表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

7

..

試験結果が張り出された廊下は、ざわめきに包まれていた。

「うわ、数学やっぱり難しかった……」

「物理?終わったんだが……」

「英語はなんとか乗り切ったけど、社会が微妙だったな……」



そんな中、ひときわ目を引く結果があった。

赤瀬雷翔——数学、物理、化学、満点。


「は?」

最初に声を上げたのは佐藤だった。


「ちょっと待て、理系科目全部満点って……どういうこと?」

九条が驚きながら得点表を見る。


竹中六助は眼鏡を押し上げ、静かに確認した。

「数学、物理、化学が異常なまでに完璧だな。」


周囲の生徒も結果表を見てざわつき始める。

「赤瀬、なんでそんなにできるんだ?」

「どんだけ頭いいんだよ……」


赤瀬本人は騒ぎを気にすることもなく、しけた顔をしている。


「……こんなもんか。」


佐藤が苦笑しながら肩を叩く。

「お前さ、ちょっとくらい驚けよ。」


九条は腕を組みながら、何か納得したように頷く。

「運動だけじゃなくて、勉強も異常なんだな……」


竹中は静かに言葉を添える。

「赤瀬、どうしてこれほどの点数が取れるんだ?」


赤瀬は軽く肩をすくめる。

「自分でも不思議だが……なんとなく問題が分かるだけだ。」


「……いや、それがすごいんだって!」

佐藤は笑いながら言う。


結果がどうあれ、赤瀬雷翔という存在がまた一つ、学校に刻まれる。

彼はただ当たり前のように満点を取っただけ——しかし、それが周囲の認識をさらに深めることになった。



中間試験の余韻が残るある日の午後、佐藤湊の家にクラスの仲間たちが集まることになった。佐藤湊の家は、両親が医者という評判の豪邸。玄関を入ると、洗練されたインテリアと広々としたリビングが広がり、どこか非日常の雰囲気を醸し出していた。


「ここが俺の部屋……」

湊は淡々と話す。斎藤、九条、竹中六助、そして俺も、その輪に加わって、ビジオケーム(集まってゲームや雑談を楽しむ企画)を始めた。初めはリラックスした笑い声と談笑が絶えなかった。


しばらくすると、会話は自然と深い話題へと移っていった。途中、湊がふと俺の方に顔を向け、小さな声で問いかけた。


「おい、らいとの親は何してるんだ?」


俺は戸惑い、視線を宙に彷徨わせながら答える。

「……分からない。何も思い出せない。母親はいない。」


その一言に、場の空気が一瞬止まった。湊は、どうにかしてこの謎めいた部分も含め、俺たちの仲をもっと深めようとするかのように、話の流れを変えた。


「そうだな。次の文化祭の打ち上げは、俺の家でやろうぜ。みんなの親しい人とか呼んでさ、らいとの親御さんもどうかな?」


湊の声には、淡い好意と率直な提案が込められていた。

俺はしばらく考え、やがて小さく答えるように口を開いた。

「……誘ってみるか。」


豪邸のリビングに響く笑い声と会話の中、仲間たちは俺の不完全な記憶と向き合おうとはしなかった。だけど、湊の言葉の奥には、仲間としてそして未来への温かい期待が感じられた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ