愛、二つの国を制覇する
姫がキッコを見つめた。
「食べられなかったぞ。ギリギリでこっちに来たんじゃ」
「そうなのか。ま、どっちでもいいけど。なぁ、姉ちゃん、愛ってどんなやつだ。俺の見る限り最悪の魔王だったぞ」
とキッコが言うとパルルがカキを押し出してきて
「本当の魔王はこんなんだからな」
カキがキッコに抱きつき顔を舐めつける。
「可愛い男の子。私を奥さんにして」
「あわわわ。何これ。本当に魔王カキ?」
「あははは。カキさんはこっちに来て変わったのよ。いや、こっちが本性かな」
パルルが笑って言った。
「キッコくん、カキちゃん本気よ。29の女は怖いわ」
オグリがいうとカキがまたキッコの顔を舐めた。
「いいでしょ。あなた」
カキがキッコに擦り寄る。
「いいんじゃないか。カ行同士で。あはははは」
と誠が笑った。パルルも
「カキ様が私の妹になるんだ。グフフ」
と不気味に笑った。
キッコはこちらの世界でも不幸になりそうだ。
翌日、姫様が真美に連れられて伊丹空港に来ていた。
「おとなしくしといてね。お兄ちゃんに飛行機乗せたってって言われたから、しゃあないけど。あなたと同い年くらいの女の子が案内してくれるわ。ああ、今日はポンが休みでよかった。ごめんね。公子」
「大丈夫だ。おとなしくしてるのじゃ。飛行機って何だ」
「空そ飛ぶの。ほら、あれ」
真美は滑走路を飛び立つ飛行機を指差した。
「どえええ。モノが飛んでる。嘘だ、嘘嘘」
「今見たでしょ。あれに乗るの」
「私、殺されるのか」
「死なないわよ。さぁ行くわよ」
「やっぱり真美は愛の妹だ」
「あんなヤツと一緒にしないで」
真美は姫をギロッと睨んだ。
一方、姉は一人で馬車に乗ってデジックの隣の国、ツツルを目指していた。デジックはアメリカの2倍くらいの大きさで南端に首都ヤバがある。そこから国境を越えて少し行った所にツツルの首都クイがある。国境の関門はさっき愛が消し去った。すでにクイには連絡が入っている。
「国王様。デジックの王を倒したという魔王がこちらに来ます。お逃げください。デジックの王は頭からかじられたそうです。あの魔王は少しおかしくてあの魔族を絶滅させたそうです」
「何ぃ。イア逃げるぞ」
「お父様。私はその化物が見たくなりました。こちらに隠れてやばくなったら逃げます。待っててください」
「イア。大丈夫だな。大丈夫でいてくれ」
と王が言った瞬間、上から大きく長い手が伸びてきた。
「これが王か。ちょっと大きくなりすぎて疲れちゃった。いただきます」
と言って頭からゴリゴリと食べた。
愛は500mほどの大きさになり、走ってクイに来たのだ。
「あっ、こいつらも食べなきゃ。体力回復っと」
愛は召使い達も掴んで5人いっぺんに食べた。それを見てイアが恐怖で立ち尽くす。
「あれ、何? むちゃ男前やん。ちょっとちょっと。亭主になって」
愛は元の大きさに戻った。走ってイアの所に行くと
「あんたいくつや」
「19です」
震えながらイアが答える。
「ええやん。若いけど、大丈夫やん。名前は」
「イアで、です」
震えは止まらなかった。
「嘘、愛の逆でイア。これ運命やん。じゃあチュウ」
愛がイアの唇を奪った。
「結婚成立な。今私素っ裸やからこのまま大人の時間や」
イアは引っ張られて長いソファに連れて行かれた。
「王子様」
侍女が心配そうに叫ぶ。
「うるさいなぁ」
愛は魔法で侍女を小さくして壁に投げつけた。ポテンと落ちて
「はい、ポチ、エサ」
というとレッサーウルフがやってきてパクッと食べた。
愛は移動中にレッサーウルフを手なづけていたのである。
「あ、まだ食べたい? じゃああっちにいる人、みんな小さくなれ」
「あ、ワララ」
とイアが叫んだ。
愛はそのワララを掴んで又を開いて
「何、恋人なの。じゃあ私と一心同体だ。それとも半分食べる」
とワララを引き裂いた。
「食べないんだ。おいしいのに。あ~おいしかった。そうか恋人だったのか。あなたの。じゃあせっかく亭主になれたのに私邪魔ね。あそこで一緒になりなさい」
イアを小さくして
「失恋よ。ありがとう」
と口の中に入れた。
「若い男はおいしいわ。でも、食べたらなくなっちゃう。増やさなきゃ」
愛は急増計画を立てた。人間の
「若い女1000人と、そうね男200人を集めなさい。すぐに」
「ははあ」
愛にはクイのお城にいた従者がついている。おどしてお手伝いに付けたのだ。そしてお城に1200人が集まった。
「今からあなた達は子供を作りなさい。4ケ月待つわ。出来なかたらあなた達を食べるわ」
と言って愛は従者を小さくして食べた。
「こうなりたくなかったら今すぐ子供を作りなさい」
そして愛は目をつけていた従者を呼び付け
「私を妊娠させなさい」
とおどした。愛は自分の後継者がほしかったのである。
一方東京では公子が真美を迎えに来ていた。
「わー真美ちゃん、久しぶり。で、その隣でしおれてるのが姫?」
「そうなの。死んでるの。あははは。公子ちゃんお願いね」
「わかった。人の少ないところ連れてくよ」
「私は仕事だけど夕方には終わるわ」
「じゃあポンとご飯行きましょう」
「うん、それじゃ夜に」
公子はまず京橋に姫を連れて行った。