ご飯と噛み付き
初投稿です。過度な期待はしないで下さい。
ここはとある学校のとある教室。
その中で、机に突っ伏している女生徒が一人。
セミロングの細い髪。整った顔立ちを大きな瞳。
普通に見れば、かなりの美少女であろう。
しかしその表情は、どこか不機嫌そうに頬を膨らましていた。
「・・・おなかすいたあああああああああああああああああああ!!」
直後、大音量で教室内に腹の音が鳴り響く。
不機嫌の理由は明確だった・・・。
「・・・あーー、高橋。もう直ぐで昼休みだから我慢しろ・・・というか授業中に女生徒が叫ぶ台詞じゃないだろ、それ・・・。」
担当教師も、思わずツッこんだ。
それにつられ、教室のいたるところからクスクスと言う笑い声が聴こえてきた。
だが彼女は、そんな事を気にする様子も微塵も見せず、再び席についた。
高橋望。
この学校で有名な変わり者である。
「・・・と言う訳で思わず叫んじゃったのですよ。」
そう言って望は目の前にあるおにぎりに齧り付いた。
「・・・なんと言うか、とりあえず衝動が押さえられなくなっても叫ぶのは止めなさい。」
どこと無く・・・と言うかどう見ても呆れた様子の男子がそう答えた。
井口真・・・望とは幼稚園前からの付き合いで、いわゆる一つの幼なじみと言う奴だ。
だが真の返答が気に入らなかったのか、望は眉をひそめて叫んだ。
「何を言ってんの!食事は大切なんだよまーくん!」
「それはそうなんだろうけど・・・と言うかまーくんいうの止めい。」
そう言って真は軽いチョップを望に当てた。
「いーじゃんまーくん。可愛くて。」
「高校生にもなってその呼ばれ方をする俺の身にもなれ・・・。」
そう言って真は、溜息を一つ吐いた。
「ダメだよまーくん。溜息をすると幸せが逃げちゃうんだよ。」
「原因が何を言うか。」
「ほら、おにぎり食べなよ。美味しいもの食べると幸せになるよ。」
「いや、それ俺が作ったやつなんだけど・・・。」
両手でおにぎりを持ちながら・・・と言う今時漫画やアニメでしか見れないような光景を見ながら真は思考する。
・・・一体全体どうしてこんなに食べて太らないんだろう、と。
朝からご飯を三杯たいらげて、その上
そう考えた直後、左手から鋭い痛みが走った。
「っ!」
何かと思い視線を落とすと、
・・・望が噛み付いていた。
「・・・何してんの?」
「ひまふぁにふぁふぃふふぇいふぁほほはんはふぇふぁふぇふょ(訳:今何か失礼なこと考えたでしょ)?」
何故わかった・・・と内心で思うが、真は考えを放棄する。
今すぐ謝らなければ、自分の指が一本程無くなってしまいそうな予感がしたからだ。
・・・というか、目の前に居る幼なじみからどす黒いオーラが放たれているのを見れば、誰だって先ず謝るだろう。
普段温厚な分、切れた時のこいつは恐ろしい・・・と真は経験則でわかっているのだ。
「ごめんなさい。」
「覚えておけ。女性の年齢と体重を気にする奴は処刑されても文句は言えない。」
色々とツッコミ所満載だったし、キャラまで変わってるじゃん・・・と思ったが、やはり恐ろしくて声に出せなかった。
「ごめんなさい。」
真はもう一度謝る。
「許さない。」
だが残念ながら、許してもらえなかった。
「・・・じゃ、どうしたら許してくれる?」
「誠意が見たいなぁ~。」
「・・・何でもしますから許してください。」
直後。
望の瞳が怪しく光った。
・・・こいつ、これが狙いだったか・・・。
真がそう思った時にはもう遅かった。
「じゃあねぇ・・・・。」
望は真に何か耳打ちする。
聞き終わった後の真の顔は、明らかに焦ったような表情になっていた。
「・・・マジか。」
「マジだよ。大マジ。」
「断ったら?」
・・・カプッ。(←無言で真の手に噛み付いた。)
「OK。俺の指が無くなるってわけな。」
「・・・ふぇも、ふぁあふんふぉふひっふぇふぉひひほうふぁふぉふぇ?(訳:でも、まーくんの指って美味しそうだよね)」
そう言うと、望は真の指を舐め始めた。
ゾクゾクとした感覚が真の背中に走った。
「うわっ!わかった!りょーかい!」
焦りながらそう言うと、望は指を離すとにこやかな笑みを真に向けた。
その表情に、真の顔が少し朱が指す。
「えへへ~。じゃ、は・や・く☆」
「・・・ったく・・・。」
真は頭を掻くと、手元のおにぎりを一つ掴み、一口。
その後、望に唇を重ねた。
・・・賢明な読者様ならわかったであろうが・・・望のお願いとは「昼食を口移しで食べたい」と言うももだった。
真は自身が含んだおにぎりを、望の口に流し込む。
・・・まあ、これまた賢明な方なら気付きそうではあるが・・・そこまでで終わるような訳が無かった。
「ん~☆」
「ん!?むぐっ!?」
望は真の口の中に、自身の舌を入れた。
「んーー!んーーー!」
「んん・・・はん・・・・。」
真は抵抗するが、望が彼の顔をしっかりと持っているので逃げられない。
「・・ぷはぁ・・・。」
「・・・・・・・。」
やがて唇が離れると、真は何かを言いたそうな表情になるが、
「えへへ~。ご馳走様でした~。」
望の無邪気な笑顔を見ていると、何を言っても無駄と判断し、言葉を飲み込んだ。
「・・・仲が良いのは結構だが・・・。」
教壇の方から、渋い声が聴こえてきた。
「お前等ここが学校って事、忘れてないか?」
そう、お忘れの方も居るかも知れないが、今はまだ学校の昼休みなのだ。
高橋望と井口真・・・。
学校でも有名な「変人バカップル」である。
※この後二人はたっぷり説教されました。
感想をいただけるとありがたいです。グダグダになった感が否めない・・・!