第一章 再会
廻は、都会の病院で救急医として働いていた。
目まぐるしい現場の中で、淡々と命を繋ぎ続けるその姿は、周囲から名医と称されていた。
けれど、その呼び名に彼自身が何かを感じることはなかった。
同僚とも、患者とも、深く関わろうとはしなかった。笑顔は仮面のように薄く、感情の色を失った瞳でただ静かに命の往来を見つめていた。
そんなある日、かつての天村で共に育った幼なじみ、透花が同じ病院に赴任してきた。
その凛とした立ち居振る舞いには、信念の強さがにじんでいた。
それでもなぜか、彼女の纏う空気は儚かった。
「廻、ひさしぶり」
屈託のない笑顔。そしてどこか懐かしい声に、廻は胸の奥が不意に揺らぐのを感じた。
ーーー
透花には、“人の死因が見える体質になる”という定めが授けられていた。
それが現実となったのは、三年前。
人の左胸、心臓の辺りに死の文字が浮かぶようになっていた。
それだけではない。
その人が死を、最期を迎える瞬間の光景までもが透花の瞳に映るようになっていた。
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