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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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30/33

30撃目 たとえ誰が敵でも僕は撃つ


 僕らはパワーユニットをいくつかと、武器をいくつか調達した。

 途中、ジャミが外に出たけど、雨が嫌だったのかすぐにシオンの中に戻った。


「あ、そうだ」僕が言う。「防壁貫通弾も補充した方がいいね」


「ああ、そうだわね」コトハが言う。「忘れるところだったわ」


 シオンに積み込まれている防壁貫通弾は2発。

 徹甲弾と榴弾を1発ずつだ。

 なにせ、防壁貫通弾は値段が高い。

 ニア共和国でも、各車両に徹甲弾と榴弾を2発ずつの、計4発しか積んでいない。


 まぁ、魔導戦車自体それほど多くないので、問題ない。

 少なくとも、この辺りの国では。

 僕らは周囲の車両の弾薬庫を漁った。

 弾丸は割と重いので、運ぶのが大変だった。


「世界には、魔導戦車ばかりの国もあるのよね」とコトハが言った。


「絶滅危惧国家、魔導主義国だっけ?」

「そうよ。時代に逆行するように、魔導だけを重視した国。いつか戦ってみたいわね」

「だね。たくさんの魔導戦車と戦ってみたいね」


 それから、僕らはまた無言で作業を続けた。

 雨も降っているし、体力がゴリゴリと削られていく。

 そもそも、シオンの弾丸は満載に近いのでいくつか抜く必要があった。

 シオンの弾丸搭載数は40発。


 1発はすでに撃ったので、残り39発。

 最終的に、6発を防壁貫通弾にした。

 残り34発は通常の弾丸。

 作業を終えた僕らはシオンに乗り込み、雨衣を脱いでシートに座った。


「疲れたな……」

「そうね……」


 僕らは携行食を食べてから、シオンを発進させた。

 目的地は最初に僕がコトハを捕まえたラクークの基地付近。

 ニアを押し返したのなら、あそこを取り戻しているはず。


 であるならば、そこに例のベゲモートもいる可能性が高い。

 焼けた森を抜けて、僕のグラディウスの墓場を通り超す。

 さよならグラディウス。

 君はいい相棒だった。


「そういえばコトハ」

「ん?」

「どうやって雪月花の領内まで行く予定?」

「とりあえずは戦車で国境を越えて、見つからないように海がある国まで行くわ」

「そこからは?」

「一旦、戦車を隠してから普通に船に乗って雪月花領へ、って感じかしらね」

「シオンはあとで雪月花の力を借りて回収する?」

「その予定よ」


 僕らにシオンを捨てるという選択肢はない。

 今はこの子が僕らの相棒なのだから。

 壊れるまでずっと乗り続ける。

 少なくとも、僕はそう思っている。


「さて、夜明け前だわね」


 コトハはシオンを森に入れる。

 焼けていない森だ。

 この森を抜ければ、ラクークの基地付近に出る。


「いつの間にか、雨も止んでいるね。偽装をやり直そう」


 僕らは森の中で、再びシオンを偽装。

 朝日が昇った頃、僕らはシオンの中で順番に眠った。


 そこから長距離射撃でベゲモートを撃破する。

 そして逃げる。

 簡単だ。


「ねぇロゼ」

「なに?」

「シオンとグラディウスと、どっちが好き?」

「どっちも好きだよ」

「選ぶなら?」

「シオンかな」


 君と2人でいられるから。



 夕方、僕らはラクークの基地付近に到達。

 森からは出ていない。


「なんだか懐かしいわね」とコトハ。


「そうだね。もうずっと昔のことみたいに感じる」


 望遠で見たラクークの基地には、多くの人員が配置されている。

 僕らは森の中なので、それほど詳しく見えるわけじゃない。

 草木が邪魔だし距離もあるしで、大雑把にしか分からない。

 でもそれで十分だった。


 レスカの戦車部隊もそこに駐留しているのが見えたから。

 コトハがスマートデバイスでニュースを流す。

 国連の調停が今夜行われるらしい。

 しかも、今、僕らの目の前の基地で。


「まずいわね。撃ったら国連を敵に回すわ」

「しかも警備が厳重で、これ以上近寄ったらたぶん見つかる」


 想定より遠い。

 でも撃てなくはない。

 観測用ドローンを飛ばすつもりだけど、そいつがそもそも撃ち落とされそう。


「なんでこの基地でやるのよ……」

「さぁね。偉い人たちの考えなんて僕らには分からないさ」

「どうする? グラディウスの仇討ちは諦める?」

「まさか! 僕は撃つよ。たとえ国連が敵に回っても撃つ」

「えー? じゃあ私は降りてもいい?」


 クスクス、と笑いながらコトハが言った。


「ダメ。君を失う気はない」

「我が儘なのね」


 コトハはどこか楽しそうだった。


「国連が敵になるって言ってもさ」僕が言う。「彼らは最低限の護衛しか連れて来ないって言うか、なんなら調停者1人しか来なかったりするでしょ?」


「バカね。その調停者1人がアホほど強いからじゃないの」コトハがスマートデバイスの音量を上げた。「ほら、序列6位が来るそうよ」


 国連の調停者たちは戦闘能力順に1位から10位までの10人と決まっている。


「6位だったら、戦車ぐらい1人で破壊できそうだね」

「できるでしょうね。まぁでも、ここの警備はレスカが請け負っているみたいだし、基本的にはレスカが相手だわね」

「それなら逃げ切れると思う。ナパーム使うと思う?」

「どうかしら? うちの抗議がどれだけ効いたかによるわね」

「あとは国連の意思次第ってところかな?」

「そうね。環境破壊は国連の望むところじゃないもの」

「じゃあ、6位が来るまで待とう。レスカは6位の目の前で森を焼いたりしないだろう。準加盟国だし」


 僕らはぼんやりと日が暮れるのを待った。

 特に何をするでもなく、淡々と時間だけが流れた。

 やがて6位の乗ったヘリが基地に到着し、スマートデバイスのニュースが盛り上がった。

 ニュースの映像から、ベゲモートの居場所が分かったので、報道陣に拍手を送りたい気分だよ。

 僕は照準を合わせようと砲身を動かす。

 頭の中でだいたいの弾道を計算してから、シオンの計算システムを使って微調整。


「ドローン飛ばさなくていいの?」とコトハ。


「飛ばすよ。でもたぶん、すぐ撃ち落とされるから、今のうちにだいたい合わせておこうと思ってね」


 ドローンの映像とリンクさせて、最終調整を行う。

 今の状態なら、ドローンが見つかっても序列6位の調停者を狙っていると勘違いしてくれそうなんだよね。


「全防御はしてないでしょ」コトハが言う。「今だと、対空防護システムの対象は基地でしょうし」


「だろうね。つまり、車両は守ってないってことだ」


 運が向いている。

 まぁ、あくまで攻撃の運だけ。


「ドローンもすぐには落とされないんじゃないの、って意味なのだけど」


「だといいけど、相手はニアでもラクークでもなくレスカだからねぇ」僕が言う。「ミサイルやロケットだけじゃなく、ドローン防御もしてると思うけどね」


「それはそうかもね」コトハが言う。「所属不明のドローンは発見次第撃破、って命令が出ているかもしれないわね」


「だからまぁ、照準を合わせる時間はあまりない」


「1発で当てなさいよ」コトハが言う。「調整し直して2発目を撃つ余裕はないわよ、この状況だと」


「調整せずに連射するなら、3発は撃てる」


 弾丸は防壁貫通榴弾を選択。


「グラディウスじゃないのよ?」コトハが呆れた風に言う。「発射速度的に2発が限度よ。連射するとしてもね」


 敵にこっちの位置がバレて、反撃が来るまでの時間。

 それが戦車砲2発分の時間ってことだ。


「だから2発撃ったら逃げるわ」コトハが言う。「当たったかどうかはニュースで確認しなさい」


「それは元からそのつもり」


 他に確認する方法がない。

 このシオンはラクークの物で、ニアの衛星には繋がらないし。

 そしてラクークの衛星はボロが一機だけ。

 この基地を見ているかも分からないしね。


「さて、始まるわね、調停が」


 言ってから、コトハは僕にスマートデバイスを渡した。

 ニュースで中の様子を映している。

 外はもう映してくれないかな?


 仕方ない。

 僕はパネルを操作して、ドローンを出撃させた。

 さぁ、グラディウスの仇討ちだ!

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