がある魔法だ。
だが、それはそれだ。しかもこの男、意図してかしないでか土属性の魔術師全般を引き合いに出している。
「なるほど、魔術師の現状は判りました。僕が土属性の魔法をギルドに提供すれば、状況が多少は変わるかもしれません。ただ、そう簡単に決断できませんので、まずは検討させてもらいます」
「いや、えー……」
「まだ何か? まさかとは思いますが、僕の魔法を売る為に教えて欲しいという訳ではないのでしょう?」
「いや、断じて違う! 僕はただ……」
没落した貴族でもなければ売る必要もないだろう。だからその可能性は無いと思っていた。という事は貴族の矜持というやつだろうか。
「他の魔術師に対してアドバンテージが欲しいと? ですが、それこそ魔法を開発した人の物でしょう?」
「う……それは……」
アルベルトは宙に視線を漂わせて狼狽えている。どうやら当たりのようだ。それにしてもこの貴族様は、思いの外に気が長い。失礼な事を言ってる自覚はあるのだが、敵愾心の様なものをまるで感じない。
「そ、そうだ、ここは学院じゃないか。皆等しく学ぶためにある場所だぞ?」
「僕は教職員じゃありませんし、教えて頂ける魔法は一般に出回る魔法に限定されているでしょう」
頭が弱い子なのか。その言い草はないだろう。
「で、では僕の領地に君の為の屋敷を建てよう。それでどうだい?」
「僕には無用の長物です」
「おいおい、その辺にしとけよ?」
グランが口を挟むが見向きもしない。ずいぶん必死だが、それは彼が土属性の術者だからだろうか。であれば、それだけ辛酸を嘗めてきたという事でもある。
貴族となると周りからの評価も気にしなければならないだろう。それが執政には無関係であっても、優位性があるという事は重要なステータスになるのかもしれない。
「ではドレスやアクセサリーはどうだい? 1着で小さな屋敷が買える程の最高級品で、この国でも1,2を争う良質なものだぞ?」
「……」
真人はまだ座った状態だ。男女を制服だけで判断しようとすると、アルベルトの位置からではネクタイかリボンでしか判断できない。また間違えられたのだろう。
沈黙をどう勘違いしたのか、更に暴走が続く。
「そうだ! 僕に付き合ってくれないか? そうすれば何でも買ってあげるよ。父上に引き合わせても構わない。それで問題ないだろ?」
「「「は?」」」
何を言ってるのだ、このお坊ちゃんは。普通に解釈すれば、報酬の価値はこの坊ちゃんの言い値で、しかも後回しにするとしか受け取れない。それに伯爵閣下に会ったところで、コネができるかどうかというところか。今の所必要性を感じていない。
にも拘らず、言った本人は良い事を言ったと言わんばかりに満足気で、真人が肯定する返事を疑いもせずに待っている。これのどこが交渉なのだ?
一方カティアは、真人のやや冷めた思考と違う意図を感じていたようだ。目には敵意の熱が宿っており、既に臨戦態勢だ。
「貴方何を言ってるの? 最初からそれが目的だったんじゃないの?」
「君こそ何を言ってるんだい? 『女性』にとってこれ以上の条件があるのかい? 『彼女』が言い難そうにしていたから、僕が言ったんじゃないか」
つまり、土魔法の件が本心かは判らないが、真人を女性として、『家に迎え入れる事を前提に』父親に会わせるつもりのようだ。
普段ならその発言を真人が許すはずはない。だが、今は残念ながら…… 本当に『残念』な別の事が気になって仕方がない。
「(異世界人同士の美少年2人が夢のカップリング── 身分も世界も違う2人がここに結ばれるのねっ。すごいわ! 最高よっ!)」
瞳に星がきらめくエフェクトが見えんばかりに、すっかり興奮した結衣がBLな妄想で盛り上がっていた。しかも脳内に収まりきらずにダダ漏れだ。
アルベルトは男に求婚した事実と微妙な空気に耐えきれずにこそこそと逃げ出した。残された一同は、今の結衣にどう接したら良いのか判断できずに立ち尽くしている。
「(真人さんは受けなのかな。あ、意表を突いてリバーシブルもありよね!……きゃっ♪)」
(……、だれか止めてくれぇ……)
「貴方、あいつに誘惑でもされたの?」
これまた微妙な助け舟を出してくれたのは意外な事に第3者だった。
亜麻色の髪を肩のあたりで切りそろえた快活そうな女性。一見ヒューマンに似た容姿だが、背中には大きな翼がある。女性の顔をした鳥の魔物にハーピーという種族がいるが、それとは違い腕と翼が別々に存在した有翼人種だ。
「私はアリシア=クラエスよ。あいつは女癖が悪い事で有名なんだけど、大丈夫だった?」
(なるほど。周りの人から視線を感じたのは、そういう事情を知っての事だったか)
「困った癖を除けばそんなに悪い奴じゃないから安心して良いわ。多少家の権威を振り回す事はあっても、小心者だから下手な手出しはしてこないはずよ」
「お気遣いありがとうございます。もしかして貴方はは彼の幼馴染ですか?」
「そうよ。良くわかったわね」
「タイミングのいいフォローでしたからね。僕以外に彼への配慮が伺えました」
「まあ、そんなところね。ただ、勘違いして欲しくないんだけど、あいつと男女の仲になる事はありえないわ」
……ツンデレかと思ったがどうやら本当に違うようだ。
「そもそも好みでもないんだけど、あいつの家の事情も絡むのよ。
あいつの家は代々ヒューマンの血を引く人が当主になるんだけど、獣人との間の子は必ず獣人になる。だから本妻は必ずヒューマンと決まっているのよ。女性関係があんなに歪んだのはその辺りも関係してるのかもしれないわね」
この世界はヒューマンの数が圧倒的に少ない。その中から家柄も選んで娶ろうとするなら、相手は数える程に限定されてしまうだろう。選り好みなんて最初から無理な相談だ。必然的に、獣人の女性と付き合うという事は、本妻には絶対になりえない。
そう考えると結衣は、家柄はともかく優良物件だと思うから気を付けて欲しいのだが…… この子は異世界にトリップした先で、BLな世界にもトリップしたまま帰ってこない。本当に残念な子だな。
2時限目の魔法全般の受講を終え、昼食後は3時限目の戦闘全般。講堂は隣の部屋だった。妙に筋肉を強調する暑苦しい獅子の男……ジェイガンが担当教師のようだ。結衣は生産全般を受けているので、更にもう一つ隣の講堂だった。
戦闘全般では最初に戦闘技能の分類と鍛錬方法について簡単な説明を受けた。何故か筋肉の話に直結しやすいようだが……
戦闘技能は主に『格闘』『剣術』『槍術』『弓術』に分類され、魔法全般と同様更に細かく分かれるようだ。座学は最初だけで、後はグラウンド。天候が悪ければ室内設備……ようするに体育館で行うそうだ。
一通りの説明を受けた後、一同グラウンドへ移動した。この学院にジャージはないので、戦闘訓練や鍛冶炉を扱う場合も制服のままだ。エプロンくらいは着るようだが。
グラウンドには上位クラスの生徒もいた。それぞれ別の教職員から指導を受けている。
「全員2人1組でペアを組め! 早速格闘訓練を始めるぞ。最初は自分の実力を把握するだけだ。勝つ必要はない。それと急所だけは攻撃するな!」
「俺はマコトとだな!」
考える間もなくグランと組む事に……特に異存はないが。カティアとエナーシャも互いにペアを組んだようだ。他の生徒もそれぞれペアを組んで格闘訓練が始まった。
グランは剣術でもそうだが、格闘も変わらず猪突猛進だ。
グランの右拳を左手でいなし、2手目の右足の蹴りを右側に躱しながら左手の掌底で叩き上げる。体が崩れた所で軸足を払って転倒させる。
自棄になって突っ込んでくる動きから呼吸を外して右側に避け、グランが右手を振りかぶったところで踏み込んできた左足を払い、グランの右肩を少し押す。見事なヘッドスライディングを披露してくれた。
状況は剣術の相手をしている時と変わらない。変わるとすれば、今日はグランが転びっ放しだ。
「なんだよマコト! オメー格闘もいけるのかよ。格闘ならちったぁ食らいつけると思ったのによ!」
「当然だよグラン。剣術の修行に付き合ってる時と同じように避けてるだけだ」
動きを推測し、自分の間合いを確保しつつ相手の呼吸と体軸を外して移動する。基本的にはそれを繰り返しているだけだ。
「お前やるなあ。実力が開き過ぎちゃ話にならんだろ。俺が相手をしてやる」
声をかけてきたのは担当教師のジェイガンだった。いつも通りグランの相手をしたら目立ったか。もう少し演技でもしておくべきだったかもしれない。
「なんなら【獣化】を使っても構わんぞ? 最初に言った通り自分の実力を測る為のテストみたいなもんだからな」
(もっともらしい事言ってるが格闘技術の訓練でスペックの向上に意味は無いだろう。そもそも勝つ必要は無いって自分で言ったくせに……、挑発されてるのか?)
「いえ、僕の【獣化】は特殊なので、できれば使いたく「良いから使え!」……解りました」
既に名は広まり、目立ち始めている。積極的に披露する気はなかったが、ある程度は覚悟を決めるべきだろう。どんどん状況に流されている気がしなくもないが……
真人は一つため息をつき、覚悟を決めた。
「【九尾】!」
全身から僅かに力が抜けて、丹田に力が満ちる。そこから爆発した銀の光が螺旋状に収束しながら臀部へ移動し、後方へ飛び去ると同時に尻尾の周りに8本の銀色の帯を残した。尻尾本体も銀色の長い衣を纏っており、3mに届く合計9本の光の帯が風に揺らめいていた。
同時にどこか懐かしい全能感が全身を支配し、身体全体から神々しい輝きを放ちだす。
この瞬間グラウンド全体から音が消えた。上位クラスの者からも注目されているようだ。皆一様に息を飲み、輝きを放つ真人と9本の尻尾に魅入られていた。
「光の尻尾……なんて綺麗な……」
カティアが感嘆の声を漏らした事を皮切りに、グラウンド中がざわめきだした。ジェイガンは、そのざわめきを振り切るように大きく吼え、重心を落として構えた。
「【獣化】!」
ジェイガンは本能的に理解していた。この場において、挑戦者が教員である自分の方であることを。今の真人からは、戦闘技術を補って余りある能力が空気を伝って肌で感じる。【獣化】による能力向上を加えた所でどこまで迫れるかといったところだ。
だがそれでも、教員としてのプライドが負ける事を許さなかった。
「いくぞ!」
真人へのハンデの為に【獣化】しろと言ったはずだが、ジェイガンは自分も【獣化】してしまった。これは最早授業ではない気がする。進言して止めるか? だがそんな事は周りの空気が許さないだろう。
わざと負けたり、勝負を長引かせるのは危険だ。教員のプライドを傷つける可能性がある。とは言え簡単に勝つのもまずそうだ。
(なんでこんな面倒な事に……)
ジェイガンが地表をかすめるように走ってくる。グランよりも圧倒的に早い。だが、【九尾】を使った真人の知覚がそれを早いとは認識しなかった。
流れるような攻撃からは練度の高さを伺える。それに加えて一つ一つの攻撃精度が高く、速度もかなり早い。【九尾】を使っていなければ、真人の方が確実に押し負けていただろう。だが、今は一発たりとも当たる気がしない。
(少し演技が必要か……)
繰り出される打撃の弾幕を全て受け流し、一度大きく後ろに飛んで距離を作る。いかにも『大技を放つ予備動作』と取れるように両手を開いて軽く引き、腰を落とすように構える。西部開拓時代のガンマンのような、早打ちする直前の構えのように。
丹田を意識して息を吐き出し、力を下半身に溜めて構える。続いてジェイガンまでの距離を全力で詰めつつ両手の掌を胸の前で前方に向けて押し出した。全力で当てると内臓破裂は免れないので、軽く押す程度に留めた。だが、20mの距離を一瞬で詰める速度で当てたのだ。それがどの程度の衝撃かは、踏み込みの軸足を叩きつけたグラウンドが、大きく陥没した事からも推測できる。下手したら死んだかもしれない。
真人から掌底を受けたジェイガンは、30m以上転がってようやく止まった。既に意識は無いようで、起き上がる気配はない。
(まずい、やり過ぎた……)
真人は【九尾】を解除し、急いでジェイガンの元へ向かう。ジェイガンの息はあるが、負傷の程度は判らない。あれだけ派手に転がれば負傷は腹部だけに留まらないだろう。
念の為【ヒーリングライト】で回復したところで、ジェイガンが跳ね上がるように起き上がった。真人の手を握りしめ、目覚めの第一声。
「結婚してくれ!」
迷わずもう一度眠ってもらう事にした。
その日、真人は少し変わった夢を見た。
視界を覆う闇の深い場所。周りは全く見渡せないが、一か所だけ赤黒い光で照らされたところに何かが佇んでいる。
全身真っ黒な光沢のある体は、隆起した分厚い筋肉に覆われている。頭から太い角が伸びており、赤く光る双眸は見ているだけで気圧される程の威圧感を放っている。全身から吹き出ている纏わり付くような黒いオーラは、心臓を鷲掴みされたかのような寒気と不快感を覚えた。
『汝は神の使いか?』
悪魔を思わせるそれは、ゆったりとした…… しかし腹の底に響く不快な声でそう告げた。
『まあ良い。我の邪魔となる者は排除するまで。いずれまみえようぞ……』
突如視界を覆う闇が質量を持ったかのように重くなり、真人の意識はゆっくりと締め出された。
拙い駄文ですが、お待たせしていたらごめんなさい。
仕事が忙しくなってきたので更新が遅れてます。・゜・(ノД`)・゜・。