姫、ゆりかもめに乗る
東京の京橋。やや八重洲寄りに有名お菓子メーカーがあった。そのビルのⅰ階にチョコレートカフェがあるのだ。
「姫ちゃん、ここのチョコとチョコドリンクおいしいんだよ」
「ホントだ。あまーい」
「そうでしょう。甘いでしょう」
「何でこの辺は高い建物が多いの。朝乗った飛行機はぶつからないの」
「ぶつからないわよ。でも、私も飛行機怖かった」
「そうなんだ。怖いんだ、あはははは」
「ところで姫ちゃん、いくつ」
「30」
「えっ、そんなにいってるの」
「公子は」
「21」
「若いわね」
「姫ちゃんじゃなくて姫さんっていうわ」
姫は初めて年齢を証した。何も言わなくてもみんな20歳ぐらいだと思ってたのだ。
公子が誠にメールを送ると『うそーん』って返ってきた。
「じゃあ年齢らしいとこ行こう」
と公子は新橋まで行き、ゆりかもめに乗った。お台場から観光船で浅草に行くのだ。
「公子、公子。あれが海っていうの」
「初めてだとびっくりするでしょう。あとであの上を走るのよ」
「うえええ。おもしろそう」
ゆりかもめがレインボーブリッジを渡る。
「ここも海の上だ。すごい」
姫は大はしゃぎだ。
観光に連れてきた人がこれだけはしゃぐと公子も嬉しい。
「さぁ着くわよ。砂浜を歩くわよ」
お台場海浜公園駅で降りた。そこから一度砂浜に向かう。
「ほら、ここが砂浜。水に浸からないでね」
と言った瞬間、姫は走って膝まで浸かってる。
「あちゃあ。どうするのよ。バカ姫」
と頭を抱えてたら
「長谷川さん。おつかれさまです。何してるんですか」
とテレビ局の北がカメラを持って話しかけてきた。
「観光です。知人を連れて。でも、調子乗っちゃって。びしょびしょです。連れて買いに行くか、置いて買いに行くか悩んでたんです」
北はポンのドラマを撮ってくれたスタッフだ。
「買わんでもいいじゃないですか。うちの衣装部に服も靴もありますよ」
「甘えちゃおうかな」
「どうぞ。どうぞ。なんか品のある方ですね」
「バカですけどお姫さんなんです」
「えええええ」
ポンが異世界人ということは内緒にしていたが、異世界人が大量に来ているということは受け入れられていた。
愛が作ったバレーボールチームも全国的に人気である。
「向こうの世界のお姫様なんです」
「へえ。インタビューできへんかな」
「いいんじゃないですか。姫さんちょっと」
公子はインタビューの事情を説明した。甘いものが食べれるならと姫はオッケーした。
「良かった。ニュースのネタが寂しくて」
「移動したんですか。ニュースに」
「うん。でも、これはこれで面白いよ」
テレビ局に入り、姫は服を着替えさせてもらった。ちょっとリクルートスーツである。
スタジオでインタビューが始まった。相手は30歳くらいの中堅女性アナウンサーだ。
「今日は最近話題になってる異世界の方に来ていただきました。よろしくお願いします。どちらから来られたのですか」
「デジックの首都ヤギ」
「ヤギでは何をされていたのですか」
「よくわからない。あ、王族でした。父親が王様でした」
「ということはお姫様ですね」
「でも、こちらの女性があっちの世界で魔王になって巨大になって、父を食べたんです。私も食べられそうになった瞬間、移動しました」
「こちらの女性が魔王ですか。怖いですね」
「ええ、幸福の国なのに信じられないです」
1時間に渡って話が進められた。
異世界の文化、教育制度、政治など、姫が語れることは全部語った。




