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忘れじの花  作者: 向日葵
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プロローグ

ふと見上げた空は不穏な気配を孕み、黒く澱んでいた


頬をつねればじわりと鈍い痛みが広がった。

全部夢だったら…

一瞬、そんな甘すぎる考えが脳を支配した。


笑えない冗談だと思いながらかいは静かに目を伏せた。


「なんで、あの子なの……」

いつの日か耳にした母親の言葉だ。

その言葉に隠されているものがどれだけ残酷なのかを幼い自分は知る由もなかった。


ー俺が生まれ育った村、天村あまねむらには、こうという、言うなれば女神のような存在がいた。

村の誰もが皆“光様”と呼び、敬い慕っていた。


生まれた赤子は名付けの儀で光から名を授かり、光の加護により成人するまでの間守られる。

だがその裏で、ひとつの“定め”が授けられる。

運命と呼ばれるそれは、成人するその日まで、決して本人に伝えてはならないという掟があった。


廻が医者を目指したのは、幼い頃からだった。

まだ定めを知らぬまま、誰かの命を救いたいと願っていた。


やがて成人するときが訪れる。

両親から明かされた定めの内容は、「若くして事故で死ぬ」というものだった。


心の中はひどく騒いでいるはずなのに、思考は透き通っていてすぐにその言葉を取り込んだ。

色彩を持っていたはずの世界は廻の中で音もなく崩れ落ちた。


運命などという得体の知れないものに、命を縛られている。

そう思うと、生きることすら理不尽に思えた。

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