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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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転生

作者: 藤野矢舞

「お前の執行日が決まったぞ」


少し嬉しそうな感じで所長が執行日を告げた。

そりゃ嬉しいだろ。

俺は所長の息子も殺したんだからな。

7人殺した中に、たまたま奴の息子もいただけなんだけどな。


俺が死刑判決を受けてから4ヶ月。

早すぎないか?と思ったが、そもそも被害者の父親が務める拘置所に収監すること自体が不自然だろ。

実際にこの4ヶ月の間はなかなかの冷遇ぶりだった。

拘置所に入ったのは初めてだが、あからさまだった。


共同室の他の受刑者から暴力を受け刑務官を呼ぶが知らん顔をされる。

そもそも受刑者は所長の指示で私に暴力をふるってるのだから刑務官は見て見ぬふりよな。


そんな日々を送っているとさすがに身体ももたないし精神的にも滅入ってくる。

そろそろ限界だと思ったのだろうか、そんなタイミングでの執行日の決定だった。

偶然なのだろうが執行日を決めるプロセスが不明なので何かの意思が働いたのかも判らない。


毎日続く両親の虐待に耐え兼ねて家出をし、それからは大小を関わらず様々な犯罪を犯してきた。

別の暴力事件で留置されている最中に7人殺しの容疑者とされ結局はばれちまった。


いよいよその時が来た。


首に縄を掛けられている間に妙な考えが走った。

また人間に生まれ変われるのかな?

虫とか魚とかに生まれ変わるのは嫌だよな。

これだけ悪事を重ねてきたんだから、やっぱり人間は無理か。

などと考えているいるうちに床が開いた。

-----------------------------------

目が覚めた時に薄目を開けると、ぼやけてはいるが男性と女性の顔が近づいてきた。

「おー!起きたぞ!」

「あなたに似てない可愛い赤ちゃんでよかった」

「おいおい!酷いこと言うなよ~」

「嘘よ!でも男の子だからきっと私に似るわよ」

「そうかもな。なら美男子になるな。頑張って産んでくれてありがとう」


このやり取りが聞こえてきた時に大声でヤッタゼーと叫んだ。

叫んだつもりだった。


「あら、起きたねえ」

「えらくご機嫌じゃないか?」

「寝起きがいいのはあなた似なのね」


要らない心配だったんだ。

俺は人間に生まれ変われたんだ。

前世の罪がチャラになったようだな。

神様、ありがとよ。

-----------------------------------

この様子を雲の上から観ていた神様は小さく溜息をつきました。


お前の悪徳がチャラになる訳がないではないか。

例え寿命が短くても悩みや苦労が少ない他の生物に転生させる価値などない。

天敵と寿命から命を奪われるだけでなく、自殺や同族殺しで命を落とす唯一の愚かな生物の人間がお似合いだ。

君は当分は人間への転生しかできないんだよ。


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