6.冴えた提案
体調不良で今回短くなっております…。申し訳ございません。
「よぉ、見ない顔だなぁ」
下品な声と共にガリヨンへ話しかけたのは墓に座る兵士と似た格好をした男であった。
がリヨンこそ高貴な生まれでも何でもないもと傭兵の今は流刑罪人ではあるがそんなガリヨンでも感じるほどの下品な兵士は下品な声と動きでガリヨンに近づき上から下へガリヨンを値踏みする。
そんな中、ガリヨンが束ねて担いでいたオオカミの毛皮を見るとにやりと兵士は笑いガリヨンに声をかける。
「貴様、なかなか良い毛皮を持っているな」
「はぁ、お褒めいただき光栄です」
「ほぉ、少しは礼儀を知っているじゃないか」
ガリヨンの下った態度に気をよくしたのかにやにやと笑いながら毛皮をよこせと言わんばかりにちょいちょいと手招く
そんな様子を見て、厄介なものに絡まれたと内心ため息をつきながらガリヨンは毛皮を差し出す。
「ふむ、鞣しもよい、それに質もいい…。これは領主様に献上するにはもってこいだ」
「そりゃ光栄で」
「ん、ご苦労。もう行っていいぞ」
「…は?」
ガリヨンの毛皮を値踏みした兵士は手にした物品を持ったままガリヨンを追い払うように手を掃うとガリヨンから興味を失ったようにそっぽを向き始た。
その様子に困惑したガリヨンは思わず間の抜けた声を上げ固まってしまった。
自分が今何を言われたのか全く分からない。
そうして固まってる間に、いつの間にも兵士はどんどんどこかに行こうと歩いて行ってしまっていた。
「ちょ、ちょっと、何を…?!」
そういって追いかけ兵士の肩をつかむといきなり兵士は「無礼者め!」と怒鳴りつけると剣を抜きガリヨンへとその切っ先を受けた。
その瞬間、一瞬腰のマチェットを抜き去りそうになるが、今ここで殺してしまっては面倒が起きると判断したガリヨンは慌てた平民の振りでやり過ごすことに決め「うわぁ!」と如何にもなリアクションと共にしりもちをついて見せるとその様子に満足した兵士は高圧的に笑い勝ち誇ったかのように
「ふん、貴様のような下賤なものが栄えある領主様直属の兵士の体に触れることなど許さない…が、今の私は気分がいいからな。見逃してやろう」
そう言うと兵士は剣を腰に収め高らかに笑いながら毛皮ごと背を向けて去って行ってしまったのだった…。
◆ ◇ ◆ ◇
苛立ちを抑えながらいつの間にか兵士がいなくなった墓へ依頼の荷物を備え岐路についている途中に我慢ができず、何か獣か野盗でも八つ当たりに狩りに出ようかと村を後にし、しばらく街道を進んていたガリヨンは件の兵士と墓に座っていた兵士の二人が道の真ん中で雑談しているのを見かけてしまった。
あまりかかわりたくもなかったためかさっと身を隠し、別の道を探すか…。茂みを突っ切ってしまおうか。などと考えていると風の流れで兵士達の話している内容がガリヨンの耳へ聞こえてきていた。
「いやぁ、いいもの手に入れたじゃないか」
「ほんと、間抜けそうな面の男から奪ったはいいが、まさかこんな値段で売れるとは…」
「あぁ。…しっかし、『領主様への貢ぎ物にする!』なんてよく言ったもんだよ…渡すつもりもないくせに…」
「はっはっは、そう言っておけば逆らうものなんていないだろう?全く領主様様さ、この金で酒と女買って遊ぼうじゃないか!」
鐘の入った袋を持ち上げ、がははは…。と下品な笑い声をあげる兵士を前に、ガリヨンは脳みその中で何かが沸き立つような感覚を覚えた。
そして巡るのは始めてこの地へ来たときの桟橋での仕打ちと兵士の顔、そしてトゥーレ村で偉そうに歩く兵士の顔、墓に座る兵士の敬意を欠いた態度。そして、剣を向けられた怒り。
気が付くとガリヨンは長柄のスコップを携え駆け出していた。
駆け出したガリヨンが降ったスコップが叩きつけられた兜から、鐘の音とも思えるほどの…その中身からは到底考えつかないような美しい音と共に兵士の兜は人とは思えぬ膂力で叩きつけられたことによりスコップと共にひしゃげ、毛皮をを奪った兵士は頭から気色の悪い液体を垂れ流しながら倒れこむ。
おそらく脳が兜のつぶされているのであろう。
倒れこみ『ヴーーー、ヴーーー』と血の混じったピンク色の泡を吹きながら唸り続けており、そんな様子を目の前で見たもうひとりの兵士は、何が起きたのか全く分からないまま茫然と立ち尽くしていた。
白昼夢でも見ているのか?
それが兵士の最初の思考であり、突然現れた男にさっきまで談笑していた仕事仲間が殺された…。別に親しい人間でもなかったし、職業柄人の死見慣れて入るが…それでも、それが現実であることを認識するのに兵士は時間を有した。
そして兵士が我に返ったときに目に入ったのは死んだ兵士の剣を持ちこちらに迫ってくる男の姿だった…。
腐っても兵士、そんな男の剣を住んでのところで受けると激しい金属同士のぶつかり合う音と共に兵士は体ごとはじかれてしまう。それもそのはず、腐っても、とは言ったがそれでも腐っているのだ、日々鍛錬を怠り、相手にするといえば貧乏な野盗数人。村人を脅して楽に生きていた兵士などは、ガリヨンにとってはオオカミよりも相手がしやすい相手であろう。
倒れ伏した兵士はガリヨンの剣を受け、しびれた手を見るとそこに剣はなく、慌てて周囲を見渡すと己の剣は遠くに投げ出され地面に突き刺さってしまっていた。
そんな姿を見たガリヨンは無感情そうに静かに兵士へと近づき、先ほどの剣のぶつかり合いで折れてしまったのか、短くなった剣を構える…。兵士はただ生き残るために「金ならやる!!命だけは!」そう叫んでいたがそんな声も聞こえていないのか、ガリヨンは兵士の顔へまっすぐに剣を突き立てる。
「金ならお前殺した後にしっかり回収するから気にすんじゃねぇよ」
そうつぶやいたガリヨンの声を聴く者は一人もいなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
(……ああああ、やっちまったぁぁぁぁぁぁ!!!?!)
すっかり戦利品を回収し、頭が冷えたところでふと自分の起こした惨劇を眺めたガリヨンは頭の中で叫び声をあげた。
眼下に広がるは兵士の死体2体…。細かく言えば頭と拉げた兜が一体化して割れていつの間にやらピクリとも動かなくなった兵士と顔面に剣が突き刺さり脳天ごと貫かれ絶命した兵士の死体が二つ。
これが獣や野盗ならば放って置いても辺境領地に広がる日常風景なのだが…こと兵士に至ってはそうもいかない、それを理解しているガリヨンはだからこそ、この死体をどうすればいいのかと頭を抱えてしまっているのが現状である。
「あらら~あらら、やってしまいましたね~」
間延びした、力の抜けるような声がふと、ガリヨンの背後から聞こえた。
「いやはやいやはや、一応、心配になってきてみましたが…。まさかこうなりましたか…」
「ミモザ…だったよな」
「えぇ、えぇ!よく覚えていてくださいました…ひへへ…」
「……」
嬉しそうににやけるミモザをよそにガリヨンは見られてしまった。という恐怖とどうやってごまかすか。という思考で顔をしかませていた。
しかしミモザはそんなガリヨンの様子を見て満足そうにうなずくと「気にしないでください」と話し始めた。
「まぁまぁ…怖い顔をしないでください。こうなるかなぁ…というのは予想済みですから…」
「なんだと?」
「ほらほら、そんな顔しないでってば…。ガリヨンさんのことは実は私、結構前から存じておりまして…ね?狂騒さん」
狂騒…。ガリヨンが傭兵時代に呼ばれていた呼び名である。
その名で呼ばれたガリヨンはすっと表情を消しミモザをまっすぐ見つめる。それは特に何を言うわけではなかったが異様な圧を発していた。
そんなガリヨンを気にする様子もなくミモザは話を続ける
「まぁ…まぁ、いまはガリヨンさんをどうこうする気はございませんよ…それよりも、コレ片付けちゃいましょうよ。なんと私、スコップ持ってきてるんですよお。」
「スコップなら俺も…」
そういってちらりと見たそこには兵士の頭を殴った衝撃でひしゃげ、おおよそスコップとしての余生を送る事は到底叶わない形に変形したスコップであった。
「ほらほら、こっちの死体は私持ちますのでぇ...ガリヨンさんはそっちの死体を森の奥まで運んでくださぁい」
「…あぁ、わかった」
進みが遅いのは自覚しております…。
それでも何か光るものを感じましたら是非、気長にお付き合いいただけると幸いです。
最後まで閲覧いただきありがとうございました
ご意見、感想、評価などございましたら是非よろしくお願いいたします




