家族の歯車は進む
ひとりで、お城の中を歩いていく。
いつもなら、セラフィム様達が
付き添ってくれていた。
けれど、新しいかぞくと過ごしている。
ここに、私をエスコートしてくれるものは
誰も居なくて、少しだけ寂しい。
冥界は常に薄暗く、湿っぽい。
あの明るい空は、冥界にはなくて
お城では、いつも伝灯が付いていた。
「あの娘が、養女...」
「あの娘に、支えなくて済むのは
嬉しいわね、養女なんて...」
「ペルセポネー様も、なにも言わないし
ほんとに、歓迎してるのかしら」
メイドたちの陰口に心が締め付けられる。
ここで、やりあっても自分が不利だ。
そっと、その場を離れようとしたら
足を引っ掛けられ、転ばせられた。
「あら、ごめんなさいね
薄暗くて、よく見えなかったから」
にやりと笑みを浮かべる。
あの子達は、わざとやったんだ。
けど、ここで苛立ったって
今は味方がいない。
『いいえ、平気よ』
ドレスに付いた、埃を祓い退けて
城の中を探検していく。
メイドや執事に、歓迎されてない
痛い視線...セラフィム様達に無償に
会いたくなってくる。
「お嬢様、どうしたのですか?」
『なんでもないわ...ヘラクレス』
「そうですか、なにか好きなものは?」
『そうね...ないけど。
強いて言うなら、本を読みたいわ』
「では、お城の図書室にお連れしますね」
『ありがとう』
優しい目で、ヘラクレス様は観る。
いまは、護衛対象と主人...。
「お嬢様、なにかあれば
なにもなくても、お話してください。
家族として、接したいのです。
セラフィムから、あなたの事を
伺っております...。
貴方が私をどんなに拒もうと
私は、貴方を家族として、接したい」
膝を付き、視線を合わせられる。
これは、理解されるまで、言われそうだ。
『ありがとう...ヘラクレス兄様』
「はい、セリーヌ嬢」
ニコリと笑みを作り...なにかの
家族としての歯車が
すすんだような気がした




