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シオンの棺 ~魔導戦車に敵国の美少女を監禁した~  作者: 葉月双


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16/33

16撃目 獣のように願ったのは


 敵機の攻撃より先に、防空大隊が地対空ミサイルと対空機銃で攻撃を開始。

 いつもやる気ない割に、命がかかると迅速だね。


「よっしゃ! 撃ち落とせ!」


 パウルが叫んだ。

 僕たちは撤退を続けている。

 対空ミサイルが近づいても、敵機は回避行動を取らなかった。

 なんだ?


 すごく嫌な感じがする。

 次の瞬間、敵機が自機の下部に魔導防壁を展開。

 こちらの対空ミサイルは全部防壁に当たって爆ぜた。


「そんな!」モニカが言う。「魔導戦闘機!? ラクークは所有してないぞ!?」


 うちの国だってまだ試作中。

 国産は、って話。

 他国から購入した魔導戦闘機なら5機ぐらいあったかな。

 魔導戦闘機自体は、第一次世界大戦の時から存在している。

 もちろん性能は今より遙かに劣るけれど。


「まずいよ!」イレアナが言う。「防空大隊がボロクソにされてるっ!」


 そりゃまぁ、最初に狙うのは防空部隊だよね。

 いわゆる制空権を取るってのは、敵の防空網を無力化するってこと。

 防空部隊のどこどこがやられた、誰々が死んだ、みたいな音声がガンガン入ってくる。


 師団チャンネル切ろうかな、って思うぐらいうるさい。

 ディスプレイで周囲を確認すると、少し離れた数カ所で煙と炎が立ち上っている。

 撤退する方向にも煙が見える。


「防空隊がやられたってことは、普通の戦闘機がこのあと来るってことだね」

「おいロゼ! 淡々と恐ろしいこと言うなよ!」

「でもパウル、実際そうだろう?」


「ロゼの言う通りだ」モニカが言う。「魔導戦闘機で防空部隊を潰し、通常戦闘機で我々を叩くつもりだ。クソ、もっと早く動けボケどもがっ! ラーミナⅡなら時速100キロは出せるのにっ!」


 車列の速度が遅いことに不満を言っても仕方ないと思うけど、まぁ僕は黙っていた。

 だって100キロって、戦闘機から見たら止まってるのと変わらなくない?

 戦闘機に乗ったことないから、そんな気がするってだけ。


「チクショウ! 俺は死なねぇぞ!」


 パウルが車列を外れ、東の丘から僕らを追い抜いた。


「おい! 勝手な行動を取るな!」


 モニカが怒って言ったが、パウルは通信を切った。


「あーあ、真似する奴が出て来たじゃない。本当、あの人クズ」


 イレアナは呆れた風に言った。

 そして事実、パウルの真似をして丘の方からスピードを出して撤退する連中が出て来た。

 それも結構な数。

 なんという統率力の低さ!


 ダメダメすぎて泣きたくなる。

 雪月花なら、きっとこんなことはない。

 もう僕も離脱して雪月花に向かうか?

 今ならむしろチャンスなのでは?

 心残りは、イレアナに借りを返していないってこと。


「敵の新たな戦闘機だ! 凄まじい数だぞ!」


 モニカは悲鳴みたいに言った。

 そして敵機は僕のレーダでも確認できた。

 わぁお。


 空が埋まってるじゃん。

 これラクークじゃないな。

 さっきの魔導戦闘機はすでに離脱していて、機体名も分からなかったけど、こいつらは照合しよう。


 僕はパネルを操作して、敵機が近寄ったら自動でデータベースと照合するよう設定。

 そして。

 敵機が一斉にミサイルを放った。


 対空防護システムが自動でジャミングをかけるが、ほとんど効果がない。

 次にハードキルを目的とした機銃攻撃を開始。

 僕は見てるだけ。


 というのも微妙なので、戦車砲で敵機を撃ってみた。

 いっぱい飛んでるから当たるんじゃね?

 そう思ったけど当たらなかった。


 うーん、もっと気合い入れて狙わないと難しいか。

 と、敵機の照合が終わったという通知が出る。

 僕は目を丸くした。


「モニカ! イレアナ!」そしてすぐにそれを伝える。「敵機はレスカ帝国! ラクークじゃない! レスカが参戦した!」


「こっちでも照合した!」モニカが言う。「クソ! 勝ち戦が一気に負け戦だ! 我々には味方はいないのか!?」


 レスカ帝国は列強ランキング2位の超大国。

 準先進国だぁ、なんて喜んでいる僕らのポンコツ国家とは違う。

 いや、そんなことを考えている場合じゃない。

 アッと言う間に、周囲は酷い有様へと変貌していた。


 僕たちは敵戦闘機の第一次攻撃で三割以上が消耗――つまり破壊された。

 地獄絵図のような光景がディスプレイに映し出され、音声のみの通信で悲鳴や怒号が響いている。

 多くの車両が西側の森に逃げ込んだが、それは愚策だと思う。


 敵機がナパームを装備していれば、絶対に助からない。

 だから僕は破壊された車両を避けるように東側の丘へと進路を取り、車体を少し斜めにしながら撤退することにした。


 一応、そのことをモニカに伝えると、モニカは僕に賛成した。

 よって、イレアナとモニカも僕の後ろに付いてきている。

 結局パウルと同じ進路を取るわけか。


 なんだか複雑だなぁ、と思っていると、パウルのラーミナⅡが炎上していた。

 損傷具合から判断して、たぶん生きていない。

 空から虫けらを潰すみたいに、戦闘機なんかに殺されてしまった。

 なんだろう、別にパウルのことなんて好きじゃないけど、少し寂しく思った。


「パウル……」


 イレアナが泣きそうな声で呟いた。

 イレアナもパウルが嫌いだったはずだけど、やっぱり仲間は仲間ってことか。


「放っておけ。その損傷じゃ生きてない」モニカが淡々と言う。「自分たちが逃げることを考えろ」


 と、敵の戦闘機部隊が遠くの空で旋回し、引き返してきた。

 普通に考えれば、第二次攻撃に移るつもりだろう。


「弾丸はどうだ?」とモニカ。

「ほとんどない」とイレアナ。


「僕もだけど、この攻撃を防いだら、敵機はミサイルの補給に戻るんじゃない?」


 戦車の砲弾と違って、戦闘機のミサイルはそんなに沢山搭載できない。

 フルに積んでいたとしても敵機の型だと16発とかのはず。


「そう願おう」とモニカ。

「ああ、嫌だ、こんなところであたし、死にたくない……」

「みんなそうだ」


「だね」と僕。


 しかし敵の航空機部隊は僕たちではなく、森に進路をとってナパームを投下し始めた。

 ああ、やっぱりだ。

 最初から、織り込み済みだったのだ。

 森に逃げる奴がいるってことを。


 部隊の二割以上が森に逃げ込んでいる。

 彼らは運がなかったというよりは、判断ミスだ。

 どいつだよ最初に森に逃げ込もうって言った奴は。

 これで確実に五割以上の消耗が決定した。


 西側が赤く燃える。

 これが戦争だ。

 正直、滾ってしまう。

 炎に魅せられる。

 もし可能なら、戦闘機を墜としてやりたい。


 でもそれが現実的じゃないことぐらいは分かる。

 戦車の役目じゃない。

 ああ、でも、やりたいよねっ!

 僕は停車して戦車砲を敵機に向ける。

 ナパームを落としてる連中だ。


「ロゼ?」

「どうした?」


 イレアナとモニカが不思議そうに言った。


「狙ってみる。集中したいから1回切るよ。先に逃げてて」


 2人の返事を待たず、僕は通信を切った。

 全ての通信を切った。


「さすがに無理じゃない?」


 コトハが楽しそうに言った。

 そう、コトハは楽しそうだった。

 それが僕にはとっても嬉しく思えた。


「無理でもいい。やってみたいってだけ」


 僕は手動で照準を合わせる。


「外れても笑わないわ。あと、もし当てたらキスしてあげる」


 コトハが背後から、シートごと僕を抱き締めた。

 ああ、幸せだなぁ、って思った。

 そしてその幸せの中で、僕は偏差射撃を行った。


 比較的、敵機の行動は予測しやすかったし、速度もそれほど出ていない。

 連続で4発、微調整しながら僕は撃った。

 当たれ! 当たれ! 当たれ!

 僕はそう願った。


「獣みたいな顔してる」


 コトハの声は発情しているみたいに聞こえた。

 そして。

 僕の撃った砲弾が敵機に命中。


 4発撃ったうちの1発だけ当たった。

 敵機が空中で爆発してバラバラになった。

 僕は思わず大きな声を上げた。


「やった!! 戦闘機を墜とした!!」


 無意識でガッツポーズを決めるほど、僕は嬉しかった。

 まぁ、戦闘機を一機墜としたぐらいで戦況は変わらないけれど、それでも嬉しいものは嬉しい。


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