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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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31/33

31撃目 跳ねるみたいに消し飛んで


 ドローンの操作はコトハに任せて、僕は照準に集中。

 ドローンは快調に森の中を進む。

 森の入り口で大きく上昇して、基地を映し出す。


 ナイトヴィジョンなので、夜でも結構、明るく見える。

 ちなみに外を映しているARディスプレイもナイトヴィジョンを通しているので、割と明るかったりする。


 僕はすぐにパネルを操作して敵ベゲモートに照準を合わせる。

 警告音が出て、ドローンが機銃攻撃を受けた。

 ドローンからの映像が途切れたが、すでに照準は合っている。

 僕は戦車砲を発射。


 反動、炸裂音。

 ああ、気持ちいい。

 空薬莢の排出、リロード。

 2発目を発射。


 同時に、コトハがシオンを発進させる。

 森を西に向けて突き進む。

 凄まじい数の警告がディスプレイを埋め尽くす。

 アラートの音で耳がイカレるかと思った。


 ジャミが酷くビックリしている。

 あんまりビックリして、僕の膝の上に飛び乗ってきた。

 邪魔だけど、まぁ操作はできる。


「これ、高機動ミサイルシステムだわっ!」


 コトハが叫んだ。

 合計6発のミサイルが降り注ぐ。

 嘘だろ、戦車1両に使う量じゃない。

 1発回避、2発回避、3発目は僕が手動で機銃を操作して撃ち落とした。

 4発目を撃ち落としながら、対空防護システムをオンラインに。


 とてもじゃないが、手動で対応できる物量じゃない。

 5発目をコトハが躱し、6発目を対空防護システムが破壊。

 ジャミングは全く意味をなしていない。

 向こうのミサイルがたぶん、高価でいいやつなのだろう。


「てゆーかさぁ! あいつら全弾、撃ってきやがったっ!」


 高機動ミサイルシステムは、ニアでは装輪式自走多連装ミサイル砲と呼んでいる。

 最新のそれを持っているのは先進国だけなので、ニアもラクークも性能がいくらか劣る似たような兵器しか持っていない。


 でもまぁ、とりあえず最新のやつも情報としては知っている。

 搭載できるミサイル数は6発で、軍事衛星とリンクしているので、衛星で見られている限り狙われるという恐ろしい兵器。


 発射ボタンさえ押せば、あとは勝手に追尾してくれるという優れもの。

 よって、パイロットも1人だけ。

 運転席に乗ったまま、準備から発射まで可能。

 装填も同伴している整備の連中がやるので、降りなくて良い。


「さすがレスカだわ! お高い兵器もバンバン使うのね!」

「これ最新の高機動ミサイルシステムだよね? 再装填って何分ぐらいだっけ?」

「1分よ」

「涙出てきた」

「だから止めておけば良かったのに」


 コトハはどこか楽しそうに言った。

 実は僕も楽しい。

 生きるか、あるいは死ぬか。

 戦車で戦って、戦車で逃げて、そして戦車で死ぬのだ、僕らは。


 そんなことを考えながら、スマートデバイスのニュースに目をやる。

 敵のベゲモートは撃破したようだ。

 僕が撃った2発とも命中したみたい。

 ニュース映像を見る限り、ベゲモートは大破しているので、装甲は薄いってことだね。


「ちなみに」コトハが言う。「射程は約100キロって話だわ」

「わぁお。ってことは、僕らは何時間も狙われ続けるわけだ」


 森の中を進んでいる分、速度が遅い。

 そんな話をしていると早速、次の6発が飛んで来た。

 アラートがけたたましく鳴り響く。


「ここが大森林だったら、衛星からは見えないのにね!」と僕。

「大森林だったら戦車で乗り入れないわ!」とコトハ。


 そりゃそうだ、と僕が納得したところで、対空防護システムが1発目のミサイルを破壊。

 さすが雪月花のシステム、古くてもなんか性能いい気がする。

 2発目、3発目と続けて破壊。

 凄まじい速度で残弾数が減っていく。


 ディスプレイにカウンターがあって、まるで跳ねるみたいに数字が消し飛んでいく。

 4発目を破壊したところで、残弾が0に。

 それはコトハにも見えているので、急ハンドルで5発目を回避。


 6発目は近くの大きな木に命中して爆発。

 衝撃波が届いてシオンが揺れる。

 モニタに映った車両状況を確認したけど、特にダメージはない。


「さぁ頑張ってコトハ、弾切れだよ」

「これだから対空防護システムってダメなのよ」

「本当にねぇ」


 言いながら、僕はジャミを撫でた。

 ジャミは状況に慣れたのか、僕の膝から降りて床で丸まった。

 うん、いい根性してる。

 しばらく森を進んだが、次のミサイルは飛んでこなかった。


「諦めたのかしら?」

「だといいけど、たぶん違うんじゃない?」


 僕が言った瞬間、攻撃ヘリ2機をオートサーチシステムで捉えた。


「レスカのヘリね」コトハが楽しそうに言う。「落とせるかしら?」


「落とすさ」


 僕はオートロックを使用。

 砲身は自動でヘリを追うが、木々が邪魔なので発射のタイミングが大事だ。

 ヘリがバラけて上昇。


 仰角が足りなくて砲身がヘリを追いきれない。

 敵ヘリAがロケットを連続発射。

 アラートではなくコーションが鳴った。


「あら?」


 不思議そうに言いながら、コトハがシオンの向きを変える。

 ロケットは木や地面に命中。

 敵ヘリBもロケットを発射。

 やっぱりアラートではなくコーション。

 コトハが軽く躱し、ロケットは森を抉った。


「これ、僕らを足止めしてる?」

「そうみたいね。撃破が目的じゃないわね」


 会話中もロケットが2発ずつぐらい飛んでくる。

 かなり絶妙な場所に飛んでくるので、シオンは頻繁に向きを変えて回避するハメに。

 ただ、ガチで狙われていないので、躱すの自体は簡単。

 問題は、進路がズレることと、時間のロスが半端ないってこと。


「考えられる可能性は?」と僕。

「生きて捕まえる方針に変更したんでしょ?」とコトハ。


「そして拷問のオンパレードって?」

「準加盟国のレスカはしないでしょ?」


「そうだった」僕が言う。「尋問だね、尋問」


「私たちが何のために撃ったのか、知りたい人がいるのかもね」

「え? グラディウスの仇討ちだけど?」

「それ言って信じてくれるといいわね」


 コトハが微妙な口調で言った。

 僕もとっても微妙な心境だよ。

 事実だし、聞かれたら答えてもいいけど、信じてくれるかは相当怪しい。


「川を渡るわ」


 コトハが言ったので、ナビゲーションを確認。

 確かに目の前に川が流れている。

 丸裸になるけど、この様子だと特に問題はない。

 敵ヘリは相変わらず、絶妙にこっちの足を遅らせるロケットを撃ち続けている。


 でもそろそろ弾切れだろう。

 そんなことを考えていると、森が切れて川原に出た。

 シオンが砂利を巻き上げながら進み、川に突入。

 まぁ、戦車は川ぐらいじゃ止まらない。


 特にシオンは全天候、全地形対応型。

 世界中、どこでも戦争したいという凶気の産物。

 川を渡っている間、敵ヘリはロケットを撃たなかった。

 さすがに川の中では機動性が下がるので、ロケットを躱せない可能性があった。


「やっぱり撃破する気はないのね」とコトハ。

「6位が僕らに会いたいのかな?」と僕。


「どうかしら? それなら直接、生身で突っ込んで来そうだけれど」


 今の時点でそれがない、ということは6位は動かないということ。

 それは幸いだね。


「怖いねぇ、この兵器万能の時代に、個人の戦闘能力を追求してる奴は」

「そうね、っと、またヌルいロケットだわ」


 コトハがロケットを躱す。

 ナビゲーションを確認すると、予定していた進路から大幅にズレている。


「これ、僕ら追い込まれてない?」

「そうみたいね」


 ナビゲーションの先には、開けた地形がある。

 敵ヘリが新たに2機、飛来。

 最初にいた2機が帰投。

 弾切れで交代したのだろう。


 新たなヘリたちが、さっきの連中と同じように絶妙なロケットを撃った。

 コトハ風に言うと、ヌルいロケット。

 でも躱さないわけには、いかないよねぇ。

 まぁ、2、3発なら当たっても大丈夫だろうけど、できれば当たりたくない。


「さてロゼ」コトハが笑う。「この開けた地形に何があるのかしら?」


「戦車じゃない?」

「そうかもね。だったら楽しいわ」

「本当にね」


 と、レスカ帝国から通信が入った。

 僕が即座にそれを受ける。

 ディスプレイに30代後半ぐらいのオッサンが映った。


 かなり顔が怖い。

 見ただけで歴戦の勇士とかそういう人だと分かる。

 そして僕は、この顔を知っている。


「ガキか」オッサンが言う。「だが良い腕だ。雪月花の者か?」


「そうよ、って言いたいけれど、まだ違うわ」


 雪月花を騙るのはアウトだ。

 雪月花じゃないのに雪月花だと言って何かすると、本物の雪月花に殺される。


「そうか。まぁ何でもいい」


 オッサンがニヤッと笑う。

 それは酷く薄暗い笑い方で。

 僕はそれをよく知っている。


「戦車対決としゃれ込もうや」


 僕やコトハと同じ笑い方をしたオッサン――レスカ帝国陸軍最強の戦車乗り、イラリオン・ゼレンキンが言った。


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