彼氏を彼女に食べさせる愛
その日の夕方、パルルがテレビを見ていると
「あれー、姫、姫しゃべってる。ほら、このニュース番組」
「姉ちゃん、何言うてんの。手伝ってえな。忙しいんやから。姫がどうしたん」
「テレビ見て」
「あ、姫だ」
キッコがテレビの姫を見た。
「あれ、姫って今いくつ。よく見たら、しわ多くない」
「あなた、22でしょ。同じくらいじゃないの」
「いや違うって25は行ってるで」
二人とも勘違いをしていた。
姫は30歳である。ちなみにカキももう30である。カキはキッコと結婚したいと思っていたが、キッコは完全に無視していた。
「あれだけ話題になったら、また騒ぎになるんじゃない」
とオグリ。実は東京では意外な方向に話が進んでいた。
「姫ちゃん、相談番組があるんだけど、答える役で出て見ない?」
公子は意外な質問に躊躇した。
「この人、世間のことは全然わかってませんよ」
「そこがおもしろいんじゃん。本当の姫って面白いし」
「実は三十路ですよ」
「そこがいいんじゃない。いじれるし」
とテレビスタッフ。
「姫はどうなん」
「何か食べたい」
「ほら、話聞いてないでしょ」
「そこがおもしろいんだよ」
「じゃあ、事務所で相談してきます」
「長谷川さん、よろしくね」
とスタッフは濡れた服の入った紙袋を渡し、二人を見送った。
公子は赤坂で真美とポンと合流する約束をしていた。
ポンがよく行く個室のイタリアンが赤坂にはある。
ポンは完全な芸能人で超有名だ。
「ごめんなさい。姫がテレビ出てしまって」
「ウソ、何で出たの」
とポン。
「インタビューされて。でね、出演依頼されちゃったの、新番組の」
「えーっ。住むのはウチでいいけど、マネージャーも公子でいいけど、ごはんは作れるの」
「そっちの心配か。何もできないわ。ポンと同い年だけど」
「噓、あれで同い年なの。あ、今、意味なくナプキンを頭に乗せた」
「うう、勝手というかややバカ寄りなの。いやバカね」
二人でボーっと姫を見ている。
姫はボーっとテーブルの上のグラスを眺めていた。
「ふしぎね。棒が支えてる。倒れないのね」
それを聞いて二人はため息をつく。
すると真美が走って入ってきた。
「ごめん。迷った」
「大丈夫よ。逆にこの辺ややこしいでしょ」
「大丈夫。ウチの東京本社、赤坂見附の上だから。美々の会社もこの近くだし」
「あ、美々、死んじゃったんだ」
「うん、愛姉に食べられて」
3人は口をつぐんで涙を流していた。涙を流させるきっかけとなった張本人は異世界で好き放題やっていた。
「はい、デッドオアアライブごっこ。私の口に落ちた人が負け。残った人は生き残りよ」
小さくした人2人を棒の端っこにそれぞれ置き、彼女が真ん中を持ってブラブラ振り回す。
先に落ちた人が負けなのだ。
もう片方に乗った彼女を助けるために男が先に落ちた。
「あれぇ。あなたたち付き合ってるの。じゃあ」
と言って愛は彼女の方を元の大きさに戻した。
「さぁ、食べなさい」
愛は小さくなった彼氏を彼女の口に押し込んだ・
「はい、ごっくん。これで一心同体ね。あなたの彼氏はあなたの中で死んでいくのよ。あはははは」
もう愛の行動は完全に鬼になっていた。
「次は何して遊ぼうかな」
「愛様、もうおやめください」
と従者が言う。
「うるさいな」
と言って従者を小さくして踏みつぶした。
「あああ。死んじゃった。あははははは」
愛はこちらに来た日本人たちを小さくして一つの場所に集めていた。
「あなたたちは殺さないであげる。みんな住吉区民なの。あ、カメラマンの人、私を撮って」
とカメラマンを掴んでテーブルの上に乗せた。元の大きさに戻してカメラを持たせ撮らせたのである。
「わぁ、綺麗な女。美しいわ。愛ちゃん」
と自分を褒める。
「好きな女とやっていいわよ」
とカメラマンを小さくして妊娠部屋に放り込んだ。
もう愛のすることに誰も注意する人はいないのだ。