表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

25撃目 シーリナ軍曹


 翌日。

 僕らはある家の屋根からスクラップ置き場を見ていた。

 ちなみに、この家を漁って見つけた双眼鏡を使用している。


「ねぇコトハ、置き場ってゆーか、割と工場だよね?」

「そうね。私も実際に見たことなかったのよね。あるのは知ってたけど……」


 なるほどね。

 軍で教わった時にスクラップ置き場と教わったから、そのまま言ったってことか。


「普通に門前に見張りいるし、分隊規模で護衛してる?」


 分隊規模は約10人。

 思ったより盗めなさそうで、僕はちょっと苦笑い。


「たぶん、この規模の施設なら」コトハが言う。「3分隊で駐屯してるわね。24時間、交代制でずっと守ってるはずよ」


 そして3分隊で1つの小隊として機能する。


「絶望的だね」


 スクラップ工場は割と高い壁で囲われている。

 壁の上には有刺鉄線。

 入り口は僕らが見ている面と、たぶん逆側にもあると思う。


「まぁそうね。うちの国って、逃亡したら死刑だから、たぶん3分隊全部残ってるわ」

「現役30人前後を相手にするのは、さすがに無理だね」


 ギャングどもとは違う。

 訓練された施設防護隊なのだ。

 ニア共和国では施設防衛隊だけど、ラクークでもそう呼ぶのかな?

 ふとそんなことを思ったけど、どうでもいいか。


「レスカ帝国が出てこなければ、順次撤退命令が出たかもしれないけれど」コトハが言う。「古い兵器しかないし、重要な拠点でもないから……」


「まぁスクラップ工場だしね」と僕。


「それでも、動態保存されている車両もここにあるらしいから、それを狙って来たのよね」

「そうだね」

「仕方ないわねぇ」


 コトハはゴロンと屋根に転がった。

 ちなみに家は箱みたいな形をしているので、屋根は水平だ。


「でもコトハ、想定してたでしょ? スクラップ置き場……工場が防護されてること」

「ええ。ちょっと規模が大きくて驚いただけよ」

「それは僕もそう。もっと小規模な施設だと思ってた」


 防護も民間の警備員とかがいるのかな、ぐらいの規模を僕は想定していた。

 普通に軍が守ってるとは思ってなかった。

 とりあえず、僕はコトハの隣に寝転がった。

 空が青くて綺麗だ。

 普通の人間なら、戦車を盗むのなんて止めて、このまま逃げるんだろうなぁ。


「まぁ作戦は変更しないわ。たぶん大丈夫」コトハが言う。「有事だし、押し切れると思うのよね」


 でも僕たちみたいな人種は、戦わずにはいられない。

 戦車に乗らずにいられない。


「そうかもね。うちならいい加減だから、大丈夫そう」


 ニア共和国なら、作戦の成功率は高い。

 葉っぱを持っていたら完璧だ。


「分かるわ」

「だろうね」


 コトハは僕の戦車の中から、ニア共和国のやる気のなさを堪能している。


「葉っぱ吸いたいなぁ」と僕。

「そうね。私も欲しいわ」とコトハ。


「吸いながらエッチしたら、すごくいいってパウルが言ってた」

「今度、吸いながらしてみる? 雪月花に亡命したあとに」

「するする!」


 僕は子供みたいに喜んで言った。


「喜びすぎでしょ……」


 コトハは少し照れた風に言った。

 コトハの顔を見ると、頬が朱色に染まっている。

 可愛い。


「エッチの時もコトハは可愛い顔してるんだよね」

「……!?」


 コトハが酷く驚いた表情で僕の方を見て、それから顔中真っ赤にした。

 やっべ。

 心の声のつもりが、声に出てしまった。


「こ、殺す! ロゼはいつか私が殺す!」


 コトハは怒った風に言って、逆を向いた。


「それは嬉しいね」

「……嬉しいの?」

「僕は君と戦車で戦って、それから死にたい」

「敵として、ってこと?」

「それでもいいし、一緒でもいい。どっちでもいい。君と死にたい。君に殺されてもいい。戦車の中なら」

「私と戦車と、どっちが好き?」

「戦車」

「死ね」



 僕とコトハはスクラップ工場に向けて歩いた。

 ジャミはお留守番である。

 あとで回収する予定だ。

 待っていてくれれば、の話だけど。


 僕たちがスクラップ工場の門に近寄ると、警備の2人が銃を僕らに向けた。

 拳銃ではなくPDWと呼ばれる種類の銃。

 携行性に優れ、片手でも撃てるが、威力もそこそこあるっていう感じの銃。

 主に防衛用の武器。


「第4機甲師団、第1戦闘団所属のコトハ・シーリナよ」


 上から2つの所属だけをコトハは言った。

 少し違和感があったけど、ラクークでは普通なのかも。


「第4機甲師団って言ったら、うちで最強の機甲師団か……」

「しかも第1戦闘団? エリート中のエリートじゃない?」


 警備の2人が驚いた風に言った。

 コトハってエリートだったんだなぁ。

 まぁ、実力的には別に不思議ではないけれど。


「まぁ壊滅したけれど、ね」


 コトハは肩を竦めながら言った。


「聞いています」


 警備は男と女の2人組で、今喋ったのは女の方。

 ちなみに、女がコトハに銃を向けていて、男が僕に向けている。


「ちょっと待て、照合する」


 男の方が銃を片手で構えて、空いた方の手で軍用デバイスをホルスタから取り出す。

 そして何かを打ち込んでいた。


「戦死したことになっているが……」言いながら、男はコトハを見る。「顔は確かに一致する。IDはあるか?」


「どうぞ」


 コトハがドッグタグを首から外して渡す。

 男が銃を下ろして、ドッグタグを受け取った。

 それから、デバイスでドッグタグを読み込む。


「……凄まじい戦績と経歴ですね……」男が驚いた風に言う。「しかも魔法使いで、雪月花の団長がその実力を認めた……?」


 男は注釈まで全部読んでいるようだった。

 何気に敬語になっているし、コトハの経歴って本当、凄いんだろうなぁ。


「失礼しましたシーリナ軍曹」


 コトハって軍曹なの?

 僕より階級上じゃん。

 これが一年の差か。

 そう、コトハは僕より1歳年上なのだ。


 よって、軍への配属も僕より1年早い。

 ニアとラクークの兵役は同じ期間である。

 どっちがどっちに対抗したのかは分からないけれど、合わせている。


 ちなみに、ニア共和国では戦車乗りは伍長からスタートする。

 だから僕とイレアナは伍長。

 戦車の技術を習得したわけで、陸軍の中ではまぁそれなりにエリート。

 軍曹の上は曹長で、これはパウルがそう。


 曹長の上は上級曹長で、モニカがそう。

 基本的に、戦車乗りはそこで兵役が終わる。

 その後も軍に残った場合は士官になれるってシステム。


「それで、そちらの方は? ニア共和国の戦闘服のようですが?」


 男はドッグタグをコトハに返しながら、僕の方を見ていた。

 コトハはドッグタグを受け取り、再び首にかける。


「連絡係、と言えば分かるかしら?」


 コトハは少し真剣な様子で言った。

 警備の男女はハッとしたような表情を浮かべ、一瞬だけ顔を見合わせた。


「なぜ戦車乗りのシーリナ軍曹と連絡係が一緒なのですか?」

「もっともな疑問ね。私は撃破され、しかし祖国のため、再び戦うためにここに来たの。彼は途中で会って、私の階級が上だったから、随伴してもらっているの」


「僕は少しヘマをしてね」僕が言う。「脱出せざるを得なかった。その途中で、シーリナ軍曹に出会った。まぁ、服がコレだから、ちょっと揉めたけどね」


 僕は肩を竦め、ヘラヘラと言った。

 連絡係、要するにスパイに見えるよう。


「ここに動態保存されている戦車は第4世代でしょう?」コトハが言う。「動かすのに相棒がいるから、他の戦闘団と合流し、正式な相棒が決まるまで、彼を連れて行く予定よ」


「僕のヘマを庇ってくれるって約束でね」僕が言う。「シーリナ軍曹のデータは見ただろう? 彼女が庇ってくれるなら、合流まで喜んで随伴するさ」


「連絡係なのに、戦車を動かせるのですか?」


 女がもっともな質問をした。


「一応、ってところ」僕は肩を竦めた。「連絡係として、色々な知識が必要だからね。ヘリだって操縦できる。もちろん、上手くはないけど」


「失礼ですが、年齢は? それほどの技術を習得しているようには見えません」


 女は淡々と質問した。

 ちなみに、だいたいどこの国でも、下っ端は連絡係のデータ照合ができない。

 役職柄、秘匿されているからだ。


「22歳だよ、こう見えてもね。階級は上等兵。証明はできないけどね」


 5歳も逆サバを読んだのは生まれて初めてのこと。

 男と女が顔を見合わせる。


「連絡係は照合ができないので、こちらも慎重にならざるを得ません」


 男が申し訳なさそうに言ってから、僕に銃を向ける。


「いいわよ別に」コトハが言った。「私だって、完全に信用しているわけじゃないわ。そもそも、スパイを信じちゃダメよ……失礼、連絡係だわね」


 コトハは楽しそうに僕を見た。


「シーリナ軍曹」女が少し嬉しそうに言う。「動態保存中の戦車が必要なんですよね? 手続きをしに行きましょう。シーリナ軍曹なら、すぐ許可が降りますよ、きっと!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ