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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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17/33

17撃目 戦車で死ぬなら悪くない


「すごいわロゼ!」コトハが興奮した様子で言った。「その実力なら、雪月花でもやっていけるわ! てゆーか私も撃ちたいっ!」


「さすがに今は操縦させられないけどね!」


 モニカとイレアナから通信が入ったので、僕は一度、大きめに深呼吸して気分を落ち着ける。

 はしゃいでいる姿を見られたくない。

 コトハが黙って奥に引っ込んだので、僕は通信を受けた。


「嘘でしょロゼ! 戦闘機撃墜しちゃったの!?」


 イレアナが目をまん丸くして言った。

 そう、僕は戦車砲で戦闘機を墜とした。

 ああ、気持ちいい。


「わたしたちに追い付けロゼ。功績はあとで讃えてやるから、今は逃げるぞ」


 モニカは普段より声が優しかった。


「了解」


 僕はすぐにグラディウスを動かした。

 敵戦闘機部隊はナパームの投下を終えて、引き返し始めた。

 三次攻撃はなさそうだね。


 僕はかなりの速度で移動し、モニカたちに追い付いた。

 そして、街道で破壊された最後の車両を通り過ぎたので、僕らは戦車を街道に戻した。

 斜めに走るよりはずっといい。

 他にも多くの車両が僕と同じ走路で撤退しているが、何を血迷ったのか丘を登った連中もいる。


 そこは開けているので、的になりやすい。

 森と丘に挟まれた街道を進む方が安全だ。

 三次攻撃はないけど、また別の部隊が入れ替わりで飛んでくる可能性はあるのだから。


「今のところ、新たな敵影はないそうだ」とモニカ。


 なるほど。

 そうだとしても、開けた丘の上には行きたくないなぁ。


「だが、なるべく急いで撤退を進めよう」とモニカ。


「「賛成だね」」


 僕とイレアナの声が重なった。

 イレアナは少し気まずそうに俯く。


「戦闘好きのロゼにしては珍しいな」

「僕は無謀じゃない。それに一機墜としただけでも十分」


 僕たちはスルスルと街道を走り抜ける。

 そして、唐突に。

 戦車砲の音が幾度も聞こえた。


「なんだ? 誰が撃ってるんだ?」


 そして誰に撃ってるんだろう?


「分からない」モニカが言う。「レーダに映っているのは味方だけだが……」


 僕は師団チャンネルをオンにした。

 そうすると、悲鳴や怒号に混じって「謎の戦車部隊出現!」という言葉が聞こえた。


「ねぇ、謎の戦車部隊だって」とイレアナ。


 イレアナも師団チャンネルを聞いたのだろう。


「音が近いな」モニカが真剣な様子で言う。「このまま我々は急いで撤退するぞ」


 対戦車なら僕は戦ってもいいけどね。

 と、ディスプレイに知らない戦車の影が映った。


「丘の上!」


 僕が叫び、戦車砲を丘の上へと向ける。

 味方であるはずがない。

 そして、味方でないのなら敵だ。


「なにっ!?」モニカが言う。「バカな、この距離でも補足できないだと!?」


 敵と思われる戦車の数は、20両ぐらいか。

 あるいはもっとか。


「オートロックも効かない!」


 コントロールパネルを操作したが、ロック不可と表示される。

 手動で狙うしかない。

 丘の上の戦車群が一斉に丘を下りはじめ、次々と戦車砲を発射した。


「何なのよもう!」


 イレアナが悲鳴みたいに言った。

 敵の戦車砲が街道に着弾し、道を破壊してしまう。

 僕はそこを避けるために丘の方にハンドルを切った。


「ステルス戦車!?」ずっと黙っていたコトハが操縦席の隣まで移動してきた。「レスカの第六世代!?」


「おいロゼ! そいつは誰だ!?」


 モニカが言ったけど、僕はスルーした。そんな場合じゃない。

 さっきので何両やられた?

 くそっ、分からないけど、とにかく撃ち返さないと。

 僕は操縦しながら手動で照準を合わせる。


 弾丸には榴弾を選択してあるから、そのまま発射する。

 それと同時に、敵車両も第二射を放った。

 ハンドルを切って街道に戻る。僕の背後で爆発が起きる。


「きゃぁ!!」


 その爆発は当然、敵の榴弾によるもので、イレアナのすぐ側に着弾したようだ。

 しかし直撃ではない。

 ちなみに僕の撃った弾丸はきちんと敵の車両に命中し、中破させることに成功した。

 とはいえ、敵の数が多い。


 一両中破させたぐらいじゃ何も安心できない。

 僕は対空防護システムを再び起動し、イレアナの戦車を守るよう設定。

 その直後、グラディウスの機銃が敵の砲弾を狙い撃って、空中で破壊。


「あ、ありがとうロゼ……」


 イレアナが言った。


「借り一個返したからね?」

「う、うん」


 ニア共和国の部隊も撃ち返しているので、周囲はかなり混乱している。

 何度も何度も爆音が響き、地面が揺れる。

 と、敵戦車の中に一両だけ色の違うやつが混じっていた。


 他の敵戦車は一般的な迷彩柄なのだが、そいつだけは漆黒の塗装だった。

 なんだ?

 どうしてあいつだけ色が違うんだ?

 あれじゃ目立つだろう?


 僕は戦車砲を連続で発射しながら、その色違いをズームで映した。

 そうすると、そいつは側面の装甲に赤い色で絵を描いていた。

 それが何の絵なのか僕には分からない。

 精々、獣のように見えると言った程度。


「あれはベゲモートの絵よ」


 コトハが言った。


「ベゲモートって?」

「レスカに昔からいる魔物よ。今は絶滅してるかもだけど。たぶんあの戦車の名前だと思うわ」

「ラーミナⅡみたいな?」

「そうね。それを絵で表したのね、きっと」

「何のために?」

「さぁ。示威のためででしょ」

「それは血が騒ぐね!」


 僕は戦車砲の照準をベゲモートの進行方向に合わせ、発射。

 爆音と振動があって、戦車砲の砲弾が飛んでいく。

 この距離なら、当たるだろう。


 しかし、ベゲモートはその場でキャタピラの片側と停止し、グルッとこっちに転換した。

 僕はベゲモートが真っ直ぐ進むと仮定して撃ったので、当然僕の撃った弾丸は外れ、地面を抉る結果となった。

 ロックオンアラートが鳴り響く。


「ロゼ! 避けて!」

「言われなくても分かってる!」


 ベゲモートが戦車砲を撃ったが、僕はグラディウスのハンドルを切って旋回。

 街道に戻る。

 ベゲモートの弾丸は外れたが、そのまま第二射が来た。

 くそっ、向こうはオートロックが使えるのにこっちは毎回自分で狙わなくてはいけない。

 圧倒的に不利だ。


 ハンドルを切って丘に戻るが、榴弾がすぐ真横の地面に着弾し、グラディウスが少しだけ浮いた。

 同時に、ディスプレイにいくつかの警告メッセージ。

 いちいち読んでいる時間はない。

 どうせ機体が損傷したとか、そういうことだろう。


 と、ハンドルを切っていないのに左側に旋回してしまう。

 さっきの爆発で左側のキャタピラが損傷して、右側と同じように動かなくなったのだ。 僕は即座に右側のキャタピラの動きを押さえ、損傷した左に合わせた。

 これで速度が大きく制限されてしまうが、仕方ない。


「ロゼ!」


 コトハが叫び、僕は急ブレーキを踏んだ。

 コトハが前方に倒れ込んだ。

 僕はシートに座っているので大丈夫。

 グラディウスの前方に榴弾が着弾し、煙が上がる。


 またグラディウスの機銃がイレアナの戦車を守った。

 これで借りは全部返したねっと!

 僕はハンドルを右に切ってまた街道へ。


「痛いじゃない……」


 どこか打ち付けたのか、コトハがぼやいた。


「悪い。掴まってて」


 躱すだけじゃ勝てないので、僕は合間に1発撃った。

 もちろん、ちゃんと狙った。

 相手の装甲がどの程度か分からないけれど、少しはダメージ入るはずっ!

 とか思っていたら、敵ベゲモートが魔導防壁を展開。


 そうだと思ってたけど、やっぱり魔導戦車かよっ!

 僕は砲弾を防壁貫通弾に変更。

 てゆーか、もう完全に戦車の性能は向こうが上。

 こっちは損傷有り。


 勝ってるのはパイロットの腕前だけってとこかな。

 なんて、向こうもかなりの腕だ。

 もしかしたら僕と同類なのかもしれない。

 それから更に、僕は2発の榴弾を躱した。


 と言っても、1発は躱せなくて魔導防壁で防いだ。

 いつの間にか、ディスプレイからモニカが消えている。

 戦死したのかもしれない。

 そんなことに一瞬、気を取られてしまった。


「ロゼ!!」


 コトハがひときわ大きな声で僕を呼んだ。

 あ、やばっ、

 躱し切れない――。

 魔導防壁を展開したけど、最悪なことに相手の弾丸が防壁貫通弾だった。

 それに1発だけじゃない。


 他の敵車両も僕を狙っていたようだ。

 まぁそうだよね。

 世界がスローに展開する。

 防壁貫通弾が僕の魔導防壁を侵食し、貫く。


 ああ、クソ、死ぬっ!

 ああ、チクショウ。


 なんでモニカのことなんか気にしてしまったんだ僕は。

 でも、負けは負けだ。

 仕方ない。

 戦車の中で戦車にやられて死ぬのだから、そこまで悪い最期じゃない。

 同じ棺の中にコトハもいてくれたしね。


 と、コトハが僕の身体を背後から抱くように動き、何か魔法を使った。

 最後にそれを確認して。

 凄まじい衝撃があって。

 更に続けて衝撃。

 僕の意識はブラックアウト。

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