姫、インドカレーを食べる
翌日、オグリは姫とカキとパルルを連れて難波に来た。
戎橋の真ん中で
「ほら、あれグリコ」
「グリコってなんだ」
とパルル。
「お菓子の会社よ。もうすぐ誠が来るんだけど。あ、姫大丈夫」
「ダメみたい」
とカキ。姫は人混みによってグロッキーなのだ。そこに誠が来た。
「よっオグリ。あれ、このトレーナーとスエットが姫様?」
「ごめん、服なくて。今、姫さん人によってあかんねん」
「しゃあないな。僕の車で淀屋橋のインドカレー行くか」
「インドカレー? 中野でよく食べた。久しぶり。車はみんな乗れる?」
「僕の車、7人乗りやから大丈夫」
と言って淀屋橋のお店に向かった。
「というわけで愛ちゃんが魔王なの」
「愛め。みんなに迷惑かけて」
後ろの席から姫が乗り出して来て誠に声をかけた。
「お前は誰じゃ」
「森山誠です。今日は姫様にお住まいとお洋服を用意させていただきます」
「お洋服はよくわからんが苦しゅうないぞ」
「ははぁ」
「誠、強く出とかないと後が大変よ。調子乗られちゃう」
「そうなんだ。それじゃあ。おい、姫、お前の名前は」
「赤ちゃんの時からずっと姫様って言われているからわからん」
「え、自分の名前覚えてないって、バカなの」
「カキ、バカって何だ」
「チュンってこと」
「何を私がチュンだと。お主、死刑じゃ」
姫が怒り狂う。
「やめときなさい。魔王の弟よ」
とオグリが言うと
「すみません。ご無礼をお許しください」
と泣きながら謝った。
「この子、なんかおもろい」
と誠はクスクス笑った。
インドカレーの店に着く。
姫はチーズナンとタンドリーチキンが気に入ったようだ。
「誠、おいしい」
パルルが
「誠でいいの」
と言うとすぐに
「誠様」
と言い直した。
それを見てオグリは大爆笑していた。
同じ頃、異世界では愛の城討伐が終わり、城のスタッフの死刑ごっこを楽しんでいた。
「いい音鳴らしなさいよ。ジュジュジュジュジュのジュー」
大きくなったままの愛が立たせた人間を叩き潰していく。最悪の遊びだ。
「あああ、終わっちゃった。もう人いないわ。あ、さっき小さくした人どこ」
「あの袋に入ってます」
「取って」
「どうぞ」
「あわわわわわ」
大きな巨人の愛が小さくされた人たちを一気に飲み込んだ。
「なんか悲鳴が聞こえたような気がするけど気のせいか。あ、隣の国もぶっ潰す」
「姫様。わ、わかりました」
「あなた今かんだでしょう。はい。地獄行き」
と言って魔族の使者を食べた。
「魔族っておいしいのよね。あと3人ぐらい大丈夫かしら。ごめんね」
と言って使者を3人掴んで食べた。
もう愛には魔族もビビっているのだ。
「向こうの国へは街を荒らしながら行きましょう」
「は、はい」
「はい、あなたペナルティ1。3回続いたらアウトよ」
魔族は愛の言うことに縮みあがった
数はすでに3分の1だ。
「本当は私一人でも大丈夫なんだけど、生きたいんでしょ。メスは子供作れよ。赤ちゃん食べさせろ。おい、なんとか言えよ」
「すみません」
「ブブーッ。アウト。今から私がここから投げるから生きてたらセーフ。逃げてもいいわよ。でも、見つかったらみじん切り。投げるわよ。せーの。嘘でした。口の中行き」
パクッと愛が食べた。
このままなら全員食べられると魔族は思った。
その通り、愛はパルルの弟以外全員食べてしまった。
「このままなら自分も」
キッコが悩み続けて馬車の前を静かに歩く。
「どうしよう」
と思った瞬間、坂口の家の前に出た。
「ここはどこだ」
と一歩歩いた瞬間、警告音が鳴る。ビビるキッコ。走ってくる坂口。
「ごめん、ごめん。びっくりした。あんたらのために仕掛けといてん。あら、可愛い男の子。待ってて。誠呼ぶわ」
阪急百貨店のお姫様ファションのお店で服を買ってると誠の携帯が鳴った。
「ほんまに。すぐ行くわ」
誠はオグリと3人を乗せて坂口の家に行った。
「森山、ごめんね。何、愛が美々と三原を食べた? ほんで異世界に行った? 嘘みたいな話やな。っていうか美々もケイコも死んだん? うそっ」
坂口が泣き始めた。
「あのおばさん、何で泣いてるん」
と姫が言うと
「大事な友だちを殺されたから」
とオグリが言った。
「ごめん、こっち」
と坂口が案内するとパルルが
「キッコ」
と叫んだ。
「姉ちゃん」
と走り寄るキッコ。
「怖かった。魔族、僕以外全部食べられたんだ。いきなり来た魔王に。姉ちゃんのこともカキ様のことも知ってる。上司だって」
「愛だな」
「そうね」
と誠とオグリが言うと坂口が
「愛がどうしたん」
「魔王になったみたい」
「嘘や。鼻でスパゲッティ食べるんよ」
「今は人を食べてるみたい」
誠はなんとも言えない表情をした。
「で、君はビビっていただけ」
「そりゃ大きくなったり、小さくしたり最悪です」
「その魔法、君のお姉ちゃんと考えたんだ」
「何、姉ちゃん。大きくしすぎだよ」
「ごめん。ごめん。なんかうれしくなっちゃって」
「俺、こっち来たから魔族全滅だよ」
「強かった将軍は」
「いの一番に食べられたよ。多分、デジック全部食べられるかも。じゃなくても全員殺される」
「一応、魔族は人を支配しすぎないように空気読んでたからね。支配の街とは仲良かったし」
「なんちゅう国や」
誠が言うと
「あっ、姫。食べられなかったのか」
とキッコが言った。