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大阪はすでに異世界  作者: タニコロ
24/35

異世界人、新世界のカラオケボックスに隠れていた

愛やシャリアが志摩にいる頃、三原とマンダイは引っ越し準備をしていた。

心斎橋に店舗兼事務所を借りたのだ。

場所は長堀通り沿いの南側。三休橋筋の角っちょだ。

「あぁ面倒くさい。あ、そろそろお昼にしよう。たまに気分を変えてロッテリアに行く?」

「ロッテリアって?」

「ハンバーガー」

「何か知らないけど行きます」

「ほら、ロードンも」

三原たちはすでに心斎橋のマンションに引っ越していて、マンダイもロードンも大阪の街になれていた。マンダイはたまに間違えて粉浜で降りず住之江まで行ってしまうが、それはただ単にどんくさいからである。でも、住之江から歩いて帰ってくるコースを覚えた。

「あ、すみよっさん麺の向こうね。アマゾン、あるある」

三原はアマゾンを確認しながら商店街を歩いた。

アマゾンは普通の洋服屋だが超老舗であのアマゾンの前よりもあるから、三原はいつも気にして歩いていたのだ。

ショップ南海の下を通り、ロッテリアに向かう。ショップ南海の出口の方向を見て。

「ああ、あのスリガラスみたいな空気のくすみから出てきたのよね。って、くすみ?」

「うわ、本当だ」

とくすみを見てビビるマンダイ。

「何か出てきた。黒い大きなもの」

ズデンといって大柄の女性が出てきた。

「うわわ。また、来た。よく見ると変な耳生えてる」

「あれは熊耳族かも知れない。近寄って話をしてあげましょう」

マンダイとロードンは走って異世界人の方に向かっていた。

「大丈夫? 話せる? あなたは違う世界に来たのよ」

「え、ここはどこ? あなたは誰?」

身長190センチはある大柄な女性がキョロキョロ辺りを見回した。

女性の耳は熊のようでお尻には黒くて丸い尻尾が生えている。

「ちょっと深呼吸して。あなたはもう帰れないのよ。ケイコ、なんか飲み物買ってきて」

「わかった」

と言って三原は前のデイリーストアで水を買って走ってきた。

「さ、これを飲んで」

「それにしてもいい体格ね。モデルさんみたい」

熊女はぼーっと辺りをまた見回すと

「お腹空いた」

と一言言った。

「しゃあないなぁ。ちょっと待っとき」

と三原はロッテリアの向かいにあるお好み焼き屋さんで焼きそばの大盛りを買ってきた。

「はい。これ食べ」

熊女は手で焼きそばを掴んでずるずると食べている。

「ケイコ、この熊どうする」

「でかいけど美人やなぁ。仕込んで店で働いてもらおう」

こうして熊は三原が面倒みるようになった。熊の名前はフラン。22歳だ。

「フラン。まず、この世界の格好をしましょう。ロードンお願い」

とロードンは市場中の服屋や靴屋をまわってフランにこっちの世界風の格好をさせた。

「よし。向こうに行くわよ」

と三原が言うと心斎橋に行くために粉浜駅に歩き出した。

「フラン。電車に乗るわよ。ほら、改札。切符を入れて」

吸い込まれてまた出てくる切符にビビるフラン。そしてマンダイが最もビビったエスカレーター。

「何これ。上に動く」

と喜ぶフラン。マンダイは期待外れな表情で

「はい、もうすぐ来るから」

と言った瞬間、後ろでラピートがシュワーッ。

「キャー、怪物、やられる」

と恐れるフラン。

「フッフッフッ、違うのだよ。フラン」

とマンダイが笑顔でラピートの説明をした。すると電車がホームに入ってきて

「うわー、鉄のヘビ」

とフランがまたビビると

「今から食べられます。はいこっち」

と開いたドアにフランを押し込んだ。

「死ぬー、あれ、みんな座ってる」

「これ電車って言う乗り物なの。馬車みたいな」

「なんだ。そうなのか。マンダイがおかしくなったと思った」

「お母さんはいつもおかしいよ」

とロードンが笑った。

「見ときなさい。まだビビるから」

とマンダイが言うとその通りフランは難波で降りて人の多さにビビった。

「何これ。こんな人見たことない」

戎橋筋を心斎橋方向に歩いて行くとずっと人に囲まれる。

「うわ。気持ち悪い。人間地獄だ」

ずっと気持ち悪くなるフランを見てマンダイは勝ち誇ったように笑っていた。


一方、志摩の愛たちは島にある砂浜で遊んでいた。ビーチボールを巨人たちに投げて取りに行かせてたのだ。

「シャリア、巨人たちは運動神経いいな。マラソンを走らせたら?」

「たぶん、トップね」

「バレーをさせたら?」

「たぶん完勝ね」

「よし、サッカーは辞めさせて、バレーをやらせよう」

「ええ?」

「今晩、パパに相談してみよう。森山工具でチーム作るのよ」

愛は父親の会社を使って自由に遊んでいる。父親は愛に一番甘いのだ。34になっても甘え続けている。警察の給料とは別に月10万円のお小遣いをもらっていた最低の娘だ。

「シャリア。ファンに縮小魔法仕込んどいた?」

「もう大丈夫だよ」

「それじゃおれへんかっても大丈夫やな」

「えっ」

「1か月ほどして落ち着いたらファンたちを京町堀に連れて行くわ」

「えっえっ」

「あの子らをバレー選手にするわ。あなたはあべのキッカーズをお願い。あっ子供作るのはもうちょっと我慢して」

「えっえっえっ。テンだけでもこちらに残して。得点源だわ」

「わかった。あとはお姉ちゃんの言う通りにして」

「はい、よろしくお願いします」

愛は知らないうちにシャリアに従属魔法をかけていた。

シャリアとテンは翌日、早い目に津まで来ていたチームと合流した。


それから1か月半後、10月の後半、巨人の4人は森山工具のバレーチームに入っていた。社名は変わってモリットだ。社長の娘がロゴマークをデザインしたらしい。愛だ。嫌われがちな社長の娘だ。ここでもクズ警視正と言われている。

「愛、いい加減にしなさいよ。お父さんの会社に手を出すのはやめなさい。社員にクズって言われてるのよ」

「まぁまぁ。クズにはクズの楽しみ方があるのよ」

選手が入ってきた。満員の大阪府立体育館。相手は岸和田アキコーズだ。だんじりの街のふざけた名前のチームだ。投票で強そうなチームとして決まったらしい。本人からも了承済みだ。

相手に23点わざと取らしてあっという間に25点取るというやり方で京町堀巨人団はギリギリの勝ちをおさめた。ギリギリというよりも計算づくの勝利だ。

「よしよし。この調子で頼むはよ」

「あんた警察の仕事は」

「ちゃんと行ってるわよ。今日は非番よ。美々は忙しくないの」

「試合を見に来てあげたのよ。この後、天王寺でシャリアの試合あるし。あの子、代表に入ったのよね」

「ワールドカップに出るわねぇ。すごい選手よ」

その晩、あべののパインアメスタジアムで試合が行われた。

相手は岡山の倉吉の倉吉ジェッツだ。ちなみにパインアメスタジアムは天王寺にある老舗だが社長の娘が勝手に決めた。無料でいいからお客さんにアメを一つずつ配れと条件を出したのである。

試合はシャリアのスルーパスからテンが1点、もう1点、さらに1点と倉吉をボロボロにして5対0で勝った。

「シャリア、やっぱりすごいじゃない。古潭でラーメン食べて帰ろ」

美々は昔から食べてる味が好きなのである。

「急いで行かないともう閉まるわよ」

「愛、あんたは?」

「今日はいいわ。行って来て」

「じゃあ」

と美々は走ってあべちかに行った。30半ばの社長とは思えない行動だ。

「私は心斎橋に帰って。あ、その前に。今日だったわ。約束は」

愛は何やらおかしな集団と会うようである。


深夜11時。新世界にあるカラオケボックスの4階の大部屋に彼女達がいた。愛が行くと一人の女が走ってくる。坂口という愛と同じぐらいの女性だ。帝塚山学院の同級生だ。

「久しぶり。森山さん。いや、魔女っ娘って呼んだ方がいいかな」

「やめて。もういい大人なんやから」

「ほんまに警察なん」

「ほんまやで。まぁまぁ出世したで」

「ほんで魔女っ娘、ウチも向こうの世界の人かばっててん。ここで。団体客ほとんど来ないから」

「何人?」

「18人」

「夏にサッカー観に行った時に試しに解除魔法かけたら予想以上にきいてしもて」

「あれはあんたたちか」

「でも、私ら以外に異世界人いることがわかったわ」

「そやな。実は異世界人は昔から来ていて私、子孫やねんて」

「えっ、コーラ鼻から飲む魔女っ娘が。言われてみたら」

「中学の同級生に三原っていたやろ」

「ケイコね」

「あいつもや」

「えええ」

「それより昔のこと思い出すのはやめて」

「鼻からスパゲッティ食べてたよね」

「もういいから」

「だめ、もう一回見せて」

「で、異世界人は」

「あ、異世界人ね。うち、住吉大社の裏やろ」

「住吉東駅の前な」

「そこに異世界人がいっぱい出てん。5人ずつ。3人の時もあったけど。やばいなと思っておじいちゃんが遊びで経営してるここに連れて来てん。従業員には説明してる。動物系が11人で人間が7人や。巨人はおれへん」

「ウチは何人やろ動物系が5人、あ、三原のとこ入れたら6人。巨人が5人。普通の人が4人。大正時代から1人」

「何、大正時代って」

「明治時代に来た人が子供産んで、その子供がタイムスリップしてきてん。その子曰く、大正時代で数千人おったから今は万超えてるって」

「そうか」

「何で私が知ってるって気づいたん」

「ああ。魔女っ娘の妹がサッカー選手って聞いて。えっ真美ちゃんって思ったら若いし。名前ヘンだし」

「あの子、誠の奥さんやねん」

「えええ、誠ちゃん結婚したん。異世界人と」

「まぁもともと同じ人種やからな」

「ほんでなんか知ってるかなって連絡してん」

「うーん、閉じ込めてたら可哀そうやで。外に出したげな」

愛は異世界人の就職活動をした。



新世界のカラオケボックスのエレベータは3階までしかありません。4階は3階から階段です。古い建物です。でも、4階は意味なく広いので地元のお店がよく宴会しているらしいです。あと、心斎橋2丁目は御堂筋から堺筋で、年に1回、みんなで集まってゴミ拾いをします。でも、有名なブランド、シ〇〇〇は来ませんでした。ある意味、名門ブランドではありません。あと天王寺区には世界一古い会社があります。パインアメにするか金剛組にするか悩みましたが、アメちゃんが配れるパインアメにしました。

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