序章:プロローグ
「……で起きた殺人事件について、警察は情報を求めており、犯人は未だに逃走中とのことです」
「物騒だねー、近くで殺人事件が起きるなんてさ」
自宅のリビングで朝食をとる青年。
名前は月宮俊。
「俊も出来るだけ気を付けてね」
「巻き込まれたらただじゃ済まないからな……」
「もう、母さんと父さんは心配しすぎだってばー」
「巻き込まれてからじゃ遅いんだからね?」
「そうだぞ」
「はいはい、わかったから。ちゃんと気を付けるよ」
俊が両親に返したところで、自宅のインターホンが鳴った。
「あら、ゆきちゃん来たみたいよ」
「え?もう来たの……?」
少し驚いた表情を作った俊だったが……。
「もう来たの?じゃないだろ。おまえの彼女が迎えに来てくれたんだぞ?早く行ってやりなさい」
「はいはい……。ごちそうさま!行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「ん、頑張れよ」
俊は両親にそう伝え、玄関のへと向かった。
「毎日毎日ご苦労様……と。おはよう、ゆき!」
玄関の扉を開けたその先には、にっこり微笑む少女の姿があった。
「うん!おはよう、俊!」
背は俊より少し小さく、長い黒髪の少女。
名前は月喰ゆき。
俊の幼なじみにして、彼女である。
「さ、学校行こっか」
「今日も頑張ろうね!」
俊とゆきは手を繋ぎながら、通っている高校へと向かう。
「ねね?あたしたち、付き合ってもうすぐ……もうすぐ?」
「急にどうしたの?僕たち、この前付き合って二年の記念デートしたばっかりじゃん」
不意に訊ねられた俊は表情を少し和らげながらゆきに答えた。
「うぇっ!?……あ、そう言えばそうだったね……えへへ」
俊が答えると、ゆきは少しだけ頬を桜色に染め、照れ笑いでごまかした。
「っ……それは反則だよ……!」
「えっ……?なんで……?」
「いや、そんなに可愛いことされるとさ……ね?」
俊も少しだけ顔を赤くしながら、ゆきの頭をぽんぽん、と軽く叩いてやった。
すると、ゆきはさらに顔を赤くし、そのまま俯いてしまった。
「あはは……(あれー?僕なんか変なことしちゃったかな?)」
苦笑しつつ、心中でそう呟く俊であった。
そのまま少し良い雰囲気のまま、二人は通っている高校に到着した。
周りには同じ制服を着た生徒がかなり見える。
そして、二人が通る度に、その生徒達は羨みの視線を二人に送っていた。
「いやー……何度経験しても慣れないね、これ」
「……もう、何千回も経験してるんだから、慣れてよ~」
俊が額に汗を流しながら言うと、ゆきが俊の腕に飛びついてきた。
「っ!お、おいっ!なにやってんだよ!?」
「えへへ~!毎日一回のサービスタイムだよん!」
俊の腕に抱きつきながら、ゆきが屈託のない笑顔で言ってきた。
「一回って……今まで一回で済んだこと、あったっけ……?」
俊が言うと、ゆきが何故かドヤ顔で『ない!』と返してきた。
そして、何故だろうか、ゆきに飛びつかれたとき、周りの視線が一瞬だけ冷たく感じた。
「何故にドヤ顔なんだよ……」
「そこは、気分だよ!」
ゆきに抱きつかれ、歩きにくいまま、俊は自分のクラスへと向かうのであった。