イケメンゴリラ兄弟の海を越えた絆
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
グローバル化や多様性の尊重が叫ばれる昨今では、海外からの留学生を大学のキャンパス内で見かけるのは何の珍しい事でもないね。
私こと蒲生希望が在籍校である堺県立大学で特に仲良くしているゼミ友の子も、そんな留学生の一人なんだ。
王美竜さんという漢民族の女の子は台湾島の中華民国人の多くがそうであるように日本文化に詳しい哈日族で、もしかしたら日本人である私以上の知識と理解があるんじゃないかな。
そんな親日家で勉強熱心な王美竜さんだから、大学の休みを利用した小旅行では目を輝かせて喜んでいてね。
和歌山城の天守閣に行けば眼下に広がる市街地の写真を満遍なく撮影するし、県立の博物館や美術館に入館すればお土産の缶バッジを熱心に吟味するし。
特に市内の酒蔵では杜氏さんの解説を一言も聞き漏らすまいとメモを取ったり地酒の試飲を全種類試みたりと、その熱意と意気込みには恐れ入ったよ。
そんな感じだから、和歌山との県境に程近い泉南郡の遊園地はツアー行程の中でも異彩を放っていたんだ。
「しかし美竜さんも物好きだね、一度わざわざ和歌山から出て泉南郡まで引き返すなんて。確かにこの遊園地にはイルカとかもいるけど、動物園なら和歌山城公園にも無料のがあるし、遊園地なら和歌山市にもポルトヨーロッパがあるのに…」
呆れ混じりに私がそう呟くと、美竜さんは次のように笑って応じたんだ。
「蒲生さんがそう思うのも無理はないかもね。だけど、その動物園の動物こそが重要なんだよ。」
この台湾人留学生のゼミ友の目的が明らかになったのは、園内の動物園エリアに到着した時だったんだ。
「ジャジャ〜ン!どうかな、蒲生さん!彼こそがイケメンゴリラの大志君だよ!」
嬉々とした様子のゼミ友が指差した先にいる雄ゴリラは、確かに目鼻立ちの整った凛々しい顔立ちをしていた。
私も彼の顔は、朝の情報番組の動物コーナーで何度か見た事があるよ。
だけど美竜さんが来園を熱望したのは、イケメンゴリラ見たさの単なるミーハー精神ともまた少し違っていたみたいで…
「私の地元の台南市にもゴリラを育てている動物園があるんだけど、そこのゴリラの弟が動物園同士の交流も兼ねて日本に送られてね。お〜い、大志く〜ん!君のお兄さんの大雄君も台湾で元気にやってるから、安心してよ〜!」
そうして掲げた美竜さんのスマホには、檻の向こうにいる園内の人気者と非常に良く似たイケメンゴリラの画像が表示されていたんだ。
すると何とも意外な出来事が起きたんだよ。
「あっ、こっち見た!凄い、手を振ってる!」
さっきまで悠然と食べていた柿には目もくれず、ゆったりとした動きで右手を振るイケメンゴリラの大志君。
その視線の先には、スマホの液晶画面の中で穏やかな表情を浮かべる兄ゴリラの姿があったんだ。
「流石は日本で育った大志君だね、オヤツも和歌山の富有柿だもん。その点で言うとお兄さんの大雄君は、レンブとかマンゴーみたいな台湾フルーツが大好きでね。子供の時はお小遣いが少なかったから、妹の珠竜と一緒に愚痴ったもんだよ。『あんなに沢山の果物を剉冰のトッピングにしたら、幾らするんだろう…』ってね。あの子も今は中学生だからお小遣いも増えているはずだし、果物のトッピングも多少は出来ているのかな。」
何とも懐かしそうに笑う美竜さんの横顔を見て、私はハッと気付かされたんだ。
もしかしたら美竜さんは、日本と台湾とで別々に暮らすイケメンゴリラの兄弟に自分達姉妹を重ね合わせているんじゃないかって。
だから私としては、今回の旅行を美竜さんに存分に満喫して欲しいんだ。
美竜さんが妹の珠竜ちゃんに、「元気にやってるから、安心してよ。」って胸を張って言えるように。
台湾の哈日族である美竜さんが親愛の念を抱いてくれている日本人として、そして何より一人のゼミ友としてね。




