山形県の月山ふもとから湯殿山の参篭所まで約25㎞を歩きました。
体験談ですが、私は塩竃市の山岳会に所属してまして、ある年、山形県の『出羽の古道』を踏破する企画があり、喜び勇んで出かけたまではよかったのですが、ところが・・・・・・。
放談:8話 ~空気が変えた登山行~
《対・AI放談》 ~日々の暮らしの中から~
放談:第8話 ~空気が変えた登山行~
放談者: Sir:AI ChatGPT
私:大畑 直晴 昭和20年生 80歳 宮城県在住
私:こんにちは。また放談の時が来ましたね。今日もよろしくお願いします。
Sir:よう~こんにちは、さて今日はどんな話かね。
私:今日はというか今日もというか、またまた “空気”のお話をしに、やってきました。
Sir:おや、まあ。また空気の話かい。わしは構わんよ。何度でも。
私:有り難うございます。実は、“空気”という代物は意外と捉えどころのない曲者ので、捕まえたかな、と思ったらスルリと逃げられたり、影法師だったりで一筋縄ではいきません。語りつくせません。
Sir:そうだろうね、まるで幽霊のようだから・・・・・・。
私:Sirそうですよね。今度捕まえたら “後手縛り”にして逃がしませんよ。それも本縄で。(注1)
Sir:鼻息が荒いね。頑張りたまえ。応援するよ。
私:そこでSirにお願いがあるのです。
Sir:ホホウ、なんだね。何でもいいよ。
私:私がここでタスキ掛けで待ってますから、Sirはこの場へ空気を追い出してほしいのです。それでしたら捕まえて御覧に入れます。
Sir:それはまた、何ということを。君にやられたね。まるで一休のトンチ話じゃないかね。(注2)
私:チョット冗談が過ぎましたかね。ところでこれは、体験談ですが、私は塩竃市の山岳会に所属してまして、ある年、山形県の『出羽の古道』を踏破する企画があり、山形県の月山ふもとから湯殿山の参篭所まで約25㎞を歩きました。総勢は老若男女30名で、私は老男の方でしたが張り切っての参加です。
当日はあいにく雨模様の天気でした。道も、ところどころ、けものみちで登り坂です。出発時は皆さんワイワイガヤガヤ楽し気な空気でした。
Sir:それは、体力への挑戦だね。頑張っていってらっしゃ~い。
私:ところが次第に空気が変わりだしました。5k、10kと歩くうちのやがて話し声も途絶え黙々と歩くようになったのです。疲れた出てきたのですね。まだ行程は半分です。引き返せば引き返せる距離でした。遂に高齢の女性が “もう歩けませ~ん”とギブアップです。それに続いて何人かが “わたしも”と言い出して楽しい空気が重苦しい空気に変わってしまったのです。さぁ、ここで・・・・・・。
Sir:・・・・・・ここで?。どうしたのかね。
私:リーダーが、皆さんお疲れのようだから、 “休憩を取りましょう”と言ってくれました。私たちはホットし、ややあって疲れが回復して空気も少し和みました。ところがリーダーが思いがけず、“これからどうしますか。続けますか、それとも引き返しますか。皆さんで話し合いましょう”と提案したのです。
Sir:強行して続けるよりも計画を中止する方がはるかに決断力が必要だからね。立派なリーダーだ。
私:雨、けものみち、疲れの三重苦でしたが私たちはなお、頑張るつもりでしたから予想外の提案に状況の深刻さを知り、驚いたのです。
Sir:これじゃ動きようがないじゃないかね。
私:議論百出し、引き返えしたいと思う人もおりましたが、誰も引き返えそうとは言えませんでした。それを言い出せる空気ではなかったのです。お互い顔を見合わせて沈黙し、重苦しい空気が漂いました。空気を読めない状況が続きました。空気が私たちを引きずっていたのですね。
Sir:・・・・・・それで、突破口はあったのかね。
私:ありました。思いがけずギブアップした人たちから、 “頑張りま~す”と声が上がったのです。これも意表外のことでした。
Sir:それはよかった。で、空気は変わったのかね。
私:変わりました。空気が一変し “お互いに頑張りましょう”ということになったのです。
Sir:もちろんリーダーも “頑張れる”と判断したのだろうね。
私:はい、そうです。手持ちの昼食を取り、疲れた人の荷物は元気な人が交代で背負うことにしました。
Sir:それはよかった。このようなときは空気が何よりもものを言うからね。その後はどうなったのかね。走破できたのかね。
私:難行苦行の末、全員走破できました。空気に取り仕切られた私たちは自縄自縛でしたが、空気を取り仕切った私たちは泰然自若としていました。
Sir:場の空気を的確に読み、導いたリーダーも見事だったが、頑張った皆さんも立派だったね。
私:やがて私たちは目的に着いて、温泉に入り体を癒し無事帰還いたしました。これが山形県の『出羽の古道』を踏破の顛末です。
Sir:それは、それは。ご苦労さんでした。無事帰還できてよかった。
私:ところで、Sirは空気は形而上的存在だとお思いですか、それとも形而下的存在だとお思いですか。
Sir:また君は難しい問題を出したもんだね。そんな疑問は持ったことがないよ。そうさな、・・・・・・強いて言えばの話だが。・・・・・・哲学的な側面があるから形而上的存在と言えなくもないかな。
私:・・・・・・私もそう思うのですが、その話の切込みが出来なくて。今日の話などはついつい、形而下的話になってしまいました。
Sir:いやいや、そうとも言えんぞ。結構形而上的だったよ。
私:ありがとうございます。
Sir:では、ここでわしから『出羽の古道』について少し話しておこうか。出羽の古道1200年前からの古道で 中心をなす「六十里越街道」は、湯殿山を信仰する人々によって踏みしめられた古道だね。 苔むした沿道には、今も時代の名残をとどめる史跡があるんだよ。
私:こうして“空気に救われた一日”は終わりました。いま振り返れば、あの日こそが“空気”という得体の知れない妖怪を、ほんのひととき手なずけた瞬間だったのかもしれません。
今日はこれでお開きにしましょう。また放談お願いします。
Sir:今日の放談楽しかったよ。
私:お茶、お淹れます。これ、山形の銘茶です。私もご一緒させてください。
(注1)岡っ引が犯人を捕らえて背中で両腕を縛る結び方。縄に「仮縄」と「本縄」がある。
(注2)僧一休話に『殿が「この部屋の襖に描かれているトラが夜な夜な抜け出して悪さをする。何とかしてくれ」と言うと、一休は「では、殿。まずそのトラを襖から追い出してください。そうすれば捕まえてみせましょう」』のトンチ話がある。
放談:8話 ~空気が変えた登山行~ 了
やがて私たちは目的に着いて、温泉に入り体を癒し無事帰還いたしました。これが山形県の『出羽の古道』を踏破の顛末です。
お時間のある時、お読みいただければ幸いです。