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大阪はすでに異世界  作者: タニコロ
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異世界人、食べられる

マンダイがボーっとしたまま難波のOCATに着くと、森山はそこからタクシーに乗って伏見町に向かった。

「ごめん、ちょっと事務所を見てほしいねん。最近安かったから借りてん。実は薬メーカーの仕事もしてんねん。薬問屋の情報発信する仕事。これ手伝ってほしいねん」

と、森山。マンダイは意味が分からず、窓の外ばかりを見ていた。ここは四ツ橋筋だ。

車は伏見町の小さなビルの前に着いた。

「ここの2階。ごめん、古いビルやから階段オンリーやねん」

森山が扉を開ける。同時に電話がかかってきた。

「はいはい、おつかれ、シャリアどうしたん、えっ、えっ、ちょっと待って。すぐ帰るわ」

「どうしたんですか」

「ロンデルが食べられた。頭から丸かじりされて、前身、飲み込まれたらしい」

「えっ、何に?」

「わからん」

森山は慌ててカギを閉め、道路に出てタクシーを停めた。

「とりあえず、帰ろう。急ぎで」

タクシーで帝塚山の家に急行した。

「どうしたん、どこで食べられたん。何が出たん」

「5メートルくらいのバービーが出て、大騒ぎになってる。住吉大社を超えて駅の方向に行ってん。ロンデル、たまたまお店にいたから走って行ったら、頭から飲み込まれてんて」

バービーはカバみたいな生物で口は2メートルくらいあるらしい。その生物の登場に住吉大社は大混乱らしい。シャリアにロンドから電話がかかってきた。

「えっ、もう一匹いるの、ええ、ビンロが、ビンロが」

ガクッと身体を倒すシャリア。ビンロも食べられたらしい。

「ビンロ、ビンロ、ビンローっ。ああああああああ」

大粒の涙を流すシャリア。マンダイは焦りながらそれに寄り添った。

「とりあえず、住吉大社行ってくるわ。バイクの方がいいかな」

と、森山は大急ぎでヘルメットをかぶって外に出た。

「待ってて。シャリアのケータイにかけるわ」

「お願いします」

恋人を失くしてプルプル震えるシャリア。

「マンダイ、どうしよう」

ババアというセリフはもう聞こえてこない。

「ただいま。今日の晩御飯何? 疲れたー」

何も知らないファビアが難波から帰ってきた。

「ちょ、ちょっと、こっち」

マンダイはファビアにわかる範囲の説明をした。

「あっ、テレビ出てる。死亡、橋本一平と橋本二郎……」

ファビアはテレビをつけ、ニュースを確認した。

「わあーん」

また、大声でわめくシャリア。ビンロの和名は橋本二郎だ。

「いろいろヤバいわねぇ、時間外に魔獣が来たら、あの辺の人、めっちゃやばいわよ。あと、人が来たらどうするの。こっちの人に見つかったら、世界がパニックになるわ」

ファビアは、もう完全にこっちの世界の発想だ。その言葉の通り、人食いカバの登場も軽いパニックだ。バービーは一度食事をすると動きが静かになる。それだけが助けだった。

「どうするのファビア。シャリアはあっちの部屋に寝かせたわ」

「わからないわよ」

「どうするんだろう、本当に」

電話がかかってきた。森山だ。

「おう大丈夫か。ロンデルとビンロはもうだめだ。地元の人を助けようとして、食べられたらしい。バービーは府が持って帰るらしい。口をヒモで縛っているだけだから。俺らはもうちょっとかかる。被害者の家族として話が聞かれるらしい。ポンピはロンドと店にいる。店は閉めた」

森山は淡々としゃべった。とりあえず、魔獣が入ってきた事実はどうしようもならない。ただ、これ以上、住吉大社の入口を秘密にしておくわけにもいかないのだ。

2時間後、また電話がかかってきた。

「全部、しゃべる。悪い、明日、記者会見に出てほしい」

と、森山が言った。

翌日、ロンドとポンピとシャリアとファビアとマンダイが中之島の中央公会堂で記者会見を行うことになった。



昼14時、満員の中央公会堂。なぜ満員かというと昨日の19時にある程度の情報がばらまかれたのである。日本のメディアはおろか海外のメディアもやってきた。アメリカの大統領も異世界人のために来日すると公表したらしい。それだけ住吉大社を見たかったのである。

当日は通訳として森山も同席した。都合が悪い話はしない作戦だ。

「5人の異世界人に登壇していただきます」

司会みたいな人がそういうと無数のフラッシュが光った。気がおかしくなるくらいの光だ。

ロンドがマイクでしゃべった。

「言葉はほぼ同じなので違いは感じられませんが、僕たちはこことは違う世界の人間です。もしかすると、ここに来る時、言葉が通じる魔法みたいなものをかけられているかも知れません。こちらに来た時、日本人の男性に助けられて、大阪に暮らしていました。魔獣、こちらでは動物ですか。とにかく、こちらの世界に迷惑がかからないように魔獣を退治していました。半年で98匹です」

「おおーっ」

沸く観衆。フラッシュの光が鳴りやまない。

「どうやって魔獣を退治していたんですか」

「魔法でです」

「おおおーっ」

「どんな魔法ですか」

「動きが少ない睡眠魔法です。魔法はこちらのアニメでも見る火を飛ばす魔法や水、空気を刃物にするような魔法も使えるのですが、危険を感じたので睡眠魔法です」

「おおおっ。ちょっとかけろや」

礼儀のない言葉が飛んできた。ポンピが遠慮なく魔法をかけると一瞬でグースカピー。

感動する会場。

「本物だ」

「やばい」

ロンドが話す。

「今回の事件で仲間二人が亡くなりました。地元の人をかばってです。もう、僕らの力だけではどうにもならないと思って公表しました。ただ、僕らはもう普通の生活をしてます。今後は静かに見守ってください。ただ、これからはエルフの耳当てを取らせていただきます」

というと、ファビアとマンダイはヘアバンドを取った。

「おおおーっ」

さらに沸く会場。

では、と言って5人は強引に会場を後にした。質問が多すぎて相手に出来ないのだ。



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