火炎
天王山 山頂付近
京が燃えている。
そんな現実が俺たちの心を痛めつけてボロボロにする。
燃えている京を隊士達はただ、ただ、泣きそうな顔をしながら、呆然と立ち尽くし息を震わせる。
いつだってそうだ。
こいつらを苦しめるのは、
自分の死じゃない。
大切な、友や仲間、家族の死だ。
「お前ら!!早急に引き返すぞ!!!」
・・・あぁ・・・駄目だ。
こいつら、・・・我を忘れてやがる・・・。
こんな時に俺がこいつらを引っ張ってやらねぇでどうする?
俺は・・・泣く子も黙る新選組の鬼副長だろうがよ。
「ぼけっとすんな!!早くしろ!!!
お前らは京を守る新選組だろうが!!!」
『・・・あ・・・は・・はい!!!!』
そうだ。
どこまででもついてこい。
お前らの胸ん中に誠の文字がある以上、新選組の誠の旗が、俺たちの道標となる。
迷いやしねぇさ。
なんてったって、俺たちは真っ直ぐ進むだけだからな。
「十番組は鷹司邸に行ってくれ!!
まだ残党が残ってるかもしれねぇ!!」
「了解だ。」
「頼んだ。原田。」
俺たちは二手に分かれた。
残党狩りは任せ、俺たちはとにかく火消しに回らなきゃならねぇ。
走って京に戻る中、ちらちらと小さく目に入る赤い炎が俺の昔の記憶を呼び起こした。
この炎、どこかで見たことがある。
・・・・・・あぁ・・・そうだった。
あいつの目か。
あいつと初めて試合をしたとき、俺はあいつの目にこの炎を見た。
その時、俺は恐れた。
当時12歳の女がそれだけ強い意志と決意をもって、剣を手にしていることを。
あれから7年。
あいつはもう19歳か。
19ならもう、旦那も見つけて子もいる歳か。
お前は、幸せにやってんのか?
それとも・・・お前はまだ戦ってんのか?
あの炎を目に宿して。
なぁ・・・春花。