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大阪はすでに異世界  作者: タニコロ
23/35

巨人、志摩へ

あべのキッカーズ。スタジアムの収容は18000人。スタンドにはオーロラビジョン。観客には試合の状況や先日がスマホに送られるスタイル。観客とピッチが一体化できるテスト的な実験材料が盛り込まれたスタジアムだ。試合当日にはアイドルのライブなども行われるため、ほぼ満員に近い17000人ほどが入る。シャリアたちがキッカーズに入って2か月。今日がシャリアと巨人たちのデビューの日だった。

会場には三原やポン、マンダイ、公子も駆けつけている。映画の撮影中だがシャリアと巨人を優先させて駆けつけた。

試合の相手は三重県の津アマーズだ。なんとも歯切れの悪いチームだ。

「よしファン、デス、バル。守備お願いね。テンはしっかりゴールを狙って。シャリアはパスお願いね」

と古橋キャプテンが叫んだ。

「よし、いくわよ」

「ファイト、オーツ」

試合が始まった。女子のチームの試合だがもともとあべのキッカーズには人気があった。今回、シャリアを前面に押すプロモーションを行ったので、その効果は十二分にあった。

シャリアは結婚していたが、逆にそれが人気を呼んでいたのである。

ボールはボランチから10番のシャリアに通る。テンにスルーパス。と思ったら

テンが元の大きさに巨大化。ほかの4人も巨大化して、ベンチのバスは座ったまま大きくなったのでそのまま後ろに倒れてしまった。もう少しでメインスタンドにいる人は押しつぶされそうになった。ギリギリセーフだ。

「な、何。昨日、魔法をかけていたから、あと一週間は持つ予定だったのに。なんで」

とシャリアが呆然としていたら、スタジアムの外にも大きな人影が。また、あべのハルカスの上でも巨大化が起こっており、ハルカスが最上階から崩れてきた。

「きゃああ」

逃げ回る人々。

「なんであんなに巨人がいるの。どこで転送してきたの」

と三原はマンダイに聞く。

「わからない。誠みたいな人がほかにもいっぱいいるかも知れない。縮小の魔法をかけられる人もいるかも知れない。向こうの世界で小さくなって来ている人がいるのかな、と思います。そしてそれを解く、広域魔法をかけられる人がどこかにいます」

とマンダイは語った。

「シャリア、とりあえず縮小魔法」

と誠がピッチまで走ってきて言った。

「わかった」

と、縮小魔法をかける。

「とりあえず、5人を隠して」

と誠。

「あちゃあ。どうする。もう、知らない。死人が出なかっただけセーフか」

「どうしましょ。誠、何とかして」

「もうお手上げだ。ていうか、外にも10人以上巨人がいるやんか。なんであんなにおんねん」

「わからない。いつの間にかいっぱい来てたんやね。巨人があれだけいるってことは普通の人はもっといる」

三原がピッチに降りて誠の方にやってきた。

「マンダイ曰く巨人は向こうで小さくなった後にこっちに来た可能性があるって。あと、解除魔法をかけた悪人もいるって」

「やっぱり。前に事件を起こしたポンみたいなヤツがいるってことか」

「巨人はまとめて隠さないと。大きくなっても無害なところ。あ、伊勢志摩の無人島にあるウチの別荘」

「ああ、あんたのとこのお父さんが建てたバカな別荘ね」

「どこがバカや。甲子園2個分の広さあるから15人大きくても行けるわ。今、夏で良かった。あ、シャリア、ファンに縮小魔法教えられる」

「うん、教えられるかも」

「じゃあ、伊勢志摩にしよう。外の巨人集めて縮小して。スタジアムに被害なかったからええやん」

と誠は笑ってハルカスの方向を見た。

「あれ? もう縮んでる。ほかに縮小魔法かけられる人がいるのか。キューズモール前ももうおれへん」

愛と大勢の警察が入ってきた。

「誠、問題は」

「ハルカスの上がちょっと崩れた。巨人は他のも10人はいる。魔法をかけられる人も。あと、解除魔法をかけたヤツも。ウチの巨人は伊勢志摩の無人島に避難させるわ」

「パパのバカな別荘ね」

「みんなそういうイメージなんかい」

「誠が連れて行ってくれるん?」

「ううん。警察が連れて行ってくれるんちゃうかな。警視正がカギ持って」

「ウチに行けってことか」

「うん。明日から三原美衣さんの付き添いあるし」

「もうしゃあないな。ポンは曽我順子さんにいじめられてない」

「なんか完全無視してる」

「あの大物女優を」

「うん、美しさは勝利みたい」

誠は巨人たちと愛とシャリアと帝塚山の家に戻った。

「私も別荘行くわ。来週、津で試合あんねんて。誠は10日ぐらい熊本やしちょうどいいわ。ファンらが大きくなったのも私のミスってことで」

「ごめん、解除魔法を使う異世界人がいるって発表してしもた」

「愛ちゃん、あほなようで仕事早いな」

「うるさい。ぶりっ子妹め」

世間には異世界人のことが知れ渡っているが、それほど大騒ぎにならないのはマンダイの魔法のおかげである。台湾人が日本に来るレベルでと誠は地図を持ってマンダイに説明し、魔法をかけてもらったのである。

別世界は台湾と同じレベルだ。

翌日、巨人たちとシャリアと愛はマイクロバスで伊勢志摩に向かった。

誠とポンと公子は熊本の荒尾に向かった。


「ねえ、これ、何て言う高速道路」

「高速と違うわ。西名阪国道。経費節約なの。カット、カット。経費をカット」

「ろくな仕事をしないで高い給料貰っているくせに」

「何を。お前はいくらもらってるんだ」

「100万円」

「……」

愛は黙りこくった。

しばらくして海が見えてくる。鳥羽水族館を越えてしばらくすると志摩だ。

「はい、みなさん。こちらです。クルーザーに乗って。あ、これもパパのわがままで買ったものです」

愛はガイドのようにみんなを案内した。

「あとでパパとママがおいしい食材を持ってやってきてくれまーす」

なぜか愛だけ親のことをパパとママと言い続けている。弟や妹にバカにされているが無視しているようだ。

「あ、田中さん、運転お願いします。ウチら降ろしてから両親を迎えに来てくれますか」

「あいよ。愛ちゃん。立派になったねぇ。今何してるの」

「警察」

「え、悪ガキの愛ちゃんが。誠ちゃんをいじめてた愛ちゃんが警察って」

「逮捕しますよ」

「もう。冗談やめてや。あはははは」

シャリアが入ってきて

「本当に。ちょっと偉いさんなんて、笑いますよ。あははははは」

「あんた誰?」

「誠の妻です」

「えー誠ちゃん、こんな美人と結婚できたんや。愛ちゃんは」

「逃亡されましたって。あははははは」

とシャリアが言うと愛がぎゅっとシャリアの太ももをつねった。


「あ、あれがパパ島なの?」

シャリアが島を指さした。

「そうあれがパパ島。綺麗でしょ」

と言っている間に島に着いた。

愛の父親が社員の福利厚生用に作ったので20人ぐらいは対応できる建物だ。

電気、ガスにも対応している。

「お風呂はなんと、温泉です」

と愛が風呂場を案内した。

でも、みんな意味がわからないのできょとんとしている。

「みんな一人一部屋ね」

愛が次に部屋の案内を始めた。

「え、一人一部屋は寂しい?」

「私は大丈夫だけど、巨人のみんなはさみしそう」

「じゃあ5人一部屋で」

「うん、これならいいんじゃない。あと、来週の火曜には大きくなるけど、ここなら大きいままでいいわ。あ、服ない」

「いいですよ。私たちは裸でも」

「ごめんね。あのデカいビキニみたいな服もどっか行っちゃった」

「たぶん、初めに働いてたとこかな。もういいですけど」

「まぁとりあえずくつろいで」

と愛がサングラスをかけながら砂浜へと向かった。

「ああ、仕事を忘れよう。有給なのに仕事した」

「いつも忘れてるくせに。わはははははは」

シャリアが大声で笑う。パパ島は夏の日差しを思いっきり浴びていた。





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