表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

第四話:悲劇の序章(後編)

「っ、なに、してんだよ……?」


真っ先にそんなことを口にしていた。


翔輝の目の前に広がる光景、それは大切な妹の琴音が、あの夢に出てきた少女、時雨怜梨に殺されかけている光景だった。


「あ……もう戻って来ちゃったんだ……」


怜梨が、さも残念そうな顔をしながら言ってくる。


「なんだよ、それ……一体どうゆうことなんだよ……ッ!」


状況を把握できていない翔輝は、ただ怜梨に問うことしかできなかった。


「…『私たち』の恋路を邪魔する三上君の妹さんを消そうとしてるんだよ?」


ハイライトの消えた目をしながら怜梨が答える。


「……ッ!

なんだよそれ、意味わかんねぇよ……ッ!」


翔輝が再び訊ねるが、怜梨はそれに耳を貸す様子を見せずに、琴音に向けていたダガーナイフを振り被った。


が、その時、三人の近くを遊園地帰りと思われるカップルが通りかかった。


「翔、にーぢゃん……っ!だ、たすげて……ッ!」


泣きながら琴音は翔輝に向けて叫んだ。


「琴音ッ!」


「ち……!」


怜梨が少し狼狽えた隙に、翔輝は琴音を抱きかかえ、怜梨から距離をとった。


「おにーぢゃん……っ!おにーぢゃん……ッ!」

「……怖かったな、ごめんな。もう大丈夫だぞ……」


翔輝は涙で顔をぐしゃぐしゃにしている琴音の頭をやさしく撫でたあと、怜梨に向けて鋭い視線を送った。


「……そんな目で見ないでよ、私はただ『私たち』の恋路を邪魔する」


怜梨が続けようとしたところで、翔輝が叫んだ。


「ふざけんなよッ!そんな理由で俺の大切な妹を、琴音を殺されてたまるか……ッ!」


「……っ、そんな理由……?」


「あぁ、そんな理由だよ!おまえさっき『私たち』って言ったよな?もしかしておまえ、俺のこと好きなのか……?」


「……っ、そんなの、当たり前じゃんか」


翔輝の問いに怜梨は頬を赤らめ答える。


「っ、そうか……なら琴音は関係ねぇじゃねぇかッ!」


「それは……っ、だってその子も三上君のこと好きなんだよ!?」


「ッ!……ああ、そうか、そうだよな。俺だって琴音のことが好きだ!愛してる!だが、怜梨、俺はおまえのことは好きじゃない。だからこれ以上俺と琴音に関わるな……ッ!」


翔輝が告白(?)してしまった。


「ふぇ……ッ!?翔…にーちゃん……!?」


琴音が顔を真っ赤にしながら訊いてくる。


「っ、な、なんだ、琴音……」

「……ううん……なんでもない……」

「そうか…じゃあ帰るか」


翔輝がそう言ったところで、さっきから黙り込んでいた怜梨が口を開いてきた。


「…私、諦めないから…どんなことをしても、三上君に振り向いてもらうから……っ!」


「…さっき言っただろ…もう俺たちに関わるな、って」


翔輝は怜梨に背中を向けたまま少し首を捻らせ、冷たい声音でそう言った。


「…………三上君はそんなこと言わない、私の知ってる三上君はもっと優しいんだもん……ッ!

だから、絶対諦めないから」


怜梨の言葉に翔輝は振り向くことはなく、琴音と共に去っていった。


「…三上…琴音……必ず、殺す…」


一人取り残された怜梨は去り行く二人の背中を見ながらそう呟くのであった。





そして現在。


「翔にーちゃん……」

「お、おう…早く食べないと冷めちまうぞ」

「……うんっ!」


あんなことが起きた後だ、琴音が元通りになるまではもう少し時間が掛かるかもしれない。


翔輝はそう心中で呟き、琴音とともにご飯を食べ始めたのであった。

今回は琴音が精神的にダメージを受けましたが、次回は本当の犠牲者を出す予定です。


次回:惨劇


お楽しみに

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ