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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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26/33

26撃目 シオンという名の棺


 コトハが手続きをしている間、僕は取調室みたいなところに押し込まれた。

 テレビがあるので見ていたら、捕虜交換の様子が映っていた。

 僕は固いパイプ椅子に座っている。


「さすがレスカ帝国。国連の準加盟だけあるぜ、連絡係の兄ちゃんもそう思うだろ?」


 僕の監視をしている分隊長が言った。

 分隊長は壁にもたれて立っている。

 分隊長は24歳で、顔が怖い。

 正直、老けているので30歳ぐらいかと思った。


 でも本人が24だと言ったので、そうなのだろう。

 階級は伍長で本来の僕と同じ。

 年齢が事実なら、彼はもうすぐ兵役が終わる。

 まぁ戦時中なので、離脱できるかは微妙なところだけど。


「そうだね。ちゃんとした人質交換なんて、ニアとラクークの間では起こりえない」

「起こりえないって、連絡係はみんな、そんな固い喋り方すんのか?」


 分隊長は電子煙草を吸いながら言った。


「どうかな? 僕も別に固くないよ。まぁ、望むなら伍長殿とか分隊長殿とか言って敬語使ってもいいけど?」

「必要ねぇよ。俺はこんなクソどうでもいい施設の防護隊だぞ? 偉くねぇってことだ」


 まぁそうだろうね。

 重要な拠点は能力の高い部隊が守る。


「それ吸わせてくれない?」


 僕は電子煙草を指さして言った。

「ほらよ」と分隊長が電子煙草を差し出す。 

 僕はそれを受け取って、ゆっくりと吸った。

 ああ、葉っぱと比べるとマイルドだけど割と美味いなこれ。

 何度か吸って、分隊長に返した。


「なぁ兄ちゃん、お前も魔法使いか?」

「そうだよ。だからこそ、シーリナ軍曹は僕を連れてる」

「へぇ。どんな魔法が使えるんだ?」

「コップある?」


 僕が質問すると、分隊長は小さなキッチンに置いてあるコップを持って来た。

 僕はコップを受け取って、その中に水を生成した。


「すっげ! 水作ったのか!」


 分隊長は明るい表情で言った。

 僕は水を飲んで、コップを返す。

 分隊長がコップを再びキッチンに置く。


「動態保存されている車両を見たいんだけど、いいかな?」

「うん? ああ。別に構わないが、古いのしかないぞ?」

「いいさ。テレビにも飽きたし、行こう」


 僕が立ち上がると、分隊長が先に部屋を出た。



 分隊長は巨大な格納庫に僕を案内した。

 そこでは退役した車両たちが、所狭しと並んでいた。

 戦車に偵察車、珍しいところだと化学防護車。

 僕と分隊長はゆっくり歩いて、車両たちを順番に見て回った。


 そして。

 ある車両の前で立ち止まる。

 数人の整備士がその車両をいじくっている。

 その中で一番偉そうな爺さんが僕に気付き、寄ってきた。


「お、工場長」分隊長が言う。「どうだそいつ、動きそうか?」


「動くに決まっておろうが!」工場長と呼ばれた爺さんが怒った風に言う。「すごい軍曹が乗るって言うからのぉ、チェックしとんじゃ」


「ちなみに僕が相方」と僕。


「戦車に乗れる珍しい連絡係って話じゃのぉ」


 工場長が僕を舐めるように見た。


「戦力にはならないけどね」僕が言う。「あくまで、合流するまでの飾りみたいなもんさ。第4世代魔導戦車だから、魔法使いが2人必要だろう?」


「最悪、単独機動システムがあるじゃろうが」工場長が笑う。「片方が死んでしまった時のためにのぉ」


「パワーユニットを一時的に使用するんだよね?」

「ほう、知っとるか」

「まぁね。でもそれだと、時間制限が生まれる。魔力を持った人間を乗せた方が遙かに効率がいい」


 魔導戦車は魔力機関で動いている。

 もちろん動力は魔力。

 よって、パワーユニットでは効率が悪く、あまり長い時間動かせないのだ。

 普通の戦車なら、パワーユニット一個で1日は動き回れるのに。


「その通りじゃ。まぁワシとしては」工場長が再び笑った。「この戦車が、世界最高のこいつが、また動くところが見れるだけで、感無量ってなもんじゃ」


 工場長が世界最高と呼んだ戦車に、僕は視線を移した。

 なんて美しいのだろう。

 軽量コンパクトな設計は、世界中どこでも戦争できるように、というイカレた思想から。

 当時の技術の粋を集めた、雪月花製の魔導戦車『シオン』。

 まさに傭兵のための戦車。


 ああ、触れたい。

 その装甲に触れたい!

 その砲身を磨きたい!

 そのキャタピラに潰されたい!

 なんて、なんて美しいのだろう!


 僕はシオンの見た目が大好きだ。

 昔から好きだった。

 僕が生まれる前に設計されたとは思えない造形美。

 世界で最初の第4世代魔導戦車。


 最初の1両から考えると、約40年前の車両。

 1度近代化改修が入っていて、この車両は近代化改修後の車両である。

 だから正確には『シオン改』にあたる。

 雑誌によっては『後期シオン』なんて呼ぶことも。


「美しいじゃろう?」と工場長。


 僕はコクコクと頷いた。


「お前さん、見る目があるのぉ!」


「つってもよぉ」分隊長が言う。「第5世代が出た瞬間に、ゴミになったんだろ?」


「ゴミなわけがあるかボケ!」工場長が怒鳴る。「性能は大差ないわい! ただ、1人で動かせる方がどう考えても都合が良いじゃろ? だから速攻で置き換えられたってだけじゃわい」


「おやっさん!」整備士の1人が言う。「整備及び弾薬搭載、完了です! いつでも出せます!」


「おっしゃ、あとは軍曹待ちじゃな」


 工場長が両手の拳を叩きつけた。

 爺さんなのに血気盛んなことだ。

 まぁ、気持ちは分かる。

 シオンが動くのだ。


 戦車ファンの人気投票、圧倒的1位。

 それが雪月花製魔導戦車シオン。

 世界大戦大好き傭兵団の、超実戦的戦車。

 ああ、早く乗りたいっ!

 コトハまだかなぁ!


「集まってるわね」


 背後からコトハの声が聞こえたので、振り返る。

 コトハと門前を守っていた女が立っていた。

 僕はコトハを抱き締めたい衝動に駆られたけど、我慢した。

 今の僕は連絡係だし。


「おぉ、あんたが軍曹か」工場長が言う。「若くて可愛いのぉ」


「それはどうも。整備はどう?」

「完璧じゃい!」


 工場長がガッツポーズ。


「しかしながら」女が言う。「待機命令が出ていまして……」


「そりゃまた、どうしてだ?」と分隊長。


「知らないわ」コトハが言う。「事情は上に話したし、どうせ許可されるでしょ? 試し乗りしていいかしら?」


 コトハはチラリと僕を見た。

 あ、これ、たぶんヤバい。

 何がヤバいのかは分からないけれど。

 でも試し乗りの状態で、そのまま逃げる気だ。


 コトハの声音や表情から、それが分かった。

 そのぐらいには、僕とコトハの仲は深まっている。

 それに、僕は割とコトハをよく観察しているから。


「いやいや」分隊長が言う。「待機命令だろ? 頼むから待機しててくれ」


「いいじゃない別に。敷地からは出ないわ」コトハが言う。「馴染ませておきたいのよ。クレーストとは勝手が違うし、相方と息も合わせたいし」


「そりゃ、そうかもしれねぇけど」分隊長が困った風に言う。「命令には逆らえねぇ。あんたが祖国を思って早く戦場に戻りたいってのは分かるが、命令は命令だ」


「お堅いのね」コトハが言う。「戦場では臨機応変に対応できない奴から死んでいくわ」


 コトハの声があまりにも冷えていて、その瞳があまりにも薄暗かったので、分隊長がビクッとなった。


「まぁまぁ、いいんでないかのぉ」工場長が笑顔で言う。「敷地内の試乗ぐらい良かろう?」


「あんたは戦車が動くところが見たいだけだろうが」


 分隊長が引きつった表情で言った。


「あ、連絡入りました」


 女がデバイスで通話を開始する。

 コトハが僕を見て、視線で言う。


(戦車に乗れ、早く!)


 たぶんこんな感じ。

 僕はソッと動いて、シオンに近寄る。

 みんな女の方を見ているので、特に問題はない。

 僕は戦車の装甲を登って、そこで分隊長が気付く。


「おい! 勝手に乗ってんじゃねぇぞ!」


 分隊長が銃を向けるが、僕は気にせずハッチを開けた。


「動くなボケ! 撃たせるな!」と分隊長。


「軍曹!」女が言う。「その連絡係は偽物です! 現在、所在が不明になっている連絡係はいないと上が言っています!」


 ああ、クソ。

 僕が調べられたのか。

 僕って言うか、連絡係が。

 コトハが僕を見る。


 僕はシオンに乗り込む。

 分隊長が射撃。

 僕はハッチを閉める。

 どうしよう?


 落ち着け。

 まずは動力をオンラインにする。

 そして周囲の様子が全面ARディスプレイに映し出される。

 ここまでは1人分の魔力で問題ない。

 ええっと、単独機動システムを使うには、確か非常コードを入力するんだったかな?  

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