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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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22撃目 無法者に死を


 その夜、僕は藁の上で眠った。

 初めての藁は最悪の寝心地だった。

 けれど。

 僕の右隣には犬のジャミがいて、左隣にはコトハがいる。

 クソみたいな状況なのに、僕の心はとっても静かだった。


 僕はゆっくりとジャミを撫でる。

 ジャミは寝ているけど、耳がピクピクと動いた。

 可愛い。


 僕は別に犬好きじゃないし、動物好きでもない。

 この世で好きなのは戦車と戦闘だけ。

 少なくとも、昨日まではそうだった。


 今は、たぶん違う。

 僕はコトハの方に身体を向けた。

 コトハはスヤスヤと眠っている。

 藁のベッドでもコトハには関係ないらしい。


 まぁ、もっと酷い場所で寝たこともあるって言ってたしね。

 ああ、可愛いなぁ。

 僕はコトハの額にキスを落としてから目を瞑った。

 ははっ、まるで彼氏じゃないか!


 僕は今日の昼まで、コトハを戦車に監禁していたと言うのに!

 ああ、だけれど。

 拘束されていたのは僕の方なのかもしれない。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか眠っていた。



 町はまるでゴーストタウンだった。

 田舎ではあるけど、まぁそれなりの規模の町だ。

 本来なら10万人ぐらいは住んでいるはずだ。

 それが今はとっても静かで、人の姿は見えない。


 代替品のように動物たちが跋扈している。

 犬とか猫とか、大きな鳥と、あとヤギ。

 ジャミが何度か吠えた。

 それで猫は逃げたけど、それだけだ。


 僕たちは町の入り口で立ち止まっている。

 空はすでに夕焼け模様。

 朝、僕たちは野菜をかじってから納屋を出た。


 そして休憩しながら歩いて、この町に辿り着いた。

 当然、道では誰とも会わなかった。

 軍の車両なんかも見なかった。

 この近くにはいないみたい。


「好きな家に泊まれるわよ」


 コトハが楽しそうに言った。


「そりゃ助かる。できれば藁じゃなくて普通のベッドのある家がいいな」

「選り取り見取りってね」


 コトハが歩き始めたので、僕も続く。

 ジャミは僕の隣を歩く。


「ニア共和国が押されてるだろうし、ここの人たち帰ってくるかもね」


「そうね」コトハが言う。「だけど、今日ってことは、ないでしょ?」


「まぁね。その家はどう?」


 僕が指さしたのは、2階建ての普通っぽい家。

 大きくもないし小さくもない。

 目立たなくていい。


「もっといい家にしましょう」


 コトハは僕が示した家をチラッと見て、即スルー。

 しばらく歩くと、コトハが立ち止まった。

 排気音が聞こえる。

 バイクの排気音?


 僕も立ち止まった。

 軍に見つかった場合のやり取りを、コトハとすでに決めている。

 だから僕は小さく深呼吸した。

 ビビったら負けだ。


 前方からバイクが3台走って来て、僕たちを囲むように停まった。

 2人乗りが2台と、1人乗りが1台。

 相手は5人。

 全員が30歳を超えているように見える。

 男が4人、女が1人。


「ラクーク軍第4機甲師団……」


 コトハが自己紹介をしようとしたが、男の1人が鉄パイプをコトハに向けた。

 タンデムシートに乗ってる男だ。

 特徴は赤毛ってことぐらいか。


「知るかボケ」


 別の男が言った。

 運転者で、特徴はソフトモヒカン。

 僕とコトハは彼らを観察した。

 バイクはクルーザーと呼ばれるタイプの大きなバイクで、鞄を沢山付けている。

 たぶん、中身は盗品だろう。

 人のいなくなった町を荒らして回っている、ってとこか。


「金持ってるか? 軍人様」


 金髪の女が言った。


「持ってるように見える?」コトハが言う。「てゆーか、祖国が大変な時に、火事場泥棒でもしていたの?」


 コトハの言葉を聞いて、連中は顔を見合わせて笑った。


「祖国だってよ!」

「祖国が大変ってか!」

「ずっとクソだろうがこの国は!」


 ケタケタと、彼らが笑う。

 コトハは小さく溜息を吐いた。

 正直、コトハに愛国心はない。


「つーか、よく見たら可愛いんじゃね?」とソフトモヒカン。

「いいね! 犯すか!」と黒髪の男。


 これは戦闘になるな。

 まぁ、ラクークは銃規制が厳しいから、こいつらは銃を持っていないはず。

 ちなみに、大昔に指導者の1人が銃で暗殺されたので、それ以来、銃規制はメチャクチャ厳しい。


「バカなガキに分からせてやるか!」と赤髪。

「いいじゃん! ヤッたあと、あたしボコっていい?」と金髪女。


 すごい、本物の無法者だ!

 僕はこういう輩を初めて見た。

 パウルと似た系統だけど、パウルはここまで酷くなかった。


「嫌になるわ」


 コトハが小さく首を振った。


「分かるよ」


 戦車に乗っていたら、こんな連中ただの塵芥なのに。

 やっぱり一刻も早く戦車に乗るべきだね。

 まぁ、もうすぐ暗くなるし、スクラップ置き場に行くのは明日だけどさ。


 連中はバイクのエンジンを切って、バイクから降りた。

 連中の武器は鉄パイプと、ボウガンを持ってるのが1人いる。

 あとはメリケンサック。


「恥ずかしくないの?」コトハが言う。「多くの人民が軍に再入隊したというのに。あなたたちは火事場泥棒をしている上、祖国のために戦っている私たちを攻撃するっていうの?」


「うるせぇボケ」ソフトモヒカンが言う。「お前らだって、どうせ逃げて来たんだろうが! ってゆーか、そっちの男の戦闘服、どこのだ? 陸軍じゃねぇな」


 ニア共和国の陸軍だよバーカ。


「話し合いは無駄?」とコトハ。

「無駄っしょ」と金髪女。


 コトハが大きく溜息を吐いた。


「弾丸は節約ね、ロゼ」

「分かってるよ」


 こんな雑魚に貴重な弾丸を使いたくない。

 僕はボウガン野郎の顔に水の玉を生成した。

 古くからある基本的な水属性の攻撃魔法だ。

 水を生成するだけの、簡単だけど殺傷力の高い魔法。


「陸で窒息するってどんな気分?」


 僕はたぶん笑っている。

 ボウガン野郎がボウガンを落として、激しくもがく。

 他の連中はそれを見て、かなり焦ったようだ。

 隙だらけだな、と思った。

 その瞬間、コトハが速攻で赤毛の鳩尾に肘を入れた。


 それから、手首を捻って赤毛の鉄パイプを奪った。

続けて、奪った鉄パイプで赤毛の顔面を殴打。

 赤毛が悲鳴を上げて倒れる。

 コトハがジャンプして、赤毛の上に着地。

 赤毛が動かなくなった。


 ソフトモヒカンがメリケンサックでコトハに殴りかかる。

 しかしコトハは軽く躱して、鉄パイプでソフトモヒカンの頭を殴る。

 更にクルクルと舞うように、ソフトモヒカンの顎を鉄パイプで砕く。

 おお、コトハ強いなぁ。


 普通に僕より強い。

 ボウガン野郎が窒息死したので、僕は次に金髪女の顔に水の玉を作った。

 コトハが残りの1人を叩きのめして、僕らの勝ちが確定した。

 ちなみに、ジャミは戦闘が始まったと同時に少し離れた。

 一緒に戦うタイプの犬じゃないみたい。


「ねぇロゼ、その人殺さないで」

「いいけど、どうして?」


 僕が水の玉を解除すると、金髪女は激しく咳き込みながらその場に崩れ落ちた。


「これで犯すの」


 コトハは鉄パイプをクルクルと回した。


「はい?」

「だって、こいつら私を犯そうとしたのよ? だから、逆に犯してやるの。男どもは、ケツの穴に差し込んでやるわ」

「怖っ!」


 コトハに変なことしなくて良かった。

 あ、いや、したけど、合意の上で良かった。

 ああ、戦車壊したり監禁したり、色々やったけど、戦車好きの絆が生まれて良かった。


「こういう連中はね、徹底的に嬲ってから殺す方がいいの」


 コトハが薄暗い瞳で言った。

 ああ、そうか。

 そうしなければ、コトハは生きていられなかったんだ。

 そういう場所に生まれて、そういう場所で育って、軍に入ってからも変わらなかったのだ。


「なぜ?」

「私に手を出したらどうなるか、思い知らせなきゃ! 誰も私に手を出せないように! 分かるでしょ!?」

「分かる、分かるよ」


 僕はコトハを抱き締めた。


「……急に何?」

「ここは君の育ったスラムじゃないし、誰も君に手を出したりしない。それに、そんな奴がいたら僕が守るよ」


 うーん、我ながら薄っぺらい台詞だなぁ。

 もうちょっと、カッコいいこと言いたかったけど、僕にはこの辺りが限界。

 コトハは大きな溜息を吐いた。


「1回エッチしたぐらいで彼氏面しないで」


 ですよねー。


「助けて……、男女のガキ……みんなやられ……」


 金髪女がスマートデバイスを使って誰かに電話していたので、僕は水の玉を再び使用。

 まぁ結局、そのままの流れで全員殺すことにした。

 僕は生身の殺しは好きじゃない。

 でも拷問してから殺すよりは、きっとマシなはず。


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