異世界から姫が来る
「半日も歩けないから大きくなるか。これなら距離かせげるだろう」
愛は20メートルサイズに大きくなった。
ズデン、ズデン。
この世界の巨人より大きい。
街がいくつかあったが愛はわざと街にあった家を踏みつぶした。
「あっはは。大騒ぎだ。あっ、警察みたいなやつらか? 半分食べて、半分踏みつぶそ。あははは。首引っ張ったら取れた」
愛はやりたい放題だった人々をおもちゃのようにしか思ってない。
「あれ、走って逃げてるの妊婦さん? 可哀そうに。と見せかけて腹パンチ」
グシャッと妊婦が潰れた。
怒って旦那のような人が棒を持って走ってくる。
「元気そう。あら、そう食べられたいのね」
愛はその男を握って食べた。
「やっぱり、服を脱がして食べた方がいいわね。よし、今から目に入った人はみんな踏みつぶしちゃう。きゃはははは」
街の人間をほとんど踏みつぶしてしまった。
「よし、次の街行こう」
笑いながら愛が進む。愛の通った後は地で真っ赤に染まっていた。
「あれが魔王城か。カキの城ね。まず、門をキック」
門が簡単につぶれた。魔族の人間が大勢飛び出してくる。巨人よりも大きい巨人に魔族もタジタジだ。
「おい、お前は誰だ」
将軍ポオンがやって来る。
「何、この丸っこいの食べちゃお」
と、何の会話もなく愛が将軍を口の中に入れた。ボリボリとかみ砕く。
「何、これ、この人、おいしい」
と。周りにいる魔族を掴んで食べ始めた。
「あれは本当の魔王だ。あのままじゃ魔族は絶滅だ。どうしよう」
とパルルの弟・キッコは大いに悩んでいた。
「仕方がない話を付けよう。どういう状況だ」
「今、15人ぐらい食べられました。20人は首を引き抜かれて並べられています」
「どういう人なんだ。わからない。前の魔王は3代目で座ってるだけだったのに。本当に凶悪な人はいるんだ」
キッコは勇気を出して愛のところに行った。
「私は魔王カキの部下、キッコでございます」
「え、カキの部下? ぶりっ子おばさんの部下なの」
「はい」
「うわあ。カキは元気だよ。あ、パルルって部下もいた」
「え、姉が」
「あんたパルルの弟なの。あいつ元気だよ」
「姉の知り合いだったのですか。これは失礼しました」
「カキとパルルは私の部下よ。舎弟よ」
「えっ、これまた失礼しました。でも、その大きさじゃお城に入れません」
「じゃあ、元の大きさに戻ろう」
愛は元の大きさに戻った。
「王の席はどこ」
「あちらです」
「私が王よ。あはははは。邪魔するやつはみんな消してやる」
「ははあっ」
本当に邪悪な王が来て、魔王城は沸いた。
「魔王様、最初に何をされるんですか」
「そうねぇ。デジックを私のものにする。国民を食べ放題だわ。まず、デジックの王様を攻めましょう」
「はい。王の城はここから太陽1つ半です」
「1日と半分ってことね。じゃあ私をそこまで運んで」
「わかりました」
とキッコは馬車みたいなものを用意した。
向こうの世界の乗り物は風の力で走るものがほとんどだ。風の力を吸い込んで車が走る。風のない時は給風口にうちわみたいなもので風を送る。なんとも自然に優しい動力だ。
愛は馬車に乗り込み、ゴロンと寝転がった。
「じゃあお願い。発車オーライ」
デジックの城に向けて愛が進みだした。
一方、大阪では真美が美々の会社に行っていた。人見知りの真美は受付でもじもじしていたのである。
「あ、あの。すみません。社長の妹なんですけど」
「えっ」
「事業を継ぐように言われてまして」
「へっ」
と、気弱く話していると
「あ、真美ちゃん、どうしたん」
エレベーターから美々の同級生の林がやってきた。
「あ、林さん」
一気に声が大きくなる真美。
「実は姉が亡くなったんです」
「え、社長が。いつ」
「先週。遺言で密葬にしました。会社への報告は私がするようにって。事業も私に任せたって」
「うわっ。緊急幹部会議や。真美ちゃんもこっち」
緊急幹部会議が行われた。林はこの会社の専務だ。林は空気を読んでいて、真美は仕事できるから慣れるまで自由にさせようということになった。森山家の仕事もあるし、当分そちら優先ということになった。
「林さん、助かりました」
「三原も亡くなったって? 愛も行方不明やって? 大変やなぁ」
「バカな兄が残っていますんで」
「真美ちゃん、頑張りな」
「はい、できる限りのことはします」
と、真面目な妹とは裏腹に姉は異世界でしたい放題だった。
「あ、この街の人、できる限りあの辺に集めて。小さくして持って帰るわ」
「わかりました。王様」
愛は街の人間600人ほどを小さくした。
「あ、あれがデジック城? じゃあ大きくなって。ぶっつぶす」
愛は巨大化して城を叩き壊しだした。
「あ、あれが王様です」
走って隠れる王。
「そうか。かじってやる」
愛は上半身をかじった。半分になる王の体。血だらけだ。その前で大泣きする娘。たぶん、姫だろう。
「よし、お腹の中でお父さんと再会し」
と愛が手を伸ばすとスッと消えた。
「あちゃあ、あっちの世界に行っちゃったか」
と言いながら愛は城の人間を全て叩き潰した。
オグリの店の前にスリガラスのようなものが現れた。
「何、あれ? もしかして」
という予想通り一人の女の子が落ちてきた。
「あ、姫様? カキ来て。姫様が落ちてきた」
オグリが頭、カキが足を持ち上げ、店の中に運んで行った。
「まだ人通りが少ない朝で良かった。魔界の姫と本当の姫の顔合わせや」
奥の部屋の布団に寝かせ、オグリとカキは店の準備をしていた。
パルルはその布団の前でテレビを見ている。
円広志司会のよーいドンだ。
「今日、粉浜商店街やねんて。リトの店出るんか。なんであいつの店だけ」
とブツブツ言ってると姫が起きた。
「あ、ここにも魔獣」
と大声で叫ぶとオグリが来て
「姫様、ここはデジックと違うんです。違う世界なんです」
「えっ、巨人の女は」
「そんなのいませんよ」
「巨人の女が大暴れしていて父上が食べられたわ」
「それは残念です。え、巨人の女、もしかして」
オグリはタンスの中の写真を探して姫に見せた。
「この人じゃなかったですか」
「そうこの悪魔」
「やっぱり」
「オグリ、どうしたん」
パルルが聞く。
「愛ちゃんよ。あの子がデジックを無茶苦茶にしてるの。この子のお父さん、食べられたって」
「愛はやっぱりやるなぁ」
「あ、起きたの。大丈夫?」
とカキが入ってきた。
「ありがとう。大丈夫じゃないけど大丈夫です。角が生えてるけどデジックの人ですか」
「はい。そうです。あんまりいい印象もたれてませんが」
「いえいえ。優しいじゃないですか。デジックの人はそうじゃなくっちゃ。でも、ちょっとだけ似てるんだよな」
「誰に」
「あなたとは全く関係ない人」
「そうんですか。あとでお茶しましょ」
「ありがとうございます」
その時、マンダイが
「さぁ、カキ。焼くわよ」
と言った。
「え、やっぱりカキ、魔王。違う違う」
「あの子、魔王やで。私も魔族」
「もしかして破壊王パルル」
「そう。もう、昔のことは忘れたけど」
姫は彼女たちの変化に驚きっぱなしだった。
「ねぇ、どうしてなの。何でそんなに真面目になったの? 答えろ」
「えええ? 何も変わってませんが」
「ウソだろ。答えろ。殴るぞ」
「いやぁ。やめてくださいよ」
と姫とカキがしゃべっているのを見てオグリが
「どっちが本当の姫で魔王かわからん。姫、ああいう人だったんだな」
と笑った。
「なぁ、姫様、明日の木曜、休みだから大阪観光してあげるから、今日はおとなしくしといて」
とオグリが姫に言った。
「わかった。行ったるわ」
姫のガードがだんだん外れていく。
「姫ってきつい性格なのね。梅田よりなんばだわ」
とオグリがクレープを包みながら言った。
いつもありがとうございます。新居浜の姪っ子や甥っ子には住之江区から一歩も出たことがないとウソをついています。ウソをついている場所は堺・鉄砲町のイオンです。思いっきり出てます。ここは昔、ダイセル工業という会社でした。そこの女性社員が僕のいた出版社のアンケートはがきを毎月2枚送ってきてたんだけど、2年ぐらい送り続けてたからもらったサンプル品紙袋二袋を送ってあげました。ちなみにその会社は富士フィルムの親会社でフィルム誕生の地だそうです。メールで僕は住吉大社駅です、と伝えたら、そんなに近いんならコンパしろって言われて一度コンパしたことがあります。27の僕らから見たらだいぶお姉さんでした。




