巨人族、クシャミで殺人
マンダイの体の中でシャリアと誠が彼女の胃の中を撫でていた。
「マンダイの体の中、きれいね」
「ほんとだな。なんか万博の太陽の塔の中、思い出した」
「エルフだから」
「エルフは体の中もきれいなのかよ、不公平だ」
「でも、私とあなたが同じ種族かも知れないのよ」
「うん、うれしい」
「でも、みんな異世界人の子孫だなんて」
「異世界って言ったら駄目だろ。デジック」
「忘れてた。デジックね」
「で、マンダイみたいなちょっと違う種族っているのか」
「うん、いるわね。ちょっと離れた場所に巨人族とか獣人族とか甲羅族とか」
「巨人族?」
「うん。10メートルぐらいかな。大きい人がいるの。でも、こっちで言うと美人の女の人ばかりだからお互いに気を使いながら生活をしてるのよ」
「獣人族は?」
「こっちで言うメイドカフェがコスプレするようなタイプの人間ね。うさぎ系の人は受けるかも知れないわ」
「じゃあ甲羅族は?」
「いわゆる河童ね。たぶん、昔からこっちに来ているかも知れない」
「みんなこっちに来たら大変だなぁ」
「来ないわよ。多分。あはははははは」
フラグが立った。
美々が愛とポンと公子を乗せて走っていると住吉大社駅の下のロッテリアの前で大きな振動を受けた。
「何、これ、地震?」
ズシン、ズシンと大きな音が鳴り響く。すると愛が
「ビキニ姿みたいな超美人が大きくなってる」
と叫んだ。それを見てポンが
「巨人族だわ。まさかこ来るなん来るなんて。しかも3人も」
「ええっ。巨人族っているの。あれで原寸」
「はい。私話してきます。そこに車停めてください」
美々はコンビニの前に車を停めた。走って出ていくポン。何かを言っているらしい。巨人はうなづいてる。愛はすぐそこの住吉警察に電話していた。
「あれだけ大きいと隠せないわね」
と愛。じーっと巨人を眺めながら
「誠から見たら私らもっと大きかったんやねぇ」
「何を言ってるの。バカポリス。もうネットで広まってるわよ」
「もうやりますか。記者会見。今の時代であの大きさは隠せないわ」
2人は以前、誠たちが記者会見したことを魔法で忘れさされている。
愛にオグリから電話がかかってきた。
『あれ、巨人族の代表よ。総理大臣みたいなもの。丁寧に扱った方がいいよ』
『オグリ知ってるん』
『一度、船を沈められた』
『狂暴じゃん』
『ちゃんとしてね』
とオグリは電話を切った。
「うーん。玉露でも出しますか」
愛はポンに頼んで巨人を長居まで歩いてもらって第二競技場の中に入ってもらったが、外から丸見えだったのでヤンマースタジアムの中に入ってもらった。
「あんなにデカかったら何食べるんだ」
と愛が悩んでいるとポンが魔法でごまかしましょうと菓子パンを魔法で大きくした。喜んで食べる巨人たち。実は可愛い女性たちなのだが、ひいき目に見ても可愛くは見えない。
「ポン、わかりづらいと思うけど、こちらはそちらに危害を加えない。もし、加える人がいたらその人個人の責任よ。怒ってもいいわって伝えて」
「わかりました」
ポンが伝えると巨人たちがずっと愛を見ている。
「愛さんとしゃべりたいんですって」
恐る恐る愛が近づくと
「ごめんなさいねぇ。世話かけてしまって」
と、普通の声で巨人がしゃべった。気さくすぎて少し落ち着く愛。
「いえいえ。本当はもっとしなきゃいけないことがあるのに」
「何をおっしゃいますやら。本当にすみません」
愛はポンに小声で
「大阪のおばはんみたいや。怖いって聞いていたのに」
「いえ、みんな優しいですよ」
「オグリめー」
愛は巨人たちに向かって
「船を沈められたって嘘つく友達がいて焦ってたんですよ」
「ああ、あれね。すっころんで倒れたら、沈めたって大騒ぎになって」
「何だ。ドジっ子物語か」
「何です。ドジっ子って。あはははは」
愛と巨人たちは楽しく談笑していた。すると上からヘリコプターが。ニュースを撮影しているようだった。かなり低空飛行している。
「愛さん、何ですか。あれ」
「ヘリコプターよ。空を飛ぶ乗り物」
「へええ。どれどれ」
巨人の一人が顔を近づける。
「ふぇ、ふぇ、はーくしょん」
と、巨人がヘリコプターの風でクシャミをした。
勢いよくヤンマースタジアムの壁にぶつかり爆発するヘリコプター。
「知らない。知らない」
と愛はその場で目を押さえていた。
翌朝、愛はヤンマースタジアムで記者会見に臨んだ。彼女たちの説明と会見の司会も愛が行っていた。
「えー、彼女たちの背景はわかっていただけたでしょうか。右からファン、バス、テンです。彼女たちは繊細です。でも、昨夜みたいに急にヘリコプターを飛ばされたら困ります。クシャミ一つであの爆発です。亡くなられた方には申し訳ありませんが、彼女たちに罪はありません。ただ、彼女たちがちょっと転ぶと大惨事が起こってしまうのです」
ファンは口を開いて
「私たちの世界では静かに暮らさせてもらってました。こちらでも静かに暮らしたいのですが、食べないといけません。どうか仕事を紹介してください。サッカーというスポーツなら私が座っているだけで点がはいらないそうです」
と言うと会場は爆笑で包まれた。愛の作戦勝ちだ。そして愛が
「実はあちらの世界からまだお客様がいらっしゃいます。どうぞ」
と言うと獣人の女性が入ってきた。
犬耳の女の子とうさぎ耳の女の子2人だ。昨日、住吉大社で発見され、三原の弟の大介がロードンと一緒に確保してきたのだ。
「リト、バル、スキーです。このままメイド喫茶で働けますね。あはははは。撮影はこちらから。あっ、おさわりはメッですよ。わははははは」
ネットでは笑いを入れながら司会をする美しい女性が警察官だとわかって大騒ぎになった。さらに警視正だということが知れ渡って、愛は神扱いされるようになった。
「姉ちゃん、あれ計算?」
と近くで見ていた大介が聞くと三原が
「いや、何も考えてない」
「愛ちゃん、すごいよ。警察やねんで。ハイヒールリンゴよりも笑かしてる」
「うん。ある意味、警察がすごいわ。あの子を自由にさせてて」
この会見で注目されたのは巨人や獣人よりも愛だった。
「ふーっ。どうだった。記者会見」
「いや、あんた、すごいわ。何で間違えて警察入ってん」
「え、何言うてんの。また、シャリア食べたくせに。早よ出せ。クソババア」
「クソババアって警察が言うセリフか」
「私、最近モテてるのよ。向井社長にディナー誘われちゃった」
「ウソ、あんたが」
「バカ弟夫婦の面倒見ていてね」
「もうあなたには食べさせないわよ」
「イヤー、食べさせて」
これを見ていた大介が
「何ですか、これ」
と美々に聞くと
「小学生からこんなん。もし、漫才してたらM1とってるわよ」
「そうなんだ。バカババアズ」
「おら、誰がババアや」
と大介は二人からスコーンスコーンと頭を叩かれた。
ちなみに巨人たちは愛の思い付きで南港で埋め立て工事に参加させらえていた。獣人たちは日本橋のメイド喫茶で本当にメイドとして働くことになった。大介が経営する店なので安心である。海外の要人が会いたいと言ってきても南港や日本橋に直接行ってもらうことにした。国は無関係を貫いたのである。それよりも愛の人気が最高潮になった。心斎橋の広いタワーマンションに住んでるということもブルジョワ感をプラスして話題になった。
「はう。スターは辛いわねぇ」
北堀江のカフェでポンとお茶をしていると何枚か写真を撮られる。実はポンが撮られているのだが
「ポンちゃん、あなたも気を付けなさいよ。来週から撮影よ」
「シャリアは辞めたんですか。残念」
「あの子は奥さんに徹するって。何が優秀な奥さんよ。相手は誠よ」
と、グータラ過ごしていると愛に電話がかかってきた。また大量に異世界人が来たらしい。
「えっ、大もいるの。猫もいるの」
ブツブツ言いながら愛はポンを置いて、なにわ筋に向かって走り出した。