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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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終撃 シオンの棺


「コトハはどう思った?」


 シオンが森に入っても、アラートは消えない。

 オートロックを外す意味は、まぁない。

 遮蔽物が多いから、撃つ回数は制限されるけどね。


「血が沸いて肉が踊って濡れちゃった以外で?」

「そりゃいい、この戦闘が終わったらエッチしよう」

「そうね。でも今ので、ロゼがどう思ったかは分かったわ」

「だろうね。それで君は?」

「同じよ」


 森に入ってから、コトハはシオンを丁寧に操縦している。

 太い木にぶち当たって、バックするのは時間の無駄だし隙になるから。


「だよね。世界最強の戦車乗りって、あんなもんなの?」

「強いは強いけど、脅威かと聞かれると、微妙なところね」


「そう。伝説に尾ひれが付いたか」僕が言う。「彼が衰えているのか」


「もしくは、私たちが強いのかも。自分たちで認識している以上に」


 ベゲモートの砲弾が飛んでくるが、特に問題なく躱す。

 向こうも丁寧な操縦に切り替えているので、やっぱり距離は縮まっていない。


「まぁ、どうであれ、これなら勝てるね」

「撃破してからイキってね?」


 僕が調子に乗って言ったもんだから、コトハは少し冷たく言った。

 僕は相変わらず、手動で照準を合わせているのだけど、遮蔽物のせいで難しい。


「もう少し距離を縮めない?」と僕。


「いいわよ。速度を落とすわ。でも、砲弾躱せなくなるから、防壁使うわよ?」

「オッケー」


 コトハがシオンの速度を下げた。

 一気に下げず、さり気なく、遮蔽物のせいで仕方なく速度を落とした、って感じで。

 誘っているとは気付かないレベル。


 やっぱコトハの操縦はかなり上手。

 僕は防壁貫通榴弾を選択し、深く息を吸って、それから止める。

 集中して狙う。

 木々の間を縫うように、射線が見えた。


「ここだっ!」


 戦車砲を発射。

 思わず声が出てしまうほど、素敵な射線だった。

 コトハが魔導防壁を展開。

 遅れてベゲモートも砲撃。

 ベゲモートが魔導防壁を展開。


 相手の動きが止まったので、僕はまた照準を合わせる。

 こっちの防壁貫通弾がベゲモートの防壁を突破して着弾。

 コトハが防壁を解除してシオンを急発進させる。

 ベゲモートの弾丸が地面を抉った。

 防壁貫通徹甲弾か。


「1回やってみたかったのよね、防壁張ったと見せかけて回避するってやつ」


 コトハが楽しそうに言った。


「いや、魔力が……」


 無駄ではないけど、消費がね?

 あと、僕の照準がまた狂った。

 さてベゲモートはダメージを受けているようだが、どの程度なのか分からない。

 ステルス性能が高いせいで、コンピュータによる損傷状況の推測も上手く働いていない。


 でも割とすぐに目視で確認できた。

 ベゲモートはもう主砲を使えない。

 砲身の半分以上がぶっ壊れている。


「狙ったの?」コトハが言う。「敵の砲身」


「もちろん」


 僕には見えた。

 敵の砲身に榴弾を当てる射線が。

 アラートが止んで、ベゲモートから通信が入った。


「よぉ、やるじゃねぇかクソガキども」


「あなたの負けよ」コトハが言う。「まぁ、機銃だけで戦うって言うなら、やってもいいけれど」


「テメェらにやる気がねぇなら、これで仕舞いだ」イラリオンが言う。「俺の死に場所は戦場で、棺桶は戦車だが、別に今すぐ死にたいってわけでもねぇ」


「分かるよ」僕が言う。「まだ物足りないんだろう? もっと戦いたいんだろう? またいつか、どこかの戦場で会おう。僕らは戦い続けるから、イラリオンさんも戦い続けていれば、きっと会える」


「そいつはいい。感動の再会を期待してるぜ」イラリオンが笑う。「そんで、そん時はぶち殺す」


「こっちもそうするわ」とコトハ。


「末恐ろしいガキどもだぜ」イラリオンが言う。「10年後には、戦車乗りでテメェらの名前を知らない奴はいねぇだろうぜ」


「褒めてくれてどうも」僕が言う。「それじゃあ約束通り、ロストしてね」


「おう。約束は守る。行け」


 通信が切れた。

 その後は本当に、一切の追跡がなかった。

 夜が明けてからニュースを確認すると、僕らはテロリスト呼ばわりされていた。


「ただの仇討ちなのに……」

「なんでもいいでしょ? とりあえず偽装してまた夜に動きましょう」

「そうだね。キスしていい?」


 ニュースではレスカ帝国の偉い人が警備の不備を謝罪していた。

 それから、全力で追跡していると説明。

 イラリオンの力で1回はロストしてくれたけど、次に見つかったらヤバいな。

 あんな戦闘好きの司令官に当たるなんて幸運なこと、連続ではないだろうし。


「キスだけでいいの?」


 コトハが僕のシートに来て、僕の膝の上に乗った。

 向かい合わせの形で、僕はコトハを抱き締める。


「やれるだけ、やりたいな」

「いいわ」


 コトハが僕にキスをして。

 唇が少し乾いていたけど、柔らかくて気持ちよかった。


「でもその前に質問」コトハが言う。「私と戦車、どっちが好き?」


「戦車に乗った君」

「ありがとう。私も戦車に乗ったロゼが好きよ」

「じゃあ結婚?」

「そうね。それもいいわ。どうせ私たち、死ぬまで一緒でしょ?」

「そして死ぬ時も一緒だよ。僕らはだって、シオンに乗り続けるだろう?」

「そうね」


 もう一度キスをしたら、ジャミが小さく吠えた。



 約1年と2ヶ月後。


「要人の救出任務だテメェら!」


 シオンのディスプレイに映ったラッセル・ガイルが言った。

 傭兵団『雪月花』の団長で、今の僕らの上司。

 まぁ直接の上司ってわけじゃない。


 ラッセルは団長で、僕らは団員。

 僕とコトハは、今回が雪月花での初任務となる。

 この1年近く、僕らは死ぬような訓練を受けていた。


 ニア共和国がどれほどぬるま湯だったのか分からされ、時々は本当に死ぬんじゃないかとさえ思った。

 雪月花がなぜ強いのか、それがよく分かる凄まじい訓練だった。


 まぁそのおかげで、僕らはまず魔力量がかなり伸びた。

 ちなみに、ジャミは団員みんなで飼っている。

 だから今も誰かが世話をしているはずだ。


「この任務を失敗するわけにはいかねぇ。彼を絶対に生かして連れて来るんだ。いいな? お前ら全員が死んでも、彼だけは生かせ。彼が世界に残っている限り、第四次世界大戦の火種になってくれる。素晴らしいだろう? 大きな戦争がしたいだろう?」


 たぶん今、これを聞いている他の連中は盛り上がっているのだろう。

 雪月花じゃ、だいたいみんなラッセルが大好きなのだ。

 僕らも好きだよ。

 彼は僕らみたいなイカレた戦闘好きには、最高の上司だ。


「我々は過去3度の世界大戦に参加したし、いわゆる皆勤賞ってやつだ」ラッセルが楽しそうに言う。「世界大戦はいいぞテメェら! 未経験の者にはぜひ体験させてやりてぇ!」


 ほら、完全にこの人、頭がいっちゃってる。

 だから好きなんだけどね。


「さぁ征け雪月花の猟犬ども! 敵は強くはないが、弱くもないぞ! 最強傭兵団の本領を見せてやれ!」


 ラッセルが言うと、大型輸送機のハッチが開く。

 シオンを含む小型の戦闘車両が、この輸送機には積まれている。

 ちなみに、輸送機は全部で8機。

 今は空の上。


「降下作戦は楽しいぞぉ!」


 ラッセルが笑顔で言って、そしてディスプレイから消える。

 車両が順番にハッチから空へとダイブする。


「戦車に乗ったまま空から落とされるなんてね」コトハが言う。「雪月花って本当、面白いわね」


「本当にね」


 僕らの順番が訪れて、コトハがシオンを進めて躊躇なく空へとダイブ。

 浮遊感が半端ない。

 シートベルトって素晴らしいな!

 自動でパラシュートが開き、降下速度が低下。

 眼下は荒野。


 隠れられる岩山とかも割とある感じ。

 要人がどこにいるのか、僕らは知らない。

 救出自体は別の部隊がやる。

 僕らはこの辺を完全に制圧して、どこからでも要人と救出部隊が逃げられるようにするのがお仕事。


 遠くに敵の車両が展開しているのが見えた。

 対空ミサイルなんかも飛び交っている。

 雪月花の戦闘機もガンガン撃ってるし、すでに戦闘が始まっている。

 シオンが地面に着地し、パラシュートを切り離す。


「さぁ、近代化改修を受けた新シオンの初戦闘だね!」

「そうね、楽しみましょう!」


 願えるなら永遠に。

 あるいは。

 このシオンという棺で朽ちるまで。




これで『シオンの棺』は完結です!

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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