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京舞う桜と  作者: Haruka
6/18

道場破り旅の始まり


 


 

 俺は、過去を打ち明けてからというもの、

晋作達とみるみる仲良くなった。

・・・仲良くなったというか、従わせたというか・・・。


過去を打ち明けてから数日たった、ある日の事じゃ。



「春花!試合だっ!!」


晋作の試合好きには困っていたものよ。

今はもう、めんどくさがりのだらけ者になってしもうたがの。



「良いですよ。怪我しても良いなら。」


「受けてたつぜ!!」






 そういう事で、試合となったわけじゃが・・・・。


「竹刀でいいのか?お前の得意は槍だろ?」


「長物でこちらが有利になるのは気に食いませんので。」


晋作は眉間に皺を寄せ、大きくため息を吐いた。




「ここが戦場だったらどうすんだ?」


「残念ですが、ここは戦場ではない故、あなたに本気をだす必要もありません。」


このとき、晋作は、上手く挑発に乗ってくれてなぁ。

鋭い目で俺を睨んでおった。

その姿、まるで野犬の如く。

くくっ・・・野犬と言えば、怒るかのう?





試合は、庭で行った。

勿論、小五郎と玄瑞も来ていて。

俺を酷く心配しておった。 もう実力は知っておったであろうにな。




 あそこはなかなか音の響くところでのう。

竹刀のぶつかり合う心地よい音が大きく響くわけじゃが、

実際は手応えが無く、心地が悪かったものよ。


晋作は弱すぎた。

俺より5歳も年上の男じゃというのに、力もなく、技もなく。

勢いだけの男じゃった。


じゃが、そんな晋作の剣にも良いところはあった。

晋作の剣は、読みずらいのよ。

刀の行く方向が全くといって見当つかぬ。

厄介な奴じゃとおもうたわ。

こやつが、力と技を身につけたらと思うと嫌な予感しかせぬ。



 



 バシッと音をたて、晋作の竹刀は俺によってはらわれ、床へ転がった。

負けたというのに、晋作は不意に笑い出して嬉しそうに手を差し出しおった。


俺は、この手がどうしたのかとじっと見つめておったものじゃが・・・。


「しらねぇのか? しぇいくはんどっていって、異国の挨拶なんだと。」


そんなもの知らぬわ。

今はもう、異人と会えば自然にしてしまうくらい習慣付いているのじゃが。



「それより!!お前って女のくせにすっげぇ強いんだな!

何と言っても力がある!」


俺は普通であって、晋作が弱いだけじゃ。


「実戦経験が豊富ですからね。

戦えなければ、遊郭からでることすら叶わなかったというのもありますね。」



 玄瑞は優しい奴でのう。

戦って、ひとを斬ることに慣れてしまった俺を悲しい目で見おった。


「春花さん、貴方は女子なのですよ!?

もう、自ら戦わずとも、私がお守りします。・・・だから!」


・・・だから、これ以上戦わないでくれ・・・か。

何故か、玄瑞はこんなにも血に濡れた俺を、一人の女子として見てくれたのう。

つい、笑みが漏れたわ。

嬉しゅうてな。


「ありがとうございます。・・・でも良いのですよ。

私は、もともと槍や刀が好きでやっているのですから。

それに、ずっと守られているのは、私の気持ちに反します。

一緒に戦わせて下さい。」



皆、驚いておったな。 特に小五郎は。


「こんなにも肝の据わった女子はなかなかいないな。

いいじゃないか。 春花は強いし、いざとなれば助けてやればいい。 だろ?玄瑞。」


小五郎はニヤリと笑って、俺をちらりと見たのだが、

俺には何故こやつがわらっているのかと思うてな。



「・・・あぁ・・・まぁ、そうでしょうか・・・。」


「そうだよ。」


玄瑞は眉を寄せてもやもやとしておった。

まだ、納得できていなかったのじゃな。

そんなところも、嬉しかったのじゃが。






 それからというもの、俺は、晋作を育て上げるため、基礎を身体にたたき込んでから

まずは近くの道場から巡って、一番強い者を出せと言っては、試合を申し込んだ。


俺には、心配してくれる親がいないから、長州をでては、

晋作ら3人と共に、薩摩や長崎の道場に押し入ったものよ。


晋作は、思いもよらず、めきめきと強くなってな。

俺と度々試合をすれば、いつの間にか俺と互角に渡り合える様になっておった。

俺が育てた甲斐もあったというものよ。



晋作の訓練のための、長旅はきつかったものじゃが、楽しかったのう。あの頃は。







ー喜兵衛は再びこの世で、瞼を起こした。ー




 ・・・おんやまあ。

まだ、生きとったんか。

はは・・・懐かしい夢じゃのう。

晋作達がおって、女子じゃったころの俺がおって。

あ~あ。 こんな夢を見さされては、余計に会いたくなってしまうじゃろうが。

・・・はぁ。・・・そういえば、江戸へ道場破りに行ったときには、

あの道場でよく世話になったな。

俺が、江戸へ行くと言ったときも、このような穏やかな日和であったか。




あやつらは・・・元気にやっとるじゃろうか?

病気なんぞ、しとらぬじゃろうか。

































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